瀬戸際で踏みとどまったバスケ日本代表 連勝の背景と、W杯出場への道のりは?

大島和人

転機となったファジーカスの日本国籍取得

今年の4月に日本国籍を取得した、Bリーグ初代得点王のニック・ファジーカス 【Getty Images】

 Window3の対戦相手はグループ最強のオーストラリアと、「3位争い」のライバルであるチャイニーズ・タイペイ。馬場と富樫がチームに戻り、八村も帰国。加えて5月にBリーグのシーズンが終了していたため、約1カ月の準備期間を持てた。

 日本にとって大きかったのが、ニック・ファジーカスの日本国籍取得だ。来日6年目の33歳で、Bリーグの初代得点王でもある彼の国籍取得が判明したのは今年の4月26日。210センチ・111キロの体格を持ち、何よりクレバーでスキルの高い彼が加わったことで、チームは劇的に進化した。ファジーカスと八村は他の選手がシュートに持ち込めない状況から得点を決められ、リバウンドも強い。日本にとってインサイドは弱みから強みへと変わった。

 生まれ変わった日本は、6月29日のオーストラリア戦でジャイアントキリングを起こす。現役NBAプレーヤー2人を招集した相手に対してファジーカスが25得点、八村が24得点を記録し、79ー78の勝ち星を挙げた。接戦に弱かったチームが、オーストラリア戦ではファウルトラブルや戦術的な手詰まりがないまま試合の終盤を戦えた。

 続く7月2日の「勝った方が生き残る」大一番は、日本が108−68とチャイニーズ・タイペイに圧勝。チームは2勝4敗で2次予選進出を決めた。

2次予選の組み合わせ、力関係は?

日本はW杯1次予選の最終戦でチャイニーズ・タイペイを下し、2次予選進出を決めた 【加藤よしお】

 2次予選はグループE、グループFに6チームずつ分かれて、9月13日に開幕する。新たな抽選は行われず、1次予選のグループを「合併」する形で、以下のように組分けされる。

・グループA(ニュージーランド、韓国、中国)、グループC(ヨルダン、レバノン、シリア)→グループE

・グループB(オーストラリア、フィリピン、日本)、グループD(イラン、カザフスタン、カタール)→グループF

 同じグループだったオーストラリア、フィリピンとの対戦成績は2次予選に持ち越され、日本はグループDの3カ国とホーム&アウェーで戦うことになる。試合会場、開始時間は未発表だ。

 2次予選グループFの日程、対戦順は以下のとおり。

18年9月13日(木):カザフスタン戦(アウェー)
18年9月17日(月):イラン戦(ホーム)
18年11月30日(金):カタール戦(ホーム)
18年12月3日(月):カザフスタン戦(ホーム)
19年2月21日(木):イラン戦(アウェー)
19年2月24日(日):カタール戦(アウェー)

 勝ち試合の勝ち点は「2」で、負け試合でも「1」が与えられる方式だ。同組内に同勝ち点で複数のチームが並んだ場合は、直接対決の結果で順位が決まる。1次予選の勝ち点はそのまま引き継がれるため、日本が参加するグループFの順位は2次予選開始前の時点でこうなっている。

1位 オーストラリア:5勝1敗(勝ち点11/世界ランク10位)
2位 イラン:5勝1敗(勝ち点11/同24位)
3位 フィリピン:4勝2敗(勝ち点10/同30位)
4位 カザフスタン:3勝3敗(勝ち点9/同68位)
5位 日本:2勝4敗(勝ち点8/同48位)
6位 カタール:2勝4敗(勝ち点8/同60位)

 なお7月2日の1次予選でフィリピンとオーストラリアが大乱闘を起こし、両チームに複数の退場(失格)者が出た。FIBAより大きな処分が下され、組み分けや勝ち点に影響する可能性がある。

W杯に自力で出場することが東京五輪にもつながる

オーストラリア戦で証明した実力を見ても、98年以来の「自力出場権獲得」は十分に可能だ 【加藤よしお】

 アジアからW杯本大会に出場するのは7チーム。開催国の中国(グループE)は既に出場権を得ており、中国が出場圏内の成績を収めた場合は下位のチームが繰り上がる。両グループの上位3チームずつと、成績上位の4位チームが出場権を得る。「7位選び」に関するグループEとグループFの比較方法は、現時点でFIBAからの発表がなく不詳だ。

 日本は「グループF・5位」からのスタートだが、勝ち点差を考えれば残る6試合で自力で3位に浮上することは可能だ。今回のW杯でアジア勢の最上位となったチームは、東京五輪の出場権を得る。その後の世界最終予選は「自動出場権を得られなかったW杯参加国」の上位16チームと、「アジア・オセアニア」「アメリカ」「ヨーロッパ」「アフリカ」の4大陸から推薦された2チームずつ(合計24チーム)が出場する。まだ確定していない要素も残るが、「2次予選で結果を出し、W杯に自力で出場する」ことが東京五輪にもつながる。

 仮に1次予選で敗退していても、FIBAが日本の推薦出場を認めた可能性はあっただろう。しかし、日本バスケ界にとって20年はステップであって、決して成長のゴールではない。見ごたえのある試合をして国内外の敬意を勝ち取り、選手たちが未来に向けた経験を得ることこそ、五輪出場の価値だ。成長の予感を感じさせる戦いが見せられないならば、日本が五輪に出る意味などない。

 五輪の出場国数はわずか「12」と少ない。1976年のモントリオール大会から出場権を得られていない日本が、東京五輪に自力で出ることは容易でない。しかしW杯が「24」から「32」へ出場チームが増加したことを考えても、オーストラリア戦で証明した実力を見ても、98年以来の「自力出場権獲得」は十分に可能だ。

 サッカーのW杯で日本が見せた快進撃に、ラマス・ジャパンが続けたら爽快だ。

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著者プロフィール

1976年に神奈川県で出生し、育ちは埼玉。現在は東京都北区に在住する。早稲田大在学中にテレビ局のリサーチャーとしてスポーツ報道の現場に足を踏み入れ、世界中のスポーツと接する機会を得た。卒業後は損害保険会社、調査会社などの勤務を経て、2010年からライター活動を開始。取材対象はバスケットボールやサッカー、野球、ラグビー、ハンドボールと幅広い。2021年1月『B.LEAGUE誕生 日本スポーツビジネス秘史』を上梓。

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