西野監督「対応力を選手たちに求めたい」 ロシアW杯登録メンバー23名 発表会見

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攻撃ではチャンスを増やすことが必要

決定力の高い選手として西野監督は武藤を挙げた 【写真:長田洋平/アフロスポーツ】

――日本代表は得点力不足が課題だと思う。どうやって決め切れるよう変化させていくのか。また、チャンスをたくさん作ることを選択するのか、それとも決め切ることのできる選手を選ぶのか?

西野 昨日のゲームは3バックで臨みました。選手たちには3バックという言葉は使わず、いろいろな状況の中で3や4だけではなく、5バックになることもあると(伝えている)。その中で中盤で主導権を握って相手のアタッキングサードを攻略していく。チャンスをセンターもサイドからのクロスでも作っていこうと。中盤での攻防をまず意識させて、相手のゴールにすべて直結する展開に持っていく必要はない。ある時間帯はボールを動かして相手の陣形を崩すとか、スタミナを奪うとか。そういう中で、アタッキングサードに進入するチャンスを増やしていく。昨日の試合でもそういう状況は作れていたと思います。

 常に決定力不足をネガティブに捉えるのではなく、チャンスを増やしていくことも考えたいと思います。武藤のようにブンデスの中でも総シュート数は多くないけれど、得点率が高い選手もいます。数字(シュート数)では少ないですけれど、確率では高い選手、チャンスが少なくてもゴールができる。そういうスタイルの選手も得点を生む中では重要だなと。チャンスも増やしたいですけれど、チャンスは想定よりは少なくなるので、そういう中では彼のような嗅覚を持った選手も必要になると思います。ただ、チャンスを増やすことが全体としては攻撃にとって必要なことだと思っています。

――先ほどの「絵をたくさん描きたい」とは対戦相手によって、いろいろな戦術で対応できるようにしたいということか。一方でたくさんの戦術を落とし込むために残された時間は少ないが、どう落とし込んでいこうと考えているのか?

西野 自分の中で(イメージが)膨らんでいるのは間違いないです。どういうシステム、キャスティングで戦うか。ポジティブなことはたくさん思い描けると思います。それを落とし込むことが難しいことなので、それを選手たちにも同じように描いてほしいです。

 例えばリスタートの形は日本のストロングポイントでした。いろいろなパターンを想定して、190センチの相手5人にどう対応するのか。それだけでもいろいろなオプションを持たせたいと思いますし、対策が自分の中で描けますし、変化させて対応できると思っています。

 パターンを全員が描くことができれば、リスタートからでも得点が生まれる可能性がある。攻撃でも同じです。いろいろなパターンを選手たちに思い出させてゲームの瞬間に思い出させるような準備をしなければいけない。日本人選手の良さはそういった対応が早いことにあると思います。グループで仕事をする中での理解度、共有したプレーというのは日本人選手は順応できるので。そういう良さのある選手をセレクトしました。1つのパターンに固執するよりは、オプションを選手たちにたくさん持たせて、短くても落とし込んでいかなければいけないと思います。

――代表23名すべてに期待していると思う。その中で、勝つために最も期待を寄せるキーマンと理由を教えてほしい。

西野 1人とは言い切れないです。選んだ選手全員がそういう選手であってもらいたいです。

――日本中のサポーターが背中を押す上で、(目標として)具体的な数字を挙げてほしい。

西野 キーマンが誰とかではなく、選手が持つ本当のトップパフォーマンスをまずは大舞台で出してほしいと思います。チームとしての原理原則、チームとしてのディシプリン(規律)はありますが、その中で選手たちが持っているもの、その選手にしか出せないストロングなプレーをまず出して戦ってほしいと思います。

 各ゲームでポイント(勝ち点)を取りたいです。ギリギリのゲームがあるかもしれないし、圧倒できるゲームもあるかもしれない。そういう中でも、グループステージ突破を少なくとも考えていますし、そういう中でいかにポイントを取っていくか。これは選手たちに常に求めて戦いたいです。

センターからの崩しをさらに求めたい

香川のコンディションについて「上がってきている」と評価 【写真:長田洋平/アフロスポーツ】

――昨日の試合はサイドからのチャンスメークが目立っていた。西野監督が目指すサッカーにおけるサイド攻撃の位置付けとサイドの選手に求めることは?

西野 昨日のシステムであれば長友、原口、(酒井)高徳とポジションをワイドに取っていた。その中でセンターでは大島がボールをよく動かしていました。センターでボールを動かすことができれば間違いなくサイドからの攻撃が増えます。昨日も香川が入った、柴崎が入ったという中で、センターでしっかりとボールを保持できればサイドからの攻撃も当然増えてくる。ただそれだけでは単調になってしまうところがある。

 終盤にはセンターからの崩しが増えました。それをさらに求めたいと思います。選手たちにイメージはあるのですが、メンバーが変わったり、システムが変わったりする中でコンビネーションがまだうまくいきませんでしたが、そういったオプションを増やさないといけない。日本の攻撃スタイルからすると、グラウンダーでスピーディーなことが起こらないと、なかなか難しいと感じているのでそこは詰めていきたいですね。感覚的に共有できる部分がたくさんあると思うので。

――4月の欧州視察の時点で、香川はかなりW杯に向けて厳しい状態と言っていたが現状はどうか。そして3大会連続出場となる本田に期待することを教えてほしい。

西野 香川とは5月に入って欧州視察で直接会いました。その日が彼にとってコンディションが良くない日だったようです。前後は彼なりにかなり回復して状態が良かったと。私が会った日の状況を見ると、「これは間に合うのかな」という気が確かにしました。その後、回復状況も良く、(出場時間に)制限はありましたけれど、(リーグ最終節で)ゲームに出られる状況まで回復できた。(ドルトムントの)監督の判断がどうだったかは分かりませんが、状態は間違いなく、その時点で上がっていることが確認できたので(18日に発表した候補)メンバーに入ってもらいました。

 10日間のキャンプの中でも上がってきましたし、昨日のゲームの中でも最近3カ月の中では一番長い時間(45分間)のパフォーマンスでした。彼らしいプレーもいくつか出ていましたし、良くなっていると思います。中盤オフェンシブの中で彼の独特な感覚、センスはこれから高まっていくと考えています。

 本田についても同じです。非常にコンディションは上がってきているし、影響力がある。チームにプラスをもたらしてくれているので、経験値だけではないストロングな部分をこのキャンプでも強く感じました。

――本田はかつてW杯で優勝すると言っていた。西野監督もかつて「マイアミの奇跡」を起こしている。今回のロシアではどんな奇跡を見せてくれるか。

西野 その奇跡をこれから膨らませていきたいと思います。今朝23人を選んで、これからどういうサッカーができるのか、選手たちがどう活躍してくれるか。それが楽しみなだけで、「奇跡」と言われても、正直お答えできることはありません。初戦のコロンビア戦に日本代表チームが強く入っていける、そしてコロンビアを倒すということ。小さな奇跡かもしれませんが、そういう思いを持ちたい。選手たちの活躍を願う、期待する。そういうことを求めていきたいと今は思っています。

会見後、原口元気のコメント

W杯に向け、原口は「ただ出るだけでは意味がない」と意気込みを語った 【スポーツナビ】

「ただ出るだけでは意味がない」

(名前を呼ばれたときに高揚感は)一瞬ありましたね。何度か悔しい思いをしてきたので、それを思うとグッとくるところもありましたけれど、本当に一瞬でした。そのあとには「ただ出るだけでは意味がない」と。「日本が勝つためにやらないと」と思いました。

(4年前はヘルタ・ベルリンに移籍するタイミングだった。当時はどんな夢を思い描いていたか)4年後に自分が日本代表として出場するだけではなくて、出場して勝つということを、4年前のW杯(ブラジル大会)を見ていて思いました。日本代表に選ばれるのは第1段階。ここから勝つために自分自身が(チームを)助けていかなければならないと思いました。

(昨日のガーナ戦で負けて暗い雰囲気があったが)選手の周りに暗い雰囲気はありません。すごくポジティブだし。チームの中に暗い雰囲気は、昨日もそうだしキャンプを通じてもなかったので。

(対戦相手の3カ国について)これからですね。このキャンプは3バックを試す段階だったけれど、「ここからはコロンビアに(向けて対策して)いくよ」と監督も言っていたので、ここから初戦のコロンビアに向けて準備が始まるのかなと思います。

(これまで代表でもクラブでもいろいろなことがあったが)長かったですね。その分、いろいろなことを経験させてもらって、確実に4年前と比べてすごく大きく成長できたと思いますし、それを表現したいですね。フィジカル的にも技術的にも戦術的にも、すべてにおいて成長したと思っています。

(宇佐美とは同じクラブだがW杯の話をすることは)もちろん。一緒に出たい、そこを目指してやっていこうという話はしていました。お互いを助け合ってきたし、こういう結果になったのは、お互いにとっても良かったかなと思います。

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