W杯を彩る東京五輪世代のスターたち 主軸から未来の“名手候補”まで一挙紹介

川端暁彦

GL敗退も足跡を残した選手たち

スペイン生まれのモロッコDFハキミ(右)も、19歳とは思えぬクールな判断と高い運動能力を示した 【Getty Images】

 惜しくもGLで散ってしまったチームの中にもキラリと光ったヤングスターはいた。たとえばセルビアの21歳DFニコラ・ミレンコビッチは3試合すべてにフル出場。195センチの偉容を誇る選手でありながら、時には右サイドバックもこなせる器用さまで備える好選手。今大会も壁のような存在感と、今後への可能性を示した。このまま経験を積んでいけば、さらに上のステージでの活躍を見られる日も近そうだ。

 スペイン生まれのモロッコDFアクラフ・ハキミもセンスあふれるプレーで大いに目を引いた。レアル・マドリーでDFダニエル・カルバハルらとポジションを争いながら成長してきた右DFは、19歳とは思えぬクールな判断と高い運動能力を生かして善戦の際だったモロッコの主力選手の1人として3試合すべてにフル出場。派手に目立つタイプではないのだが、それでも自然と見る者に「何者?」と思わせたであろうハイレベルなタレントだった。モロッコは東京五輪世代の選手が4人もいるチームでもあり、次回大会以降での活躍が期待できそうだ。

 他にもセネガルのムサ・ワグエは日本戦での巧みで力強い一発をもってアフリカ最年少ゴール記録を塗り替え、パナマのリカルド・アビラはイングランド戦で同国で永遠に語り継がれるであろう歴史的初ゴールをアシスト。ナイジェリアのGKフランシス・ウゾホも、経験が重視されるポジションにあって奮闘し、存在感を示した。17歳からA代表だったエジプトのラマダン・ソブヒも、W杯デビュー。3試合すべてに出場している。

 アジア勢では今大会最年少エントリーだった99年生まれのオーストラリア代表MFダニエル・アルザニが3試合に出場して足跡を残し、20歳で10番を託された韓国のMFイ・スンウも2試合に途中出場してアグレッシブなプレーを見せた。

“最終ちょっぴり出場”は期待の表れ

 面白かったのは、少なくない国がGLの最終戦で「期待の若武者」のために交代カードを割いたこと。98年のフランスW杯に初出場した日本も、まだ18歳だった小野伸二を交代で送り出していたが、似たような現象が各国で見られた。デンマークのカスパー・ドルベリ、アイスランドのアルベルト・グズムンドソン、コスタリカのイアン・スミス、セルビアのルカ・ヨビッチといった選手たちが、未来のブレークへの布石となる“最終ちょっぴり出場”を果たしている。

 今大会は約3分の2の国にU−21年代の選手がおり、彼らのうちの何人かは2年後の東京五輪でも見る機会があるだろう。ここまで書いてきた内容からも分かるように、日本代表は3分の1のほうとなっているわけだが、大会後の世代交代は必至であり、新たにA代表へ食い込み、出場を果たす選手も出てくるはず。いや、そうでなくては困るというところ。

 今大会はトレーニングパートナーとしてU−19日本代表を帯同させ、彼らにA代表との練習を体感させ、W杯の試合を生観戦させることで特別な刺激を与えた。A代表の紅白戦に出場した選手もいれば、A代表控え組との練習試合では全員が出場している。彼らの中からも、この特別な刺激を自身の財産に変え、ブレークスルーを遂げる選手が出てくることを期待しておきたい。

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著者プロフィール

1979年8月7日生まれ。大分県中津市出身。フリーライターとして取材活動を始め、2004年10月に創刊したサッカー専門新聞『エル・ゴラッソ』の創刊事業に参画。創刊後は同紙の記者、編集者として活動し、2010年からは3年にわたって編集長を務めた。2013年8月からフリーランスとしての活動を再開。古巣の『エル・ゴラッソ』をはじめ、『スポーツナビ』『サッカーキング』『フットボリスタ』『サッカークリニック』『GOAL』など各種媒体にライターとして寄稿するほか、フリーの編集者としての活動も行っている。近著に『2050年W杯 日本代表優勝プラン』(ソル・メディア)がある

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