ガスリーの6位入賞は福音ではなく警鐘 後半戦へマシンの分析と把握が急務

F1速報

終わってみれば余裕の6位

ハンガリーGP、ガスリーはクリーンエアで走ることができ、6位入賞を果たした 【Mamoru Atsuta】

 しかし走り始めてみれば、トロロッソ・ホンダのマシンはいい感触だった。

 金曜から土曜にかけてのファインチューニングも上手く進み、フリー走行3回目では10番手・12番手でQ3に進出できるかどうか当落線上ギリギリのところ。ライバルたちにパワーユニットの予選スペシャルモードを使われたときにどうかというところだったが、直前の雨に救われた。

 これまでにもオーストラリアGPやフランスGP、ドイツGPのフリー走行などウエットコンディションでは常にトップ10に位置していたように、トロロッソはウエットで速かった。メカニカルグリップが優れていることと、シーズン開幕前からドライバーたちが賞賛したホンダのフラットな出力特性からくるドライバビリティの良さのおかげだ。

「ドライバーからすれば、トルクの出方はコンスタントでペダル操作に対して正確にパワーが出てほしいものなんだ。常にトラクションの限界ギリギリまでパワーをひねり出したいからね。ペダルの操作とトルクのピークの出方に違いがあると、特にウエットコンディションではトリッキーなことになる。ホンダはその点がとても良いんだ」と、ホンダ製パワーユニットの特性についてガスリーは語っている。

 スタートでカルロス・サインツJr.(ルノー)の前に出たガスリーは、クリーンエアで走ることができた。おかげでドイツGPで訴えていたような前走車の影響も受けずに自分本来のペースで走ることができた。後ろのケビン・マグヌッセン(ハース)はチームメートと比べてもリヤタイヤのマネージメントが得意ではなく、序盤からタイヤマネージメントと燃費セーブに徹してくれたことも味方した。終わってみれば余裕の6位だった。

 逆にハートレーはターン1手前でガスリーのイン側に並びかけるほどの好発進を決めたものの、無用な接触を避けるために引いて後退。ルノー勢とのバトルになったがコース上では抜くことができず、彼らに合わせてピットインしたことも命取りに。延々と前走車のペースに付き合わされるレースになって、11位に終わった。

ハンガリーの結果を無駄にしないために

 この両者の結果の差が、今の中団グループの争いの厳しさを表わしている。

 クリーンエアで本来の力を発揮できれば6位になれるクルマでも、集団に飲み込まれればたちまちポイント圏外に落ちる。スタート直後のポジション次第では、ガスリーとてハートレーのような展開になっていてもおかしくはなかったのだ。

 トロロッソ・ホンダがハンガリーでいい仕上がりを見せたことは確かな事実だ。しかしウエットコンディションに恵まれた予選の結果が純粋な実力を表わしているわけではなく、そのポジションから臨んだからこそ決勝も有利な展開になったが、6位とノーポイントは紙一重だということも忘れてはならない。

 トロロッソはチームとして今回のマシンが良かった理由をしっかりと分析し把握する必要がある。ハンガリーで予想以上の速さを発揮した理由が何だったのか、そしてそれ以前のレースで予想以下の速さしか発揮できなかった理由は何だったのか。

 それが把握できなければ、今後もセットアップの精度を高めることはできず、予想以上・以下のどちらに振れるか分からない不安定なシーズンが続いてしまうだろう。そしてホンダも車体側にもっと空力セットアップの“幅”を与えられるようパワーアップに努めなければならない。フェラーリ勢が調子を上げてきているように、予選結果に直接影響するパワーユニット・予選スペシャルモードの実戦投入も急がれる。

 ハンガリーGPの6位入賞は福音ではなく、むしろ警鐘だ。そう捉え努力を続けなければ、トロロッソ・ホンダのシーズン後半戦は再び厳しいものになってしまうだろう。

(テキスト:Mineoki Yoneya)

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