モズアスコット常識外れの連闘GI勝利 手腕結実の矢作師「いずれ世界で戦う馬」

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ルメールの冷静な騎乗、モズアスコットは満点の豪脚

馬群を鮮やかに突き抜けたルメールの騎乗、そしてもちろんモズアスコットの豪脚も光るレースだった 【写真:中原義史】

 そして、決戦の日曜日。ここからはジョッキーとサラブレッドが仕事を全うする番だ。矢作調教師から「頑張ってね」とひと言、声をかけられ手綱を託されたルメール。指揮官から特別なオーダーはなかったとのことだが、ジョッキー自身も特にプランを固めてレースに臨んではいなかったという。

「まずは馬をリラックスさせて、脚をタメていこうと思っていました。これという馬をマークしていこうと思っていたわけでもないですし、内・外のどちらに行くかも決めていたわけではなかったんです」

 モズアスコットとの折り合いを重視し、自然体でレースの流れに身を任せたルメール。好スタートを決めたものの、ややゴチャついたこともあって後ろから数えて4〜5番手の内に押し込められたが、「結果的にあの位置になっただけ」と平然と振り返った。

「コーナーでインに寄せられてあのポジションになりましたが、無理に軌道修正してバランスを崩したくなかったんです。チャンスを待つ形で、隙間が開くのを待っていました。もちろん、スムーズに越したことはないですが、ジョッキーはみんな良い位置を取るのに必死ですし、これが競馬。想定内です。大事なのはパニックにならずに、落ち着いてチャンスを待つこと。馬を急かさずに、流れに乗る形でスペースが開くのを待って、開いたところでステッキを振るいました」

 最後の直線、ちょうど目の前にいた1番人気スワーヴリチャードが右へヨレたところを見逃さず、言葉通りその間隙をズバッと突いて直伸。ルメールのステッキに応えてグングン加速したモズアスコットは、メンバー最速タイの上がり3ハロン33秒3、満点の豪脚だった。

マイル界をけん引する存在へ、まずは国内制圧だ

いずれは世界へ――そのためにもまずは国内マイルGIを制圧だ 【写真:中原義史】

 昨年6月のデビュー戦から1年と経たないうちに、GIウィナーへと駆け上がったモズアスコット。これまで重賞未勝利で、GI初挑戦・初勝利となったがこれはフロックではなく、矢作調教師は「阪急杯もマイラーズカップも敗因が分かっていて、力負けではないと思っていましたし、この馬の力はこんなものではないと思っていました」と強調。また、昨年秋11月のGIマイルチャンピオンシップは当時3歳のペルシアンナイトが古馬を一蹴し、約半年後のこの安田記念もモズアスコット以下4歳世代が上位6着までを独占した。マイル路線においては確実に世代交代が果たされており、そのトップを走る存在――すなわち日本のマイル戦線をけん引するチャンピオンホースとしての期待が、これからのモズアスコットには掛けられることになる。望むところ、とばかりにトレーナーはさらに口調を強めた。

「もちろん、そういった存在にならなければいけない馬だと思っていますし、そう信じています。この馬は、オーナーに無理を言って3歳6月までデビューを遅らせたように、体質的にちょっと弱いところがあるので、まずは無事に行くのが第一。でも、それだけに今後の上昇度は凄いと思いますし、フランケルの産駒ですから、もっと大きいところを取らせて世界的な種牡馬にしたいと思っています」

 この言葉が示すように、そして馬名に“アスコット”が入っているように、陣営の将来構想にはすでに“世界の舞台”が組み込まれているのだ。安田記念の勝ち馬には米ブリーダーズカップマイルの優先出走権が与えられることから、海外挑戦を問われた矢作調教師は、こう続けた。

「検疫や輸送など色々と課題があるので今は慎重に考えたいですが、いずれは世界で戦う馬だと思っています。今年の秋は国内の可能性が高いと思いますが、時期を見て判断したいですね」

 モーリスがターフを去った後、混沌としていたマイル界に現れた新星。世界のモズアスコットとなるために、まずは秋のマイルCSで国内完全制圧を狙う。

(取材・文:森永淳洋/スポーツナビ)

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