JリーグクラブにSlackを入れてみた 「IT活用でJクラブは変わる」第1回

えとみほ(江藤美帆)

縁あって、5月から栃木SCのフロントスタッフとして働いています 【(C)J.LEAGUE】

 こんにちは、えとみほ(江藤美帆)と申します。今年の3月末まで、東京・渋谷のスタートアップ企業でいわゆる「IT社長」をやっていました。いまは縁あって、5月からJリーグの栃木SCのフロントスタッフとして働いています。ちなみに出身は富山県なので、栃木県には縁もゆかりもありません。

 そんな私がなぜ栃木SCで働くことになったのか。一言で言うと、弊社社長の橋本大輔との出会いがあったからです。橋本は現在42歳と、Jリーグ54クラブの社長の中でも若い部類に属し、とても柔軟な考えを持っていました。そんな橋本が、最初の面接で開口一番、私に言ったのが「うちはデジタルが弱い」という言葉でした。

 ただ、この「うちはデジタルが弱い」というセリフは、経営者の時候の挨拶(あいさつ)のようなもので、中小零細企業の社長の大半が自社をこのように評します。つまり、たいていの場合はとりたててその会社だけが遅れているわけではなく、どこもそれほど大差はないのです。

入社初日、メールの多さに驚く

 そんな橋本の言葉などすっかり忘れて入社日を迎えた私は、いきなり驚愕(きょうがく)することになります。初日から受け取るメールがやたら多いのです。「どうしてこんなにメールが多いんだろう?」と思って読んでみたところ、その大半が社員同士のコミュニケーションであることに気づきました。

「◯◯さん、この件ご確認をお願いします」「社長、こちらが本日の日報です」といったやりとりを、すべてメールで行っているのです(ちなみに、スポーツ業界にはメールよりさらに厄介な「FAX文化」というものもあるのですが、これについては後日また機会があればお話します)。

 もしかしたら、これが日本の企業の当たり前の姿なのかもしれません。しかし、ITスタートアップ業界ですっかり「チャット文化」に慣れてしまっている私にとっては、このやりとりが著しく生産性を下げているように見えました。毎回、社内の人が相手なのに「◯◯様」と宛名を書いている人もいれば「お疲れ様です」と挨拶を書いている人もいます。チャットならばスタンプ一発で終わるところも、メールだとそうはいきません。丁寧にしたくなくても丁寧にならざるを得ないのです。

入社3日目、Slackのアカウントを作って社長に送りつける

 これはどうにかせねばと思った私は、さっそく栃木SC専用のワークスペースをSlackに作って、部長以上の幹部職員と自分の部署のメンバーを招待しました。Slackというのは、IT業界でおもにエンジニア中心に使われている外国産のチャットツールです。分かりやすく言うと、業務用のLINEのようなものです。LINEと同じようにグループを作ってチャットをしたり、個人でDM(ダイレクトメッセージ)を送り合ったりできます。

※リンク先は外部サイトの場合があります

 Slackは一度使い始めると、もうこれなしでは仕事ができないと思えるほど便利なツールなのですが、ただ一点、慣れるまで若干操作が難しいという欠点があります。たとえば、チャンネル(ユーザーグループ)の中で全員に一斉に通知を送りたい場合、Slackでは「@channel」というコマンドを打たなければなりません。こうしたコマンドを覚えないといけないのが初心者には難解に映ることがあり、ツール類に慣れているはずのIT企業でも「Slackを導入したがうまくいかなかった」という声をときどき聞くことがありました。

 そこで私は、導入に際して次のようなフローを立てました。

【提供:江藤美帆】

 業務用のチャットツールは、Slack以外にもいくつかあります。その中でも国産の「ChatWork(チャットワーク)」はシンプルな操作性で人気があります。ただ、チャット以外の機能はSlackの方が充実しているので、将来的な機能の拡張性を考えると、個人的にはできればSlackを導入したいと考えていました。そこで、「まずは一部社員にSlackを導入してみて、うまくいったら全社員に導入する。厳しそうならChatWorkなどの他のツールに変更する」というプランを立てて、実行してみることにしました。

※リンク先は外部サイトの場合があります

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著者プロフィール

Jリーグ・栃木SC、マーケティング戦略部長。外資IT企業、大手ネット系広告代理店勤務などを経て、スマホで写真が売れちゃうアプリ「Snapmart」を開発、ピクスタ100%出資子会社のスナップマート株式会社の代表取締役に就任。2018年3月に代表を退任し、5月より現職

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