日本柔道は全階級で金メダルを狙える 平岡拓晃、中村美里がアジア大会を展望

長谷川亮

中村「女子48キロ級は世界選手権以上のレベル」

近藤亜美(写真)が出場する女子48キロ級は世界選手権以上のレベルになることも予想される 【写真:長田洋平/アフロスポーツ】

――それでは女子メンバーについて中村さんからお願いします。

中村 近藤亜美(48キロ級、三井住友海上)は世界チャンピオンで五輪も銅メダルを取って、海外の成績も安定してきているので期待できますが、この階級は韓国、中国、モンゴル、カザフスタンなどに強敵がいます。世界選手権と同じか、もしかしたらそれ以上のレベルになることも予想され、気が抜けません。

――名前の挙がった国々は世界的に見ても柔道の強国になりますね。

中村 52キロ級の角田夏実(了?寺学園職)は4月の全日本体重別選手権も優勝して昨年の世界選手権も2位なので、実力は世界選手権に出ている志々目愛(了徳寺学園職)、阿部詩(夙川学院高)と変わらないくらいありますし、金メダルが近いと思います。玉置桃(57キロ級、三井住友海上)も最近の国際大会でたくさん試合をして実力もつけてきて、全日本体重別選手権で初優勝するなど、国内外で成績を残しています。この階級はモンゴルと韓国に強い選手がいるので、そこが勝負になると思います。

――女子はアジア圏に強豪選手が多いので、世界選手権・五輪とレベル的には変わらない熾烈(しれつ)な戦いとなりそうです。

中村 鍋倉那美(63キロ級、三井住友海上)もどんどん試合を積んできていて、伸び盛りです。圧倒的に勝ってアピールしてほしいです。70キロ級の新添左季(山梨学院大)も大学生の若手なので、同様にここで自分の名前を打ち出してほしいです。佐藤瑠香(78キロ級、コマツ)はなかなか世界選手権などでは結果が出せずにいますが、若い頃からずっと出ていろいろな経験をしてきたベテランなので、チャンスがあると思います。78キロ超級の素根輝(南筑高)は一番若い高校生で、超級にしては身長が小さいですが、そのハンデを技の数や組み手の強さでカバーしています。超級は中国、韓国が強いですけど、そこを倒して優勝すれば世界選手権に出る朝比奈沙羅(パーク24)と同じくらいの評価を得られるのではないかと思います。

平岡「団体戦は計算があてはまらない」

団体戦は国のメンツが懸かっているため、“ここは取るだろう”という計算があてはまらない怖さがある 【写真:中西祐介/アフロスポーツ】

――男女全階級の代表選手に関してありがとうございます。アジア大会では男女3人ずつでチームを組んで戦う団体戦も行われますが、こちらについても教えてください。

平岡 去年の世界選手権に解説で行かせてもらい団体戦を見たのですが、国のメンツが懸かってくるので、選手が力以上、地力以上のものを出してきます。個人戦で勝っている相手でも団体戦では普段以上の力を出してくるので、“ここは取るだろう”と思ってもそういう計算が当てはまらない。引き分けがなく延長戦でとことん決着をつける方式ですし、本当に読めません。また、団体戦は国柄が出ます。去年の団体戦でも韓国戦は力的には勝っていると思いましたが、すごく力を出されてやはり最初の方でもつれました。

中村 引き分けがなく絶対勝敗をつけるというのはやはりポイントとなり、個人戦で競っていた相手ともう一回試合する時にはどちらが勝つか分かりません。しかし日本は全階級で金メダルを取れる選手がそろっており、他の国でそれはないことなので、そういう面ではやはり日本は総合力で有利かなと思います。

――それでは最後に、アジア大会へ臨む日本選手団に期待を込めてのエールをお願いします。

平岡 各階級の男子1番手の選手は、世界選手権(9月20日〜27日)に選ばれている一方、今回のアジア大会に選ばれているメンバーは、2番手評価、3番手評価をされている選手だと思います。なので、自身の立場と今大会で勝つことの意義というのをしっかり一人一人が意識をして挑んでもらいたいです。その結果が今後や2020年につながっていきますし、みんなが金メダルを取る姿を見たいです。

中村 同じ感じになってしまうのですが、やはり女子も世界選手権に出ていないメンバーが選ばれていると思うので、しっかり自分の立ち位置を理解して、自分の力を出し切って金メダルを取ってほしいです。

平岡 今年はアジア大会の方が世界選手権より先に行われるので、ここで勝てば世界選手権組にプレッシャーをかけられます。逆に世界選手権が先の開催で1番手の選手たちに優勝されたりすると落とせないですから、ものすごくプレッシャーがかかるんです。でも今年はそうではないので、その点では戦いやすいと思います。おそらく選手たちはみなそういう考えでいくと思います。ここで優勝すればその後の代表選手争いが有利になるはずです。
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アジア大会 8月19日(日) ごご6時30分〜
TBS系列連日生中継
注目の柔道は大会12日目29日から

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著者プロフィール

1977年、東京都出身。「ゴング格闘技」編集部を経て2005年よりフリーのライターに。格闘技を中心に取材を行い、同年よりスポーツナビにも執筆を開始。そのほか映画関連やコラムの執筆、ドキュメンタリー映画『琉球シネマパラダイス』(2017)『沖縄工芸パラダイス』(2019)の監督も。

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