【新日本プロレス】 オメガが前年覇者・内藤にリベンジ 飯伏、後藤、タマ、石井も白星スタート

高木裕美

IWGPヘビー級王者のオメガが前年覇者・内藤を破りG1白星発進 【写真:SHUHEI YOKOTA】

 新日本プロレスの真夏の祭典「戦国炎舞 -KIZNA- Presents G1 CLIMAX 28」第2戦となる15日の東京・大田区総合体育館大会では、Bブロック公式戦5試合などが行われ、満員となる3826人を動員した。今年は20選手が2ブロックに分かれ、総当りリーグ戦で激突。各ブロックの1位同士が最終戦8.12東京・日本武道館のメインイベントで優勝決定戦を争う。

 メインイベントでは、IWGPヘビー級王者ケニー・オメガが、昨年度覇者の内藤哲也との壮絶な死闘を制し、白星発進を果たした。

必殺技の切り替えしから片翼の天使で仕留める

初戦から死闘を繰り広げた2人だが、最後はオメガが片翼の天使で試合を決めた 【写真:SHUHEI YOKOTA】

 昨年の優勝決定戦と同一カードとなったこの一戦。23分19秒の激闘は、これが公式戦初戦とは思えない、まさに死力を尽くした壮絶戦となった。

 両者は過去2年連続でG1の大一番で激突。2年前の16年8.13両国ではG1最終公式戦で初対戦し、オメガが28分12秒、片翼の天使で勝利。この結果により、優勝決定戦進出を決めたオメガが、外国人初のG1覇者となった。一方、別ブロックとなった昨年の8.13両国では優勝決定戦で雌雄を決し、G1史上最長タイムとなる34分35秒、高角度デスティーノで内藤が優勝を果たしている。

 今年のG1を前に、内藤は「過去最高のG1クライマックスをお届けします」と予告。一方、IWGP王者として初めて臨むオメガは「チャンピオンであるということの責任感、重さをすべて背負って戦う。すべてがタイトル防衛戦だと思って挑む」と、全勝優勝を宣言していた。

 開始早々、オメガが内藤に向かってツバを吐きかけると、内藤も引き金を引くポーズからリング上に寝転がってポーズ。互いに挑発を仕掛けていく。

 オメガはエプロンめがけてバックドロップでたたきつけると、場外マットをはがそうとするが、内藤がドロップキックで阻止。しかし、オメガは15分過ぎ、スワンダイブ式の鉄柵越えプランチャを繰り出すと、さらに高速フルネルソンスープレックス、ガットレンチパワーボム、後頭部へのVトリガー。しかし、片翼の天使は切り返され、逆に自分が脳天からマットにたたきつけられてしまう。すかさず内藤が雪崩式フランケン、グロリアとたたみかけると、オメガの蒼い衝動を切り返そうとするが、オメガは内藤の体を空中でホールドすると、そのままジャンピング・パイルドライバーの形で突き刺す攻めを披露。15年3.15広島サンプラザでの「NEW JAPAN CUP」準決勝戦でオメガの盟友・飯伏幸太が内藤に食らわせた、通称「人でなしドライバー」で大ダメージを与える。

 さらにオメガはコーナー上で内藤を肩車し、雪崩式片翼の天使を狙うが、これを内藤が切り返して雪崩式パワーボム。さらにランニング式デスティーノとたたみかけるも、カウントは2。なおも内藤は裏投げ、張り手、浴びせ蹴りと一気呵成に攻め立て、再度デスティーノを狙うも、オメガが変形ボムで切り返し、Vトリガーからの片翼の天使でフィニッシュとなった。

上から目線で「会社の3番くらいにはなれる」

内藤に“上から目線”でメッセージを送るオメガ 【写真:SHUHEI YOKOTA】

 セコンドに両肩を担がれて退場した内藤の背中に向かって、オメガは日本語で「去年、内藤さんに直接言えなかったので、今は『G1優勝おめでとう』と言いたいですね。そのままベルトを獲れなかったのが残念ですね。進化してないのが残念ですね。でも、来年のG1があるから、精一杯頑張れば会社の3番くらいにはなれると思います。もちろん、それは私と、私の“いぶたん”の下ですね」と痛烈なメッセージ。バックステージでも「内藤さんは3年前からエラそうなキャラ。でも、もう皆、飽きちゃった。目を覚ましてください」と、超・上から目線でアドバイスした。

 確かに、2年前、G1公式戦で内藤に勝利したオメガは、外国人初のG1優勝から17年の1.4東京ドーム大会のメインイベント出場、今年5月のIWGPヘビー級王座初戴冠と、着実にステップアップ。一方、内藤は1年遅れのG1優勝(2度目)&18年1.4東京ドーム大会のメイン出場は果たしたものの、IWGP王座返り咲きはならず。オメガに遅れを取っていることは否めない。

 ますます進化と成長を続けるオメガだが、まずは内藤へのリベンジを果たしたことで、今年のG1の天王山となるのが、最終公式戦8.11武道館で迎える6年ぶりとなる飯伏との一騎打ちだろう。オメガにとって、DDTプロレスリングでの飯伏との出会いが、日本でのプロレスラー人生を運命づけるものとなっており、「私のいぶたん」と評するほどの溺愛ぶりは、まさに「ゴールデン☆ラヴァーズ」の名にふさわしい、深い絆で結ばれている。その一方で、自身がリーダーを務めるBULLET CLUBの内紛劇についても新たな抗争が巻き起こっており、今年のG1は王者として、リーダーとして、すべての力が試されるシリーズとなりそうだ。

飯伏はザックにリベンジ成功

飯伏(奥)は“サブミッション・マスター”ザックを一蹴し、白星を奪った 【写真:SHUHEI YOKOTA】

 セミファイナルでは飯伏幸太がザック・セイバーJr.にリベンジし、初優勝に向け順調な滑り出しを見せた。

 両者は今年の3.15後楽園で行われた「NEW JAPAN CUP」2回戦で対戦。“サブミッション・マスター”ザックの執拗な関節技地獄に、飯伏はギブアップこそしなかったものの、レフェリーストップ負けを喫していた。

 飯伏は昨年のG1では、優勝決定戦進出こそ逃したものの、自らが「神」と崇める棚橋弘至を破る新技「カミゴェ」を開発。一方、ザックは春のNJCで優勝しており、春夏制覇と、イギリス人として初のG1優勝が懸かっている。

 4カ月ぶりの再戦はグラウンドの攻防からスタートするも、飯伏は得意の蹴りやその場飛びムーンサルトを繰り出すと、ザックもヒールホールド、リバースインディアンデスロック、フェースロック、アンクルホールド、変形羽根折り固めで反撃。しかし、飯伏はアンクルホールドを切り返して強烈な掌底をたたき込むと、ジャーマンスープレックス、シットダウン式ラストライド。ザックも卍固めなどで意地を見せるが、飯伏はジャーマンスープレックス、バズソーキックからニーパットをはずすと、クロスアーム式ジャーマンからのカミゴェで3カウントを奪取した。

G1男・後藤はSANADAに辛勝

「G1のGは後藤のG」という明言を残している“G1男”後藤(右)はSANADAに勝利 【写真:SHUHEI YOKOTA】

 NEVER無差別級王者の後藤洋央紀はSANADAに辛勝。08年以来10年ぶり2度目の優勝へ好発進した。

 後藤は08年にわずかキャリア5年1カ月にしてG1初出場初優勝。「G1のGは後藤のG」という明言を残したが、その後は16年の準優勝止まり。一方、SANADAは16年から3年連続の出場となるが、16年の開幕戦で棚橋弘至から白星を奪うインパクトこそ残したものの、その後の成績は奮わず。そのためか、今年は同ブロック出場となったロス・インゴベルナブレス・デ・ハポンのボス・内藤に対し、視線を合わせず、グータッチも拒否するなど、ピリピリムードを漂わせていた。

 SANADAはミサイルキック、ドロップキック、プランチャを繰り出すと、掟破りの逆牛殺しからSkull Endで捕獲。しかし、ラウンディングボディープレスはかわされて自爆となってしまう。このチャンスに、後藤がヘッドバット、裏GTR、ハングマン式裏GTRからの正調GTRとたたみかけて勝利をもぎ取った。

ジュースはトンガに痛い黒星

タマ・トンガ(左)はガンスタンで試合を決めた 【写真:SHUHEI YOKOTA】

 IWGP US新王者のジュース・ロビンソンは、タマ・トンガに痛恨の黒星を喫した。

 ジュースは第五中手骨骨折の重傷を負いながらも、7.8米国サンフランシスコ大会でジェイ・ホワイトを破りシングル王座初戴冠。一方、トンガは同大会でBULLET CLUBのリーダー、オメガに反旗を翻し、新たな紛争の火種を起こしている。

 ジュースはトンガのセコンド、タンガ・ロアに気を取られ、普段通りの試合運びができず。トンガはバックドロップ、リバースガンスタン、トンガツイストから、痛めている左手を踏みつけると、ジュースも右ナックル、ジャックハマー、キャノンボールで反撃。だが、パルプフリクションはタンガがレフェリーに妨害工作を働いたため決まらず。ジュースは怒りのあまり、本来は反則である左拳でのナックルをタンガにお見舞いすると、再度パルプフリクションを狙うが、トンガがこれを切り返してガンスタンで大逆転勝利となった。

“フェアプレイ日大”精神見せるも矢野は石井に黒星

矢野(手前)のお株を奪うムーブで試合を決めた石井 【写真:SHUHEI YOKOTA】

 意外にもシングル初対戦となった矢野通vs.石井智宏のタッグパートナー対決は、石井が矢野のお株を奪う反則ファイトで白星をもぎ取った。

 昨年は1.4東京ドーム大会でIWGPタッグ王座を戴冠している間柄の両者だが、意外にも一騎打ちは今回が初めて。今年のG1を前に、「今年もふがいない半年を過ごしているので、今溜まっているものをすべて吐き出したい」と意気込んだ石井に対し、矢野は「日本大学レスリング部出身」という、反則タックルで問題となった日大と、パワハラ騒動が起きたレスリングの2つの源流をネタに、「“フェアプレイ日大”の精神で、このG1をマジメに戦い抜く」と宣言していた。

 矢野は予告通り、レスリングのスキルを生かした正統派の攻撃を見せると、場外戦で手にしたイスも使わずに放棄。とはいえ、いつものコーナーマットはがしやYTRポーズといった「お約束」は忘れず、逆さ押さえ込み、丸め込みなどで執拗に3カウントを奪いに行く。石井はラリアット、スライディングラリアットで反撃に出ると、矢野が本来得意としている金的攻撃からラ・マヒストラルで丸め込んで3カウント。生まれ変わろうとする矢野の出鼻をくじいてみせた。
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著者プロフィール

静岡県沼津市出身。埼玉大学教養学部卒業後、新聞社に勤務し、プロレス&格闘技を担当。退社後、フリーライターとなる。スポーツナビではメジャーからインディー、デスマッチからお笑いまで幅広くプロレス団体を取材し、 年間で約100大会を観戦している 。最も深く影響を受けたのは、 1990年代の全日本プロレスの四天王プロレス。

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