ドラフト候補が決勝打で就活アピール 立命館大・辰己涼介が全国の舞台で躍動

松倉雄太

今年のドラフトの上位候補として高い評価を得る立命館大・辰己。全日本大学選手権1回戦でも決勝打を含む3打数2安打2打点と結果を出した 【写真は共同】

 第67回全日本大学野球選手権大会が11日から開幕。東京ドームの第1試合では立命館大(関西学生)が奈良学園大(近畿学生)に4対3と競り勝ち、2回戦進出を決めた。今秋ドラフト候補の立命館大学・辰己涼介外野手(4年/社高)は5回に決勝打となる2点タイムリー二塁打、7回にも三塁前へセーフティーバントを決めるなど、3打数2安打2打点の活躍だった。

頼れる主将の有言実行に監督も納得

「幼稚園の時、テレビで東京ドームの巨人vs.阪神を見てプロになりたいと思った。清水(隆行)選手、仁志(敏久)選手、高橋(由伸)選手、松井(秀喜)選手、江藤(智)選手。常勝巨人の時代の選手をよく覚えています」

 1年春以来となる東京ドームで躍動した――前日の開会式後の取材で、巨人の選手の名前がスラスラ出てくるくらい憧れていた場所だ。

 最初の見せ場は5回2死二、三塁での第3打席だった。奈良学園大の酒井真二監督がマウンドへ向かった際、「絶対敬遠(故意四球)やろなと思った」と覚悟した。だが酒井監督は故意四球を球審に申告せず、勝負を選択。「申告されなかったので、もらったと思った。勝負だったら、外の直球を狙おうと。相手投手の球も高めに浮いていたので、多少ボール球でも外の球を左中間に運ぼうと思いました」。

 狙いは当たる。1ボールからの2球目、奈良学園大の先発・摺石達哉投手(1年・福井工大福井)の高めの直球を捉え、打球は狙った通り左中間へ。結果的に決勝点となる追加点を叩きだした。頼れる主将の一打に後藤昇監督も「昨日のミーティングで辰己が困った時に俺の前に走者をためろ豪語していた。その通りになって良かった。そういうと中々打てないものだが、良く打った」と頬を緩めた。

 もう一つの見せ場は7回の第4打席。1ボールからの2球目を豪快なフルスイングで空振りした後、3球目を三塁前へセーフティーバント。50メートル5秒7の俊足を生かして内野安打にした。このセーフティーバントは、後藤監督のサインではなく、辰己自身の判断と冷静な読んでのものだった。

「打席に入る前にセーフティーをしようと決めました。1球わざと思い切りフルスイングして空振りすれば、さらに後ろに下がるかなと。その前にサードが後ろに下がっていたのですが、念には念をいれました」

 その後、盗塁失敗をしてしまい、「即効でアウトになってしまった」と苦笑いも見せた。

主将としての大きな目標は全国制覇

 大学最終学年となった今シーズン。辰己はリーグ戦の時に、「同じ4回生は就職活動をしている。自分にとっては野球が就職活動。そのためにも全国へ行きたい」とプロを目指す強い決意を語っていた。プロのスカウトも、「走攻守に渡ってポテンシャルが高いですね。大学生の中に1人だけプロが混じっているみたい」(巨人・渡辺政仁スカウト)、「センス抜群の選手。ドラフト上位候補です」(広島・鞘師智也スカウト)と高い評価を口にする。

 ただ、言葉通り全国の舞台を踏んだ今、大きな目標は全国制覇だ。

「日本一にならないと意味はない。日本一になることで僕のアピールにつながると思うこともありますが、僕だけでやっているわけではない。主将としてチームを第一に考えて、日本一になりたい」

 12日の2回戦では昨年準優勝の国際武道大(千葉大学)と対戦する。日本一へ、辰己の選手権はまだまだスタートをきったばかりだ。
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著者プロフィール

 1980年12月5日生まれ。小学校時代はリトルリーグでプレーしていたが、中学時代からは野球観戦に没頭。極端な言い方をすれば、野球を観戦するためならば、どこへでも行ってしまう。2004年からスポーツライターとなり、野球雑誌『ホームラン』などに寄稿している。また、2005年からはABCテレビ『速報甲子園への道』のリサーチャーとしても活動中。

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