JリーグクラブにSlackを入れてみた 「IT活用でJクラブは変わる」第1回

えとみほ(江藤美帆)

メリットは他のスタッフ同士の会話が見えること

 入社して2週間、まずは幹部社員とマーケティング戦略部の社員の合計5名でSlackを導入しました。栃木SCのフロントスタッフは以前私がいたIT業界に比べると平均年齢が高く、だいたい30代半ばになります。意外にも20代は多くありません。

 しかし、私の心配は杞憂(きゆう)に終わりました。とくに社長の橋本は気になったこと、思いついたことをどんどんチャンネルに送ってきました。これが従来は対面と電話とメールで伝えられていたのかと思うと、ゾッとするくらいの情報量、頻度です。逆にチャット導入以前はそれほどでもなかったのだとすれば、コミュニケーションの機会を大幅にロスしていたということになります。

 現在、私はまだ新入社員という立場でもあるわけですが、その立場から見てもSlackを導入したことは良かったと思います。というのも、Slackでは1対1の会話でなくグループで会話をするため、社長と他のスタッフのやりとりや、他のスタッフ同士の会話をのぞくことができるからです。サッカークラブでは皆タスクに追われて多忙ですから、いちいち分からないことを誰かに聞くのはかなり気が引けます。そのような環境下では、質問しなくても他の人同士の会話で疑問が解消されるチャットツールは、新入社員にとって大きな助けになります。

【提供:江藤美帆】

全社導入初日、若手女子社員からSlack電話がかかってくる!

 試験運用が滞りなくできたことから、5月の下旬から全社にSlackを導入しました。最初は皆「これは何ですか?」「使いこなせるかなぁ……?」という感じでしたが、セットアップの部分だけのサポートで、あとは自然に使いこなせるようになりました。

 特に20代の社員はこちらがまったく教えてもいない機能(新しいチャンネルを作る、ピン留めをするなど)を勝手に使い始めていて驚きました。一番びっくりしたのは、全社導入初日に私のスマホ宛に20代の女子社員からSlack電話がかかってきたことです。この時ばかりは「若いってすごい!」と思わざるを得ませんでした。

今後の課題は「よりカジュアルなコミュニケーション」

 そんなわけで、良いことづくめのように見えるチャットツール導入ですが、1つだけ未解決の課題があります。それは、コミュ二ケーションの質の問題です。まだどことなくコミュニケーションが堅い(メールっぽい)のです。

 私が以前いたITスタートアップの世界は、上下関係がなくフラットな組織だったため、チャンネルの中に社長がいようが誰がいようが不満や冗談を言い合っていましたが、弊社のSlackはまだその域に達していません。「使い方に慣れていないから」というよりは、やはりスポーツ業界特有の体育会系のカルチャー、上司のいるところでは本音を話しづらいという空気があるような気がします。なぜなら、みんな私(部長)に対しても驚くほど丁寧に接してくれるからです。

 ここで私がやるべきことは、あえての「無礼」をはたらくことではないかと思っています。社長のメッセージに対して「いいね」のスタンプで返すとか、長々と丁寧に返信したいところを「OKです」の一言で返すとか、極限までコミュニケーションを軽くすることで、「あ、これで大丈夫なんだ」と思ってもらうこと。それが社内のムダをなくし、「ブラック労働の温床」と呼ばれるスポーツ業界の働き方改革を進める「はじめの一歩」になるのではないかと考えています。

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著者プロフィール

Jリーグ・栃木SC、マーケティング戦略部長。外資IT企業、大手ネット系広告代理店勤務などを経て、スマホで写真が売れちゃうアプリ「Snapmart」を開発、ピクスタ100%出資子会社のスナップマート株式会社の代表取締役に就任。2018年3月に代表を退任し、5月より現職

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