米ツアー初優勝を遂げた小平智 辛酸をなめた昨季終盤からの大躍進

北村収

賞金王とマスターズ出場を逃した昨季

「RBCヘリテージ」で米ツアー初優勝を飾った小平。日本人5人目の快挙となった 【Getty Images】

 昨シーズンの小平智は、日本一悔しい思いをしたプロゴルファーではなかっただろうか。最終戦で宮里優作に逆転され賞金王を逃し、年末の世界ランキングでも51位となり、50位までに与えられるマスターズ出場権を逃した。

 昨季終盤、11月上旬の「三井住友VISA太平洋マスターズ」に優勝。「あくまでも目指すはマスターズ出場(年末の世界ランキングで50位以内に入ること)」と語っていた小平だが、3試合を残して2位の宮里優作に約2000万円の差をつけ賞金王レースでも優位に立っていた。

 ところが続く「ダンロップフェニックストーナメント」では、体調不良のため2日目の9ホールを終えて棄権。「喉が痛い」と風邪の症状を話していた。「ゆっくり休めたので体調は戻った」と翌週の「カシオワールドオープン」では復調。しかし初日は「首に痛みを感じる」とまたしても体の不調との戦いとなった。なんとか18ホールを完走したものの、6ボギー1ダブルボギーの「79」をたたき7オーバーの101位タイで初日を終えた。

 予選通過すら危ぶまれたが、2日目は賞金ランキングトップの意地を見せる。1イーグル、5バーディ、2ボギーの「67」と巻き返し、2オーバーの54位タイとカットラインぎりぎりで予選を通過。3日目「68」、最終日「66」と快進撃を見せ、結局8位タイで大会を終了。初日がパープレーなら楽々優勝しているくらい見事なプレーを2日目から見せていた。

 そして迎えた最終戦の「日本シリーズJTカップ」。賞金ランキングトップの小平は、2位の宮里優作と約1700万円という大きな差をつけていた。ところが、賞金王は最終戦で優勝した宮里優作の手に。ただし、その時点では小平が賞金王よりもこだわっていたマスターズの出場がかかる世界ランキング50位以内に入っていた。

 日本ツアーの最終戦の翌々週の12月中旬に行われたアジアンツアー最終戦「インドネシアン・マスターズ」で、小平よりも世界ランク下位にいた2選手が快進撃をみせた。4位となった宮里優作と5位に入ったキラデク・アフィバーンラト(タイ)が最終的に小平を抜き、小平の年末時の世界ランキングは51位。1人の差でマスターズ出場を逃した悔しさはどのようなものだったのであろうか。

快進撃が始まった18年シーズン

念願のマスターズで28位に入った小平。RBCヘリテージの優勝をうけ、来年のマスターズ出場権を得ている 【写真:ロイター/アフロ】

 2017年への“リベンジ”ストーリーは、18年シーズンの序盤から始まった。1月の日本ツアーとアジアンツアーの共催試合で強さを発揮。マスターズチャンプのセルヒオ・ガルシア(スペイン)が優勝した「SMBCシンガポールオープン」で2位タイ、「レオパレス21ミャンマーオープン」でも2位タイに入る活躍で世界ランキングを上げ、3月末までに世界ランキング50位以内に。念願のマスターズ出場権を獲得した。

 マスターズでは見事予選を突破して28位タイと健闘。そしてその翌週は、見事日本人5人目となる米ツアー初優勝を達成した。かねてからいつか米PGAツアーに参戦したいと話していた小平。この優勝は念願となる米ツアーのシード権をもたらすとともに、初めての出場権獲得までものすごく苦労したマスターズの来年の出場権もゲットした。

 昨年終盤、「練習量では誰にも負けていないと思うし、トレーニングなどすべてにおいて、ゴルフにしっかり向き合えているのは自分だと思っている」と話していた小平。17年は望む結果へあと1歩届かなかったが、17年の努力と悔しい思いが、18年の躍進を生み出した。
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著者プロフィール

1968年東京都生まれ。法律関係の出版社を経て、1996年にゴルフ雑誌アルバ(ALBA)編集部に配属。2000年アルバ編集チーフに就任。2003年ゴルフダイジェスト・オンラインに入社し、同年メディア部門のゼネラルマネージャーに。在職中に日本ゴルフトーナメント振興協会のメディア委員を務める。2011年4月に独立し、同年6月に(株)ナインバリューズを起業。紙、Web、ソーシャルメディアなどのさまざまな媒体で、ゴルフ編集者兼ゴルフwebディレクターとしての仕事に従事している。

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