バレー界注目の“若鷲”JTの林琴奈 成長の源は謙虚さと勤勉さ、負けず嫌い
「気持ち」を出した最後の春高
チームメートの合言葉は「林のために」。最後の春高で優勝し、林自身も最優秀選手に輝いた 【月刊バレーボール】
当の林自身は、「チームメートを怒ることができなかった分、とにかく声をかけて、励ますタイプのキャプテンになっていました」と照れくさそう。そんな林の性格もまた、後輩たちの闘志をくすぐった。
「琴奈さんを勝たせてあげたい」「琴奈さんのためにも頑張ろう」。そんな言葉が、シーズン最後の大会となる全日本バレーボール高等学校選手権大会(春高)を控え、部員たちから聞かれた。
そして、「ガッツが表に出ない」林も、自身最後の大舞台で、積極的にサーブレシーブに入り、そのままスパイクを打ちにいくという果敢なプレーを見せた。「あれほど集中して、それも大会を通じて、できるとは思っていませんでした」と池条監督がたたえるほどの林の躍動もあり、チームは悲願の日本一をつかんだのであった。
中高6年間を過ごし、「金蘭会のよさ」を林は「学年関係なく、仲がいいところ」と挙げた。チームメートとの絆が、コート上で力となって発揮されるのだと。
それらを最高の形で実感して幕を閉じた高校生活からまもなく、林は環境を変えても、チームメートの存在の大きさを味わうことになる。新人である自分を迎えてくれた、JTの先輩たちの存在だ。
「最初は緊張して話せなかったんですけれど、慣れてきて、自分がおしゃべりになるほど(笑)。皆さんが本当にやさしいので」
新天地でも変わらないキャラクター
初先発を果たした試合ではサーブレシーブが集中する場面も。試合後に「どんなボールもキチンと上げられるようにできたら」と語った 【月刊バレーボール】
「関西で頑張りたい思いがありました。練習量も多くて、トレーニングもしっかりとされているチーム。やりがいがあるなと」
卒業前にJTの印象をそう話していた林は、いきなりの大舞台でデビューを飾った。2017−18シーズンのV・プレミアリーグ、ファイナルの第1戦(3月10日)で途中出場を果たすと、翌週の第2戦では先発メンバーに抜てきされた。シーズン最後の黒鷲旗ではレギュラーメンバーとして堂々の活躍を見せた。
「V・ファイナルでは相手の高さに対してスパイクが決まりませんでした。今回は、その高いブロックに対する打ち方を考えて、プレーすることができました」(林)
合流してまもない高卒ルーキーがはつらつとプレーする姿に、吉原知子監督も目を細めた。
「(林には)まだまだ期待しています。ただし身長がない分、何が必要かを林自身でつかんでほしい。もちろん、チームとしてもできる限りサポートできたらと思います」
高校日本一、黒鷲旗での優勝と個人賞選出。この半年間で林は名実ともに、今後の活躍が大いに期待されるバレーボーラーの1人となった。そう水を向けても、当の本人は遠慮しながらほほえむだろうが、胸の内では思いを強くしているに違いない。
いつだってそうだ。学生時代にテストでいい成績が出ると、「(点数を)下げたくない」と勉強に励む。JT入団後に臨んだ4月のファン感謝祭では、「やるからには中途半端にできない」と、ハイクオリティーな芸を披露する、そんな一面もある。
謙虚さと勤勉さ、その裏にある確かな“負けず嫌い”。それらは、林琴奈を成長させてきた、そして、これからも成長させるエッセンスだ。
(坂口功将/月刊バレーボール)