過酷な全米オープンゴルフの“変化” 松山英樹のメジャー制覇に追い風なるか
かつては「4日間でイーブンパー前後の戦い」
全米オープンに臨む松山英樹。初のメジャー制覇に期待がかかる 【Getty Images】
世界一過酷な戦いと言われてきた全米オープン。ゴルフの4大メジャーの中でも、特に難コースが舞台とされてきた。毎年異なる米国の名門コースを舞台に開催されるのが本大会の大きな特徴。「4日間でイーブンパー前後の戦い」、「選手を苦しめるのが全米オープン」とされてきた全米オープンだが、近年はその傾向が崩れてきている。そして、その変化こそが、松山のメジャー制覇には欠かせない要素となってきた。
全米オープンといえば、各ホールが林にセパレートされ、フェアウェイが狭く、とにかく深いラフが選手を苦しめてきた。ラフに入れば1打のペナルティが自動的に科されるようなものであり、“世界一過酷”なメジャーと呼ばれてきた。過去5年の開催コースを見ると、2013年のメリオンゴルフクラブ(ペンシルベニア州)は古き良き趣を残した林間コースだったが、翌14年からはイメージが一変し、変化が見られる。
2014年以降はアグレッシブさが優勝の鍵
14年大会で完全優勝を果たしたマーティン・カイマー。この年から“変化”が始まった 【写真:ロイター/アフロ】
西海岸のワシントン州に新しく完成したばかりのチェンバーズ・ベイを舞台に行われた15年大会。コース内に木は1本。湾沿いに面したコースは、リンクスの姿を思わせるものとなった。見晴らしのいいコースには砂丘、フェスキュー(細く長い芝)といった英国、スコットランド特有の障害物が点在。フェアウェイも広くとられ、クラシカルな趣は一切排除された。優勝したジョーダン・スピース(米国)は、4日間で18のバーディを奪取。攻撃一辺倒のゴルフで栄冠を勝ち取った。
松山(左)は昨年の全米オープンで猛追を見せ、自身メジャー最高の2位タイに入った 【写真:USA TODAY Sports/ロイター/アフロ】
ジョンソン、ケプカはツアー屈指の飛距離を誇り、スピースは完璧なパッティングでバーディを量産。彼らに共通するのは、決して守りに入らずアグレッシブさを失わないことだ。そういう観点から見ると、松山にも大いにチャンスありと見てもよさそうだ。今季は左手親指付け根のケガもあってツアー離脱から調子が上がらずにいたが、2週前のザ・メモリアルトーナメントでは、初日に「65」をたたき出し首位スタート。2日目以降は足踏みしたものの、上位争いを演じている。
松山は初日を乗り切り爆発を
得意のショットでバーディ量産を狙いたい 【写真:USA TODAY Sports/ロイター/アフロ】
ひとつ気になるのが、初日の出遅れだ。全米オープンに限らず、メジャーでは初日のスコアが言うまでもなく大きなポイント。松山は予選落ちを喫した16年には「74」で4オーバー、昨年も「74」で2オーバーと、出遅れが目立つ。バーディを取る力があるからこそ、この初日を乗り切れば、さらに勢いに乗ることも可能だ。
今年の舞台・シネコックヒルズゴルフクラブ(ニューヨーク州)は、前回04年に開催されたときよりもフェアウェイ幅が1.5倍ほども広がっているという。そのぶん、グリーン周辺の難易度が高く、松山自身も「ショットがカギ」と、グリーンを狙うショットの精度が好スコアを生み出すのは必然だ。ショットメーカーとして米ツアーでもその地位を築いている松山にとっては、バーディ量産に向けて絶好の舞台と言っても過言ではない。
【松山英樹・全米オープン成績】
2013年 10位タイ(+7、71、75、74、67)
2014年 35位タイ(+8、69、71、74、74)
2015年 18位タイ(+3、70、71、72、70)
2016年 予選落ち(+12、74、78)
2017年 2位タイ(-12、74、65、71、66)
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