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世論を覆す大金星も、限界が見えた韓国
ロシアの地で感じた改革の必要性

韓国メディアは選手たちの“闘魂”を絶賛

試合後、感極まるソン・フンミン。韓国メディアはこぞって選手たちの“闘魂”を絶賛した
試合後、感極まるソン・フンミン。韓国メディアはこぞって選手たちの“闘魂”を絶賛した【Getty Images】

 だが、イ・ゴン記者によると、選手たちが絶望感に苛まれることはなかったという。初戦で負傷し、松葉づえをついていたパク・チュホだけではなく、メキシコ戦で負傷したキ・ソンヨンも治療やリハビリを後回しにして練習を見守り、チームを鼓舞していたらしい。


 また、ドイツ戦後にキム・ヨングォンが明かしたところによると、「DF陣は毎日のように集まってビデオを見ながら、いかに耐えしのぐか、ドイツの選手たちはどう動くかなどを話し合っていた」という。一部のメディアは「0−7もありうる」と大敗すら覚悟していたが、選手たちは諦めていなかったわけだ。


 そんなチームのスピリットを多くの韓国メディアが“闘魂”の2文字を用いて絶賛している。「最後に光った韓国の闘魂」「奇跡を起こした太極戦士の闘魂」「非難にも互いを信じたワンチームの闘魂」。試合後のセンターサークルで長く続いた円陣が印象的だったのも、その戦いぶりが熱く激しく一途だったせいかもしれない。月並みな表現になるが、責められ追い詰められてやっと火が付くのも、韓国らしかった。

ドイツ戦の試合後、選手たちはセンターサークル付近で円陣を組み、互いの健闘をたたえ合った
ドイツ戦の試合後、選手たちはセンターサークル付近で円陣を組み、互いの健闘をたたえ合った【Getty Images】

 もっとも、韓国にとってW杯ロシア大会は闘魂だけでは限界がある、ということを思い知らされた大会ではなかっただろうか。


 例えば、FIFA(国際サッカー連盟)のスタッツによると、スウェーデン戦では枠内シュートが0(スウェーデンは4本)に終わった。続くメキシコ戦ではパス成功率82%(メキシコは89%)、ドイツ戦でのボール支配率は30%。目に見えない闘志や執念を代弁する例として出される走行距離で相手を上回っても、パスの精度やシュートの正確さなど、個々の技術力の未熟さは目に付いたし、ファウルや警告も多かった。


 スウェーデン戦では23回のファウルと2枚の警告、メキシコ戦では24回のファウルに4枚のイエロー、ドイツ戦では16回のファウルに4枚の警告。グループステージ3試合で喫した3失点のうち、2ゴールが痛恨のPKだっただけに、闘魂たくましさも行き過ぎれば、結果的には自分たちの首を絞めることを思い知らされたはずだ。

韓国の“レジェンド”は「根本的な改善」を切望

韓国のレジェンド、パク・チソンは代表チームに対し「根本的な改善を」と指摘
韓国のレジェンド、パク・チソンは代表チームに対し「根本的な改善を」と指摘【Getty Images】

 何よりも、ロシア大会に臨むための準備と態勢に限界があった。毎度のごとく代表監督の途中交代があり、前回のブラジル大会同様、1年足らずの準備期間で挑んだのが今回のチームである。強化期間中は欧州組だけでの海外遠征があったり、国内組とJリーグ、中国組だけで固めた遠征もあったりとちぐはぐで、ようやくベストメンバーが固まっても、大会が迫るにつれて主力の故障離脱が相次いだ。


 そうした紆余(うよ)曲折があっても、最後にドイツ相手に大金星を挙げたことは評価に値するが、それはピッチで戦った選手たちの“闘魂”によるものであって、韓国サッカー界全体の総合力で勝ち取ったものではない。


 くしくも韓国のテレビ局SBSのサッカー解説者としてロシアに来ていたパク・チソンが、ドイツ戦をこんなコメントで締めくくっている。


「今日の試合で有終の美を飾ったが、韓国サッカーが解決しなければならない宿題は依然として残っている。韓国サッカーはまず、根本的なシステムから改善しなければならない。その過程で起こる苦痛と犠牲も耐えなければならなない。これまで韓国サッカー界が見過ごしてきた部分に対する本質的な改善と、関係者たちの犠牲を踏み台にして、新しく固めていかなければない」


 システムを変えなければならない。本質的な改善を図らなければならない。17年10月にロンドンで行ったインタビューでも、「韓国と世界との格差が縮まったとは思わない。その現状を韓国サッカー界全体が重く受け止めるべき」とパク・チソンは話しており、ロシアでもその言葉を繰り返していた。


 歴史的勝利を飾ってもなお、“レジェンド”が改革の必要性を強調したのは、2大会連続してグループリーグ敗退に終わった危機感のせいか、はたまた韓国サッカーが持つポテンシャルへの確信があるためなのか。その真意についてはいずれ機会があるときにじっくり聞いてみたいと思うが、今はただ、たたかれ責められ見放されても、ロシアの地で一矢を報いた選手たちに拍手を送りたい。

慎武宏

1971年4月16日東京都生まれの在日コリアン3世。著書『ヒディンク・コリアの真実』で02年度ミズノ・スポーツライター賞最優秀賞受賞。著書に『祖国と母国とフットボール』『イ・ボミはなぜ強い?〜女王たちの素顔』のほか、訳書に『パク・チソン自伝』『サムスンだけが知っている』など。日本在住ながらKFA(大韓サッカー協会)、KLPGA(韓国女子プロゴルフ協会)に記者登録されており、ニュースコラムサイト『S−KOREA』編集長も務めている

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