バドミントン山口茜「記憶に残る試合を」 大会への意気込みを小椋久美子さんが聞く

構成:スポーツナビ

奥原戦後の涙は応援に応えられなかった悔しさ

奥原希望(右)とはジュニア時代から戦ってきたライバル。リオでの戦いが山口が一皮向けるきっかけにもなった 【写真:長田洋平/アフロスポーツ】

小椋 私も五輪を見ていて、山口選手が泣いているのを見て号泣してしまいました。あの時の涙はどういう気持ちだったのですか?

山口 奥原さんには一度も勝ったことがないですし、プレーの内容は自分として全部出し切った感じでした。試合が終わった直後は満足だったのですが、インタビューを受けてから、いつも以上に応援されていたと自分自身で感じ、応援や期待に対して応えられた結果ではなかったのかなと思い、そこに対する悔しさはありました。

小椋 確かに会場での応援もすごかったですし、五輪はたくさんの方に応援されている場所でもあるなと思いました。奥原選手との試合は、全国の人が見ていたんですよね。東京五輪では2人の試合を、決勝戦で見たいという視聴者やファンは多いと思いますがどうですか?

山口 決勝戦ならいいですね。

小椋 奥原選手とはずっとジュニアのときから、全国、世界と戦ってきて、一緒に日本を引っ張ってきたと思いますが、実際、奥原選手はどんな存在ですか?

山口 負けることの方が多いですし、奥原さんはすごい引っ張っている感じはありますけど、自分はあんまりそういう風に考えたことはないです……。どちらかというと、付いていったというか、引っ張ってもらってきた感じです。

小椋 練習ではどうですか? 引っ張ってくれる先輩? もしくはライバルとして一緒に高めあっている仲間ですか?

山口 練習中はストイックで、いろいろなことを考えながら練習しているんだろうなというのは見ていてすごく感じます。自分は結構、妥協が得意なタイプなので(笑)。そういうことが多かったりするのですが、隣で一緒に練習をしていて、自分を極限まで追い込むのを見て、自分も頑張らなきゃと思います。

リオ後の成長はプレーに余裕が持てるようになったこと

経験値が上がったことでプレーにも余裕が出てきた。それが現在の好成績にもつながっている 【写真:ロイター/アフロ】

小椋 2人を見ていると、プレースタイルが全然違うなと思いますが、奥原選手と戦う中で、ここだけは自信があるというポイントはありますか?

山口 ……ないですね(笑)。

小椋 えーー(笑)。 それではここだけは負けたくないというところは?

山口 本当にないです……。守れる範囲とか、フットワークとか、粘り強さだったりはかなわないです。気持ちも勝てているとは思わないので。あえていうなら、ボディ周りだけ、ですかね。

小椋 ボディ周りというのは、速い展開になり、スマッシュやレシーブ側に回ったときのことですか?

山口 そうですね。ボディを突かれたときにうまく切り返すことだったり、ドライブ合戦だったり。上手く自分で主導権を握ったりする展開のときはあまり負けたくないです。負けたくないというか、そこまで取られていたら話にならないので。

小椋 リオでの奥原選手との試合以来、私が見ていて、あれをきっかけにいろいろなものが吹っ切れたように見えました。あの試合から勝つようになってきたと思いますが、あの試合があったからなのか、それとも試合とは関係のないところで成長できたからなのか。奥原選手との試合の後で変わった点はありましたか?

山口 正直なところ、何をやっても勝てないだろうなと思っていたので。でもファイナルというか、1ゲーム目は11点ぐらいで勝てて、案外勝てるのではという気持ちはわきました。その後、奥原さんのケガもあったので、勝つ確率はゼロパーセントではないとは思えるようにはなりました。これだけできたからか、もう少しできるんじゃないかなと。

小椋 気持ちの変化が大きかったということですか?

山口 そうですね。気持ちの変化もありましたし、戦術的にもそれまではいつも同じことをすることが多かったのですが、「今日はこういうプランでいこう」と、戦術を試合ごとに工夫して試し、これは使える、使えないと変化は付けられるようになったのかなと思います。

小椋 練習の中で、何かを変えたり、頑張って取り組んでいることはありますか?

山口 練習はあまり変えていないです。ただ経験値というか、やっぱり試合数や、勝ち上がる回数も増えてきて、これまでは強い相手に向かっていくだけだった立場が、シード権をもらい、(相手に)向かってこられる立場になりました。そこをしっかり勝ち切る経験などを積んだことで、気持ち的な自信はついてきました。そして、余裕を持ってプレーできる回数は増えてきたかなと思います。

まずは団体戦優勝で勢いに乗る

アジア大会では最初の団体戦で優勝し、その流れで個人でも金メダルを目指す 【写真:長田洋平/アフロスポーツ】

小椋 いよいよアジア大会が始まりますが、山口選手の持つアジア大会のイメージは?

山口 前回も出させていただいたんですけど、あまり覚えておらず……。でも前回は韓国だったので、みんなで焼肉を食べたりしました(笑)。
 団体戦ではランキングが一番低かったので、出場できなかったのですが、個人戦はランキングが低いにも関わらず出場させてもらい、2回戦で負けてしまいました。あまりいい試合ができた記憶は残っていないので、今回はしっかり自分の記憶に残るような試合ができたらいいなと思います。

小椋 4年に1度なので、特別感のある大会ですよね。

山口 あまりどの大会にも、特別感を覚えたことがないのですが、ほかのツアー大会よりは違うと思います。選手村に入ることもそうですが、ほかの大会とは違う経験もできるので、そういうところを楽しめたらいいなと思います。

小椋 最後にアジア大会では団体戦も個人戦もあると思いますが、大会への意気込みをお願いします。

山口 まずは団体戦から始まるので、ユーバー杯(女子バドミントンの国別対抗戦)と同じようにみんなで団結して、協力しあって優勝したいです。そして個人戦へいい流れで入れるようにできたらなと思います。
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