いよいよル・マン24時間が開幕へ テストデーで見えたトヨタVの可能性
初優勝へ向けて、トヨタはル・マンでどんな走りを見せるのか? 【(C)Jakob Ebrey / AdrenalMedia】
アロンソがテストデーでトップ
だが、1回目のセッション、残り約1時間というところで、アストン・マーチン95号車に乗るマルコ・ソレンセンと他の複数台が絡むアクシデントが発生。インディアナポリスコーナーのバリアが損傷し、修復のためにセッションはここで終了した。95号車は全損。ドライバーはメディカルセンターに運ばれたが、幸い大きなケガはなかった。この他にも、複数回の赤旗、午後からは3回立て続けのセーフティーカーピリオドと、実際にレーシングスピードで走れた時間は約6時間ほどだろうか。その中で、“ル・マンルーキー”のフェルナンド・アロンソ(トヨタ8号車)が総合トップタイムとなる3分19秒066をマークしている。
だが、トヨタが圧倒的に有利かというと、そんな雰囲気でもない。総合順位でトヨタ8号車に続いたのは、レベリオン・レーシングの3号車。しかも、8号車とのタイム差は、わずか0.6秒だった。同じコンディションではないので単純比較はできないが、昨年のテストデーでポルシェがマークしたタイムは3分21秒から22秒台(トヨタの2台は3分18〜19秒台)。それを考えると、いかに今年のLMP1ノンハイブリッド勢が速いか分かる。WEC開幕戦・スパではトヨタが全ノンハイブリッド車両を2周遅れ(7号車に至っては、1周遅れからスタートして、ノンハイブリッドを2周遅れ)にするという圧倒的な力の差を見せたが、ル・マンではかなり様相が違ってきている。
“何事もなく”は絶対にない24時間
しかし、ル・マンで“何事もなく”などということは絶対にない。思わぬアクシデントやセーフティーカーピリオド、天候の急変など、瞬時の判断を迫られる場面が多々現れる。それがル・マンだ。予想外のハプニングに、いかに正しく対応できるか。それが勝敗を分ける鍵となるだろう。LMP1ノンハイブリッド勢には、耐久レースを知り尽くしているオレカがオペレーションするレベリオン、耐久経験はそれほど豊富ではないもののプロのレース集団であるARTがオペレーションするSMPレーシングと、強敵が居並んでいる。下馬評では“トヨタ楽勝”というムードだったが、どうやら楽勝という状況ではない。
テストデー午後のセッションでは、トヨタ7号車に乗るホセ・マリア・ロペスがフロントのボディワークにダメージを負ってスローダウンしながらピットに戻るという場面も見られた。これはロペスが縁石を跨いだ結果起こったことだと思われるが、例えばそういう小さなミスの積み重ねが致命傷となる。
悲願の初優勝を果たそうと思ったら、トヨタはドライバーたちがミスしないだけでなく、トラブルを起こさず、他車のミスやアクシデントに巻き込まれることもなく、判断ミスもなく、24時間を走り切らなければならない。つまり、かなり“綱渡り”のレースを強いられることになる。“唯一のワークスだし勝って当然”と思われているトヨタには、今まで以上の重圧があるはずだ。その重圧に耐えられるかどうか、そこが今年のレースではひとつの焦点となるだろう。
(テキスト:貝島由美子)
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