日本人初Vで注目、自転車BMXの五輪金候補 仕事を辞め一念発起、21歳・大池水杜

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仕事か競技か……迷いを吹っ切った“招待状”

フルタイムで働きながら競技を続けたが、仕事との両立が難しく頭を悩ませていた 【スポーツナビ】

 モータースポーツ好きの父の影響で、大池は幼少の頃からモトクロスやバイクトライアルといった二輪競技に打ち込んできた。中学2年でBMXに転向すると、高校1年時に単身エストニアに乗り込み出場した「シンプルセッション」で、いきなり5位入賞と結果を残した。

 高校卒業後も、建築関係の会社に勤めながら競技を継続。しかし、十分な練習時間が確保できず、遠征するにも休みをとれない現状に頭を抱えていた。

「常に悶々としていました。五輪が決まる前から、このままでは難しいと感づいていて、『世界一になる』とずっと言い続けていたのを止めて、言わなくしていたんです。『本当はなりたいけれど、今のままでは無理。でも、仕事を辞めてもどうにもならないかもしれない。ああ、どうしよう……』という感じで2年間くらい、ずっと悩んでいました」

 背中を押したのは、BMXの本場・米国から届いたXゲームズとUSオープン出場の“招待状”だった。千載一遇のチャンスだが、遠征となれば1カ月間、会社を空けなければならない。そうならばと「1回ここで踏ん切りをつけてもいいのかな」と迷いが吹っ切れた。会社を辞め、競技に専念することに決めた。

「今は辞めて良かったなと思っています。逆に、平日の昼間5日間ずっと仕事をして、平日の夜と土日だけで五輪を目指すっていうのは、中途半端過ぎると思うんです」

昔から変わらない“一番の夢”

目指す舞台がW杯や五輪と大きくなっても、一番の夢は小さい頃から変わらない 【スポーツナビ】

 第一人者としての責任と覚悟。大池の言葉にはBMXに懸ける強い思いがにじむ。W杯の優勝で、東京五輪のメダルに向けて周囲の期待もますます高まっている。それでも、昔から目指しているものは変わらない。いつか結婚して“かっこいいお母さん”になることだ。

「一番の夢は、自分の子どもと一緒にパークで一緒に飛べるお母さんかな(笑)。もちろん、自分の子どもが乗りたいと言ったらですけれど。BMXは親子で乗っている人が多くて、うらやましいなと小さい頃から思っていました。私の父は一時かじる程度に乗っていたんですけれど、ガッツリは乗らなかったので、一緒にガッツリ乗っている親子を見ると『素敵だな、ああなりたいな』と昔から思っているんです」

 はにかみながらそう語る姿に、BMXを純粋に愛する21歳の素顔を垣間見たような気がした。

(取材・文:小野寺彩乃/スポーツナビ)

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