【新日本プロレス】“優勝確率100%”オカダが黒星発進 G1開幕戦では棚橋、真壁らが勝利

高木裕美

前IWGP王者オカダはG1黒星発進。CHAOS同門対決に敗れた 【写真:SHUHEI YOKOTA】

 新日本プロレスの真夏の祭典「戦国炎舞 -KIZNA- Presents G1 CLIMAX 28」が14日、東京・大田区総合体育館で開幕。この日はAブロック公式戦5試合などが行われ、札止めとなる3907人を動員した。

 今年は20選手が2ブロックに分かれ、総当りリーグ戦で激突。各ブロックの1位同士が最終戦8.12東京・日本武道館のメインイベントとなる優勝決定戦で激突する。

 メインイベントでは、“レインメーカー”オカダ・カズチカがジェイ・ホワイトとのCHAOS同門対決に敗れ黒星スタート。これまで、無冠時には「優勝確率100%」を誇ってきた男に、いきなりの黄信号が灯った。

 オカダは海外遠征から2012年1.4東京ドームで凱旋を果たし、同年2月に当時の“絶対王者”棚橋弘至からIWGPヘビー級王座を奪う「レインメーカーショック」を起こして以来、7年連続でG1に出場。12年には初出場で初優勝を果たすと、14年にも2度目のV。いずれも、IWGPヘビー級王座を手放していたタイミングであった。逆に、IWGPヘビー級王者であった13年、15〜17年は優勝決定戦にも進出できず、「IWGP王者はG1で優勝できない」というジンクス(95年の武藤敬司と00年の佐々木健介はIWGP王者で優勝)に呪われていただけに、4年ぶりに無冠で臨む今年は「優勝する番」。5年連続となる新春1.4東京ドーム大会のメインイベント出場権を得るためにも、夏男となって、IWGP王座挑戦権利証を獲得することをファンも期待している。

勝利のジェイはオカダに下克上宣言

ジェイはオカダに勝利し、下克上を目指す 【写真:SHUHEI YOKOTA】

 前日会見では「ケニーに負けて、ノーコメントでコスチュームを変えて、入場曲もいじって、『何か変わろう、何か変わろう』と思っていたんですけど、何も変わっていません」と語っていたオカダは、7.8米国サンフランシスコ大会で初披露したアレンジ入りテーマ曲&新コスチュームに加え、赤髪に変身して登場。「今年の夏は笑顔でいきたい」と語っていた通り、ジェイとの攻防の中で笑顔をのぞかせると、場外戦では得意の鉄柵超えを狙うが、ジェイは素早く逃げると、逆に場外マット上で高速バックドロップ。さらに鉄柵&エプロンに交互に何度もたたきつけ、背中へダメージを蓄積させると、顔面に幕を巻きつけるラフプレーも。20分過ぎには、トップロープを超えて場外へとバックドロップで投げ捨て、パイプイスを手にリングイン。オカダはこれをドロップキックで回避し、ツームストンから伝家の宝刀レインメーカーを炸裂させるが、ジェイの腕が誤爆した海野レフェリーが失神したため、これはノーカウント。すかさずジェイが急所攻撃を浴びせると、イス攻撃からのブレードランナーで前IWGP王者から3カウントをもぎ取った。

 2年以上にわたってIWGP王座を保持し続けたオカダが、IWGP US王座を失ったばかりのジェイに敗れるという波乱に場内は騒然。反則連発のダーティファイトに客席からはブーイングも起こる中、ジェイは「これまでずっと独走状態で強かったオカダ。おまえの時代も、もう終わりだな」とこき下ろすと、「CHAOSはオレのもの、G1クライマックスもオレのものだ」とアピール。「オレが新日本の新しい顔だ。オレがCHAOSで新たな王国を築く」と下克上宣言をたたきつけたことにより、BULLET CLUBの内紛劇に続き、CHAOSでもキナ臭い雰囲気が漂い出した。

 これまで、リーグ戦形式のG1で全勝優勝を飾ったのは、96年の長州力と06年の天山広吉のみ。また、13年に優勝している内藤哲也の場合、リーグ戦では5勝4敗という結果でありながら、同点の選手たちに直接対決で勝利していたため、優勝決定戦進出を決めている。そう考えれば、1敗などまだまだ優勝争い圏内。とはいえ、この1敗が与えた心身へのダメージは、この後のリーグ戦にも大きく影を落とすことになりそうだ。果たして、黄金の髪もガウンも取り去ったオカダが、再び頂点に立ち、真夏の武道館にカネの雨を降らせることができるのか。

棚橋が通算勝利記録を「71」に更新

棚橋弘至(左)が因縁の鈴木みのるにリベンジ。G1白星スタート 【写真:SHUHEI YOKOTA】

 セミファイナルでは、17年連続出場となる棚橋弘至が因縁の鈴木みのるにリベンジ。自身が保持するG1での通算勝利記録も「71」に更新した。

 両者は1.27札幌でIWGPインターコンチネンタル王座を賭けて対戦。みのるが棚橋の右足を徹底的に破壊して王座を奪い、敗れた棚橋は右ヒザ変形性関節症で長期欠場に追い込まれた。

 あの悪夢から約半年。今年デビュー30周年を迎えたみのるは、開始早々から徹底した右ヒザ攻めへ。ヒザ十字固め、STF、アキレス腱固めなど、5分以上にわたって棚橋の足だけを痛めつける。棚橋もドラゴンスクリュー、ドロップキックで反撃に出ると、反則行為ともいえる逆回転ドラゴンスクリューを炸裂。痛みに悶絶するみのるに、棚橋はスリングブレイド、ハイフライアタックからハイフライフローとたたみかけ、執念の勝利をもぎ取った。

 試合後、敗れたみのるは足を引きずりながらも、セコンドの助けを拒否し、自分1人で退場。一方、棚橋は花道の途中までセコンドの肩を借りて歩いており、勝利はしたものの、この後のリーグ戦に不安を残した。

エルガンはEVILに勝利し白星発進

伏兵対決はエルガン(左)がEVILを破った 【写真:SHUHEI YOKOTA】

 G1での「大物食い」が期待されているマイケル・エルガンとEVILの“伏兵”対決はエルガンに軍配が上がった。

 EVILはイスでエルガンの右腕に集中攻撃を仕掛けると、さらに鉄柵攻撃、ダークネスフォールズを食らわせるも、エルガンがファルコンアローで反撃。EVILもジャーマンスープレックスで粘るが、エルガンがカウンターのラリアットから雪崩式ブレーンバスターを炸裂。さらにEVILを切り返してのエルガンボム2連発で快勝した。

ファレは反則判定で黒星 【写真:SHUHEI YOKOTA】

 BULLET CLUB同門対決となったハングマン・ペイジvs.バッドラック・ファレは、大荒れの展開に。7.8サンフランシスコでIWGPヘビー級王者ケニー・オメガに反旗を翻し、トンガ系新ユニット「FIRING SQUAD BC」を結成したタマ・トンガ&タンガ・ロア兄弟がファレに加勢したことにより、BULLET CLUBの分裂はもはや避けられない状況となった。

 ファレが奇襲攻撃を仕掛け場外戦となると、そこへタンガも加勢。ペイジはムーンサルトアタックでタンガごと吹っ飛ばすが、今度はそこにトンガまで乱入。リング上で3人がかりでペイジにストンピングを浴びせ、反則裁定が下された。

 試合後、トンガたちはペイジが持参したロープを使って逆絞首刑を狙おうとするも、オメガ、飯伏幸太らが飛び込み、ペイジを救出。7.21東京・後楽園ホールでのオメガvs.トンガの直接対決を前に、早くも一触即発ムードが充満した。

真壁は9年ぶりの優勝へ白星発進

09年以来9年ぶりの優勝を目指す真壁刀義は、YOSHI-HASHIを下し白星発進 【写真:SHUHEI YOKOTA】

 09年以来9年ぶりの優勝を目指す真壁刀義は、YOSHI-HASHIを下し白星発進を果たした。

 YOSHI-HASHIは前日会見で、タッグパートナーでもあるオカダから「YOSHI-HASHIさんとの試合に関しては、6年ぶりになると思うんですけど、正直期待してないですね。つまらない試合になると思います」とコキおろされた意地からか、序盤から攻勢を仕掛けるも、10分過ぎ、真壁が強引にコーナーからスパイダージャーマンで投げ、キングコングニードロップでフィニッシュとなった。

 第5試合では、明日のBブロック公式戦での対戦を前に、IWGPヘビー級王者のケニー・オメガと昨年度覇者の内藤哲也がタッグで対戦し、挑発合戦を展開した。

 両者は2年連続で大一番で激突。2年前の16年は8.13両国でのG1最終公式戦で初対戦し、オメガが28分12秒、片翼の天使で勝利。この結果により、優勝決定戦進出を決めたオメガが、外国人として初の優勝を飾っている。一方、別ブロックとなった昨年は8.13両国での優勝決定戦で雌雄を決し、G1史上最長となる34分35秒、高角度デスティーノで内藤が優勝を果たしている。

 両者は互いに先発を買って出ると、オメガがさっそく右目を見開くポーズで内藤を挑発。一方、内藤はパートナーのSANADAと8.8神奈川・横浜文化体育館で公式戦を争うことが決まって以来、微妙な溝を埋めることができず。ロス・インゴベルナブレス・デ・ハポン恒例のグータッチはおろか、目を合わせることもできず。それでも、オメガにスイングDDTを決めると、SANADAとの連係攻撃を繰り出し、SANADAがチェーズ・オーエンズにSkull Endでギブアップ勝ちを収めた。

 試合後、内藤はLIJのキャップをかぶり、リング上からオメガに声をかけると、オメガはそのキャップを払い落とし、自分がかぶって中指を突き立て挑発。一方、両者と同じBブロックのSANADAは、試合が決まるや内藤をリングに残し、無言のまま早々に引き揚げてしまった。
  • 前へ
  • 1
  • 次へ

1/1ページ

著者プロフィール

静岡県沼津市出身。埼玉大学教養学部卒業後、新聞社に勤務し、プロレス&格闘技を担当。退社後、フリーライターとなる。スポーツナビではメジャーからインディー、デスマッチからお笑いまで幅広くプロレス団体を取材し、 年間で約100大会を観戦している 。最も深く影響を受けたのは、 1990年代の全日本プロレスの四天王プロレス。

新着記事

編集部ピックアップ

コラムランキング

おすすめ記事(Doスポーツ)

記事一覧

新着公式情報

公式情報一覧

日本オリンピック委員会公式サイト

JOC公式アカウント