自信と、反骨心と、覚悟を持って16強へ ポーランド戦翌日、日本代表はさらに団結
日本代表選手たちが感じる覚悟と責任
選手たちは日本サッカー界全体を背負い、覚悟を胸に戦っている 【写真:長田洋平/アフロスポーツ】
「ここからの1年、アジアカップがあって、コパ・アメリカ(南米選手権)に出るかもしれないという流れって南アフリカ大会のときと似ていて。南アフリカで結果を出したあと、多くの選手がヨーロッパでチャレンジする機会を得て、アジアカップを獲って、なでしこも結果を出して、日本サッカーの人気が飛躍した。僕らにはそういう責任がのしかかっている。日本サッカーの人気を左右するんじゃないかとか、サッカーに携わる仕事をしている人たちの人生にも関わっているということに1人1人が責任を持ち、戦う覚悟ができているかどうかがすごく大事になるんじゃないかと思います」
吉田の言葉は、それだけでは終わらなかった。
「よく言われるように紙媒体が苦しいとか、サッカー人気が落ちたらスパイクが売れなくなってメーカーも苦しくなるとか、みんなにとって不都合なことがたくさんあると思う。みんなが幸せになるためには、やっぱり僕らが結果を出すしかないと思っています。そのために覚悟を持ってやることが大事だと思います」
プロリーグができて25年が経ったが、それでもやはり日本サッカー界が代表人気、代表ビジネスによって支えられているのは確かだろう。
しかし、日本代表は4年前のブラジル大会で惨敗し、2015年のアジアカップでも早期敗退を喫した。かつて代表戦のテレビ中継といえば高視聴率を稼げるドル箱だったが、W杯ロシア大会のアジア予選では視聴率が低迷した。これでもし、W杯で2大会連続して惨敗でもしようものなら、日本サッカー界は急速にしぼんでしまうかもしれない――そうした危険性を吉田は感じ取っていたに違いない。
5月末に千葉県内で行われた国内キャンプ。合流した日のトレーニング終了後、長谷部も自身の覚悟を明かしていた。
「今回のW杯の結果で、日本サッカー界の未来が大きく左右されると思う。そこに対しての責任はあると思います」
批判もまたモチベーションに変えて
グループリーグを「突破したことに誇りをすごく感じている」と原口 【写真:長田洋平/アフロスポーツ】
「ここで勝つか負けるかは、日本サッカーにとっても、僕のサッカー人生にとっても、大きく変わる部分があると思う。それほど大きな大会だということは自覚しています」
こうした言葉を聞いてきた。短い準備期間のなかで徹底的に議論をかわし、意見をぶつけ合い、プレッシャーを押しのけて戦う姿も見てきた。だから、ポーランド戦翌日のこの日、原口が語った言葉も、素直に心に染み入ってきた。
原口は言葉を絞り出すようにして言った。
「……言いたい人はね、言いたいと思うんですよ。でも、正直な話、勝負の世界で生きていて、本当に国を背負って真剣勝負をしている人だったら、僕らの気持ちは分かると思います。きっと批判している人は、本当にギリギリの戦いをしたことがない人かなと僕は思う。僕らがどれだけ準備をしてきて、この3試合で突破することを考えてきて、僕らがどれだけ戦ってポイントを取ってきたかは見ている人だったら分かると思います」
そう言うと、原口は自分に言い聞かせるようにして、続けた。
「うん、だから僕は恥ずべきことではないと思うし、うん。突破したことに誇りをすごく感じているし、このグループの強さというのを感じているので。はい」
だから批判をするな、ということではない。人それぞれ、どんな意見を持つのも自由だということは、選手たちも分かっている。それに、そんな批判に押しつぶされるほど、彼らはヤワな集団ではない。国内外で巻き起こっている批判もまた、ベスト16を戦ううえでの彼らのモチベーションになっている。
長友が少しの曇りもない瞳で、力強く言った。
「批判があるのは分かっている。ただ、自分たちはまず決勝トーナメントにいくんだという思いでやってきた。どんな状況であろうと、這いつくばってでもスタートラインに立ちたかったから、サッカー選手としてその舞台で勝負できることに幸せを感じます。あとは、その批判を全部ふっとばしたいという気持ちが強いですね。ベルギー戦で結果を出して見返すぞ、という強い気持ちがあります」
強豪相手に互角以上に渡り合い、決勝トーナメント進出を決めたという自信と、国内外で巻き起こった批判に対する反骨心と――。おそらく日本代表は、これまで以上に団結力があり、精神的にタフな集団となって、ベルギー戦のピッチに立つはずだ。