スイス戦で確認するのは守備のパターン 本田「守備が良ければ攻撃の特長も出る」

飯尾篤史

全員守備は最後の手段、まずはザックジャパンの進化型を

スイス戦は守備のプランA、Bを確認しつつ、どう攻撃につなげるかがテーマ 【写真は共同】

 どんな相手にも攻撃的なサッカーで勝負するというロマンを抱いてW杯に臨んだが、1分け2敗の惨敗に終わり、深いダメージを負ったブラジル大会。5月の国内合宿中に長友佑都は「あのときの傷は、今も癒えていない」と打ち明けたほどだ。

 W杯ブラジル大会のあと、日本代表はハビエル・アギーレ体制を経てヴァイッド・ハリルホジッチ前監督のもと、「デュエル」や「縦に速い攻撃」を重視する真逆の道を歩んだが、その方向性を否定するかのように今年4月に監督を解任。西野朗新体制が発足した。

 その就任会見で西野監督は「やはり日本化した日本のフットボールというものがある。その中には、技術力を最大限に生かしたり、戦い方においても規律や、結束して化学反応を起こした上で戦っていく強さがある。そういうものをベースにした上で、構築していく必要があると思います」と語ったため、ここへ来てのザックジャパンへの回帰は当然の成り行きかもしれない。

 4年前に実現できなかったことへの再トライ、いや、日本の強みを前面に押し出した4年前のスタイルをベースに、守備力や臨機応変さを加えるイメージか。

 選手たちも同じ過ちを犯すつもりはない。

「ブラジルのときは理想ばかりを追い求めてしまって、結局、W杯の舞台で結果が出なかった。理想ばかりでは勝てないので、自分たちが下手だということを、自分たちは強くないということを、まずはしっかりと認めたうえで、自分たちにできるサッカーを1人1人が100パーセント出し切る。ただそれだけかなと」

 前日の練習後、長友は自身の考えをそう明かした。本田も、自陣に守備ブロックを築いてカウンターを狙った8年前の南アフリカ大会を引き合いに出してこう語る。

「今言った2つのプランA、Bが機能しなかった場合も想定しなきゃいけない。そのワーストケースが南アフリカでの守備のやり方なんで。全部ダメになっても、あのやり方はできると思っています。全員守備で行くと。攻撃の議論はナシにしようと。それは最終パターンとしてあると思っている。でも、その議論にいく前に今、まだトライをしているし、いろいろなパターンで相手の最終ラインを破る議論をしているんで」

 さらに、力強くこんなことも語っている。

「まだまだなんですけど、新しい一歩は踏み出せているなって感じています」

 果たして、スイス戦では本田が語った守備で試したい2つのこと――プランAとプランBの成果は得られるだろうか。

 3−4−2−1をテストするだけに終わった5月30日のガーナ戦とは打って変わって、6月8日のスイスとの親善試合では西野ジャパンのW杯における戦い方の一端が明らかになるはずだ。

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著者プロフィール

東京都生まれ。明治大学を卒業後、編集プロダクションを経て、日本スポーツ企画出版社に入社し、「週刊サッカーダイジェスト」編集部に配属。2012年からフリーランスに転身し、国内外のサッカーシーンを取材する。著書に『黄金の1年 一流Jリーガー19人が明かす分岐点』(ソル・メディア)、『残心 Jリーガー中村憲剛の挑戦と挫折の1700日』(講談社)、構成として岡崎慎司『未到 奇跡の一年』(KKベストセラーズ)などがある。

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