現役Bリーガーが3x3に続々参加 「GERA OSAKA.EXE」が目指すビジョン

カワサキマサシ

3x3でプレーするメリットとデメリット

昨季はバンビシャス奈良でスキルコーチを務めていた仲西は、今野の呼びかけで現役復帰を決意した 【写真:カワサキマサシ】

 大阪学院大を卒業した07年に大阪エヴェッサに加入し、来季がプロ12シーズン目。デビュー時から彼を取材してきたが、当時は周りに先輩選手ばかりということもあり、チーム内では末っ子のようなたたずまいでいた。自らを強く主張することもなく、裏表のない性格で、腹の中に野心を秘めているようなタイプでもなかった。しかし今目の前で熱く語る男は33歳になり、人間として大きく成長を果たした姿を見せている。

「今のような考えを持つようになったのは、ここ2年ぐらいですかね。それまでは引退したらバスケットコートを運営したいなと、ただ漠然と考えていただけでした。振り返ればもっと早くに気付いて、20代のうちにでも動き出しておくべきだったと思っています。キャリアを終えてからではなく、現役の間に次のキャリアが始まっている。できるならば、そうあるべきだと思うんです。いつか各地でバスケットコートを運営するのは、今も僕の一番の目標。GERA OSAKA.EXEはそこに向かうための僕にとっての第一歩であり、自分にとってとても大事なチームなんです」

 GERAとは大阪弁の笑い上戸を意味する「ゲラ」と、「Get Up(立ち上がる)」の発音を掛け合わせて名付けた。チームを編成するにあたっては「大阪」にこだわり、大阪に縁のある選手たちに今野自らが声をかけて回った。仲西淳、中村友也(アースフレンズ東京Z)、西裕太郎(岩手ビッグブルズ)はいずれも、かつて大阪エヴェッサで共にプレーした仲間たち。そこに現大阪の橋本拓哉、ストリートボール「SOMECITY」でプレーする西畝優、臼井隆浩が加わる。

 引退を表明し、昨季はバンビシャス奈良でスキルコーチを務めていた仲西がここで現役復帰したのは、トピックの1つだ。コートを離れた選手のプレーが再び見られるのは、ファンにはうれしいことであるに違いない。

「ショータから連絡が来るまで、自分が3x3をやることは頭になかったです。でもショータとやれるんだったら、いいなと思ったんです。この延長に5人制での復帰があるかといえば、そこは今のところ否定しておきます。だけれどプレーできる機会が得られたのは良いことですし、ファンの方も見てくれるので一生懸命にやります。これをきっかけに、またいろいろな機会があればいいなと思っています」(仲西)

 高校時代に米国への留学経験があり、当地のバスケットボール事情に明るい仲西は、オフに現役Bリーガーが3x3に参加することの意義をこう語る。

「すごく、良いことだと思います。米国ではオフシーズンはサマーリーグがあるけれど、日本にはそういうものがない。日本で3x3は、そういう位置付けになるんじゃないかと思います。個々でワークアウトしているより、実戦を経験するほうがいいですからね」

 西に現役のBリーガーが3x3でプレーするメリットとデメリットについて問うと、彼はこう答えた。

「僕は、けがを心配するタイプなんです。元チームメートで親友だし、すごく尊敬している先輩のショータからの誘いじゃなかったら、3x3はしていなかったでしょうね。確かにけがをするリスクはあるけれど、僕はメリットの方が大きいと思っています。オフの間に実戦でプレーしてスキルを磨けますし、3x3が五輪種目になったので、5人制とともにこれから必ず人気が出てくるはず。それに僕たちも選手として、プレーで貢献できるかなと思っています」(西)

コンセプトは“バスケットを近くに──”

GERA OSAKA.EXEのコンセプトは「バスケットを近くに──」。3x3は身近にバスケを楽しめることも魅力の1つだ 【写真:カワサキマサシ】

 今野が率いるGERA OSAKA.EXEは、6月9日の開幕戦で初陣を飾った。もう1つの大阪のチーム「OSAKA DIME.EXE」には今野のチームメートである根来新之助、藤高宗一郎ら現役Bリーガーが参戦していることもあり、例年以上の観客が会場に集まった。

 GERA OSAKA.EXEは第2戦で初勝利を飾り、準決勝でOSAKA DIME.EXEとの大阪対決が実現。最終的に優勝を果たすOSAKA DIME.EXEと接戦を繰り広げたが、最後の最後で逆転負けを喫した。現役Bリーガーたちもオフの遊びではなく、真剣なプレーで熱戦を展開。会場は間違いなく、この日一番の盛り上がりを見せた。

 オーナー業を優先する形でこの日プレーしなかった今野は、1日の最後に興奮を隠せない様子で初参戦の大会を振り返った。

「僕が思っていたよりもたくさんのお客さんが来てくれて、びっくりしました。うちの選手も緊張はあっただろうけれど、それ以上の活躍をしてくれて、大阪対決も最後の最後まで分からない戦いで沸かせてくれた。OSAKA DIME.EXEはスケジュールを合わせて、練習してきたチーム。僕らはタクヤ(橋本拓哉)が代表合宿で不在ですし、それ以外の全員がそろったのも、実は昨日が初めてなんです。それでもあれだけ戦えたから、僕の見る目が良かったかな(笑)。僕のプレースタイルがそうなので、ハッスルしてファイトできる選手を集めたつもり。それは充分にプレーで表現できたし、チーム作りの最初の第一歩は、すごく成功した手応えがあります」

 チームはまだ、開幕戦を終えたばかり。これからの展開を問うと、オーナー然とした表情で答える。

「今はチケット収入がないので、スポンサー様からいただいた資金で運営していかないといけない。僕もスーツを着て、スポンサーになってくれそうなところに営業に行っています。まったく嫌ではなくて、やりがいがあるからすごく楽しいんです。もちろんビジネスとして成功させたいですけれど、1年目は手探りの状態。遠くないうちに自分たちで稼いで、収益を出せるようにしていかないといけない。僕らが魅力のあるチームになれば、応援や支援してくれる人も増えると思う。そのためには、誠実にやっていくことが大事だと肝に銘じています」

“バスケットを近くに──”をコンセプトに、GERA OSAKA.EXEと今野は立ち上がったばかり。今後は自分たちから街に出て、バスケットボールを身近に感じてもらう活動なども計画しているという。単なるいちプレーヤーから、次のフィールドへと歩みを始めた今野翔太の新たな挑戦の行方を、見届けていきたい。

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著者プロフィール

大阪府大阪市出身。1990年代から関西で出版社の編集部員と並行してフリーライターとして活動し、現在に至る。現在は関西のスポーツを中心に、取材・執筆活動を行う。

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