モズアスコット常識外れの連闘GI勝利 手腕結実の矢作師「いずれ世界で戦う馬」

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勝ちタイム1分31秒3は安田記念タイレコード

モズアスコット(手前)が安田記念を勝利、新マイル王に! 【写真:中原義史】

 春のマイル王決定戦、第68回GI安田記念は3日、東京競馬場1600メートル芝で行われ、クリストフ・ルメール騎乗の9番人気モズアスコット(牡4=栗東・矢作厩舎、父フランケル)が優勝。後方4番手のイン追走から、直線は馬群の中を鋭く突き抜けGI初挑戦でビッグタイトルを手に入れた。良馬場の勝ちタイム1分31秒3は、2012年ストロングリターンに並ぶタイレコード。

 モズアスコットは今回の勝利でJRA通算11戦5勝、重賞は初勝利。騎乗したルメール、同馬を管理する矢作芳人調教師ともに安田記念初勝利となった。

レコードタイの走破タイムでの勝利だった 【写真:中原義史】

 なお、クビ差の2着には戸崎圭太騎乗の5番人気アエロリット(牝4=美浦・菊沢厩舎)、さらに3/4馬身差の3着にはミルコ・デムーロ騎乗の1番人気スワーヴリチャードが入った。

連闘でのGI勝利は20年ぶり史上3頭目

ルメールも厩舎スタッフの手腕を絶賛! 連闘でのGI勝利は20年ぶり史上3頭目のことだった 【写真:中原義史】

 春の東京5連続GI開催を締めくくるにふさわしいゴール前の熱戦。勝ったルメール&モズアスコットは鮮やかなまでの差し切り勝ちで、新マイル王の座を射止めた。

「今日に限って言えば、何より矢作先生のトレーナーとしての仕事が見事でした。1週間前にレースを使ってGIを勝つなんてめったにないこと。矢作先生のスペシャリストとしての成果がここで証明されましたね」

 そう、ルメールが相棒の頑張りと自分の騎乗を差し置いてでも強調したのが、矢作調教師が下した連闘(2週連続でレースを使うこと)の決断と、わずか中6日のレース間隔で馬をここまで仕上げたその手腕だった。かつては、伝説にまでなっているオグリキャップのマイルチャンピオンシップ→ジャパンカップのGI連闘(1989年)もあったが、現代の競馬においては、連闘でGIに挑戦すること自体がまずないこと。かつGIを勝つとなると、1989年安田記念を勝ったバンブーメモリー、1998年阪神3歳牝馬S(当時)を制したスティンガー以来、20年ぶり史上3頭目の快挙だ(グレード制を導入した1984年以降)。

「連闘したからこそ安田記念を勝てた」

「連闘しからこそ安田記念を勝てたと思っている」と矢作調教師(右) 【写真:中原義史】

 いまや“常識外れ”“常識破り”ともなっている連闘でのGI挑戦はなぜ成功したのか? レース後の共同会見で矢作調教師はこう語った。

「先週の追い切りが終わった時点で、通常ならその週末の日曜、その次の水曜と追い切って安田記念に使うのですが、それだけだと状態を上げきれないと思いました。ですので、連闘したからこそ安田記念を勝てたんじゃないかなと思っています。それに、今回の勝利でウチの厩舎スタッフの優秀さを伝えることができて嬉しいですね」

 短い間隔でレースを使うことに関しては日本一上手い調教師だと思っている、とも笑顔ながらに語ったトレーナー。自身が持つ連闘のノウハウとして「しっかり疲れを取ること」、そして「馬のメンタル」を挙げたが、「今週の火曜、水曜朝の状態を見て、これなら大丈夫」と判断。またモズアスコットは、気性に難しいところもあるフランケル産駒ながらON、OFFのメリハリがしっかりしている馬だそうで、「すごく扱いやすい。この馬だから連闘しやすかった」とも要因を挙げている。

 加えて、運もあった。5月20日に発表された安田記念の最終登録段階で、モズアスコットは獲得賞金による出走順位は19番目。フルゲート16頭から漏れており、安田記念に出走するには賞金を加算して順位を上げるしかない。そのこともあって矢作調教師は連闘策に踏み切ったわけだが、必勝を期して臨んだ5月27日のオープン特別・安土城ステークスでまさかの2着。賞金を上積みできず、万事休すかと思われた。しかし、回避馬が出たことにより滑り込みで出走がかなった。

「水曜朝の時点で出走できることが分かって、素直にラッキーだなと思いましたね。これは流れがウチの馬に来ているなと捉えていました」

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