日本人初Vで注目、自転車BMXの五輪金候補 仕事を辞め一念発起、21歳・大池水杜

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日本人初優勝で注目のガールズライダー

「日本の女性のシーンを引っ張っていくのは私しかいない」

 自転車BMXフリースタイルパークの大池水杜(みなと)は、取材中、並々ならぬ決意を何度も口にした。5月のワールドカップ第2戦(フランス・モンペリエ)で、日本人初となる優勝の快挙を達成した21歳。正式種目として初実施される東京五輪では、金メダル候補として名前が挙がる。

日本人初のW杯制覇を果たした大池水杜。東京五輪の金メダル候補として注目が集まっている 【Getty Images】

 先のモンペリエ大会では、ジャンプしながら両手をハンドルから離す「ノーハンド」や、女子では世界で数名しかできない「バックフリップ(後方宙返り)」などを次々に決め、ノーミスのランで会場を沸かせた。

「東京五輪の追加種目に決まった直後は正直、当時の私と海外とのレベルの違いを考えると(金メダルは)難しいなと思っていたんです。難しいこともできないですし。それが今回のW杯で優勝したことで、『東京五輪に向けて本格的な第一歩をようやく踏み出せたな』って思っています」

コーチは「かっこいいお兄さんたち」

 大池は日本初の女子プロライダーだ。BMXフリースタイルパークは女子の競技人口が少ない。昨年初開催された全日本選手権でも、女子エリートの部に名を連ねたのは大池ただ一人だった。

 世界的にも状況は変わらない。3年前には国際大会での女子クラス開催のために、自らSNSなどを駆使して選手集めに奔走したこともある。「当時は自分で動くしかなかったので」と、それが当然のように話した大池。屈託ない笑顔ににじむ芯の強さは、数々の困難を打ち破ってきた証しだ。

苦労話は多いが、終始明るい笑顔で語ってくれた 【スポーツナビ】

 大池を世界トップレベルへと押し上げたのは、背中を追い続けてきた「かっこいいお兄さんたち」だ。BMXでは先輩ライダーがコーチ代わりになり、互いが教え合って腕を磨く文化がある。大池も中学2年生の冬にBMXを始めて以来、行く先々のパークで出会ったライダーから学んできた。昨年からは強化合宿などで男子のトップライダーと行動する機会が増え、より高いレベルの助言を受けられるようになった。

「彼らとの練習は勉強になります。自分が『こうやるのかな?』と思っていたのと実際とが全然違うことがありますよね? そういう時にアドバイスを聞いて、実際に見させてもらってイメージを湧かせて、そこからまた練習という形で今はやっています」

 現在は東京五輪、その次の2024年パリ五輪まで見据えて、あらゆるスキルのレベルアップに取り組んでいる。その足がかりとして、女子では数名しかできない大技「フレア(後方に1回転しながら横に半回転する3D技)」を年内に習得するつもりだ。

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