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金蘭会の強さを支えた抜群の「対応力」
タレント軍団が悲願の春高バレー制覇

インハイは初戦敗退、覚悟を持って臨んだ春高

春高の女子は金蘭会が3年ぶりの優勝を果たした
春高の女子は金蘭会が3年ぶりの優勝を果たした【坂本清】

 最後の1点で、互いの武器がぶつかり合う。


 3年ぶりの優勝を狙う金蘭会(大阪)はブロック、そして6年ぶりの優勝を目指す東九州龍谷(大分)はライトからの速いトスを打ち切るスパイク。東九州龍谷の2年生、合屋咲希が放ったスパイクを、1年生の宮部愛芽世がブロックで仕留め、25−23。「これが自分たちの生命線」と言い切るプレーの応酬を制し、ストレートで金蘭会が勝利。第70回春高バレー(全日本バレーボール高等学校選手権大会)優勝を果たした。


 前夜から何度も映像を見て、選手同士で話し合って対策を練った成果が出た、とキャプテンの林琴奈が涙を拭い、笑顔で言った。


「コートの中に3年生は自分しかいなかったけれど、いつも支えてくれた。コートに入れなかったみんなの分を背負って戦ってきたので、最後の春高で日本一になることができて本当にうれしいです」

優勝を果たし胴上げされるキャプテンの林。金蘭会にとって、春高は並々ならぬ覚悟を持って臨んだ大会だった
優勝を果たし胴上げされるキャプテンの林。金蘭会にとって、春高は並々ならぬ覚悟を持って臨んだ大会だった【坂本清】

 リベロを含め、コートに入った7名中5名が2年生、1年生の宮部も加えた6名が昨夏のU−18世界選手権代表。中学時代から全国制覇を経験しており、池条義則監督も「3冠(インターハイ=高校総体、国体、春高)を取った2015年のチームよりも攻撃力は今年のチームが上」と言い切るように、キャリア豊富なタレント軍団は優勝候補の大本命に留まらず、再び3冠を制覇するのではないかと目されていた。


 ところが、昨夏のインターハイは誠英(山口)を相手に初戦敗退。完璧に対策してきた相手の力もさることながら、林が「試合の入り方が全くダメ。自分たちの準備が何もできないまま試合が始まって、何もできないまま終わってしまった」と敗因を述べたように、悔いしか残らない敗戦だった。


 その後、国体は制したが単独チームではなく、四天王寺(大阪)との選抜チームで手にしたタイトルであったことから、何が何でも勝ちたいと、学年に関係なく今季のチームにとって最後の大会である春高は、並々ならぬ覚悟を持って臨んだ大会だった。

「会心の勝利」だった下北沢成徳との準決勝

下北沢成徳のエース石川(1)には3人がブロックで対応。準決勝はまさに「会心の勝利」だった
下北沢成徳のエース石川(1)には3人がブロックで対応。準決勝はまさに「会心の勝利」だった【坂本清】

 初戦から1セットも落とすことなく圧倒的な力を見せた金蘭会が唯一、セットを失ったのが準決勝、下北沢成徳(東京)との一戦だ。


 昨年の優勝メンバーで2年生エースの石川真佑を中心に攻撃を展開する下北沢成徳に対し、金蘭会は宮部を中心に攻め立てる。インターハイや国体ではレギュラーではなかった宮部だが、春高では非凡な才能が覚醒。跳躍力を生かしたスパイクでブロックの上からクロス、ストレートと打ち分ける活躍ぶりに池条監督も「姉(藍梨)より背は低いけれど、大舞台に屈しない。1年生の時のお姉ちゃんは先輩に乗せてもらって活躍できたけれど、妹は自分のスパイクでチームを乗せてくれた」と感服。ラリーが続いても、宮部を中心に攻め、要所の決定打で上回った金蘭会が第1セットを25−22で先取した。


 しかし第2セットに入ると、石川の攻撃力が爆発。2枚ブロックをものともせず、レフトからインナーに打ったかと思えばストレート、次はクロスのコーナーギリギリに打ち分け ブロックに当てて飛ばす。圧巻の攻撃力とテクニックを見せ、今度は25−21で下北沢成徳が取り返す。


 ここで池条監督が動いた。

「最初は(レシーブで)拾え、拾ってつなげようと言っていたんです。でも石川さんのスパイクは威力が違う。これはレシーブだけじゃ太刀打ちできないから、ブロックにしっかりつけと。そこから(ブロックが)3枚いくようになりました」


 前半は石川に対し、ライト、ミドルの選手だけがブロックに跳んでいたが、そこにレフトの選手も加わり、1人の攻撃に対して3人がブロックに跳んだ。単純に人数が増えてコースを塞ぐというだけでなく、手薄になるライト側の攻撃やミドルの攻撃に対してはレシーブでフォローした。ブロックに当てて飛ばそうとする石川に対して、ブロックの手を直前に引いてアウトにしたり、当てたボールが飛んだ先にレシーバーを入れるなど、打った策に対して次、次と対抗してくる相手を、また一歩先の策で仕留める。


 さらにブロックへの意識は攻撃にもつながりを見せ、試合序盤は「準々決勝までの感覚で打っていたら、成徳のブロックにまともに捕まってしまった」と話すエースの西川有喜も、3セット目からは攻撃パターンを変えた。


「今までならば相手の指先に当たってブロックアウトが取れたスパイクも、成徳はブロックが高くてそろっているから、しっかりワンタッチを取ってくる。もう1つ上に打たなきゃダメだと思って(ブロックを)抜くのではなく、指先に当てることをまず意識しました」


 西川の調子が上がっても西川だけが打つのではなく、好調の宮部やミドルの曽我啓菜が決定力の高さを見せ、勝負どころは攻守の要でもある林が決める。相手の強さをさらに上回る。まさに会心の勝利だった。

田中夕子
神奈川県生まれ。神奈川新聞運動部でのアルバイトを経て、『月刊トレーニングジャーナル』編集部勤務。2004年にフリーとなり、バレーボール、水泳、フェンシング、レスリングなど五輪競技を取材。共著に『海と、がれきと、ボールと、絆』(講談社)。『SAORI』(日本文化出版)、『夢を泳ぐ』(徳間書店)、『絆があれば何度でもやり直せる』(カンゼン)など、女子アスリートの著書や、前橋育英高校野球部・荒井直樹監督の『当たり前の積み重ねが本物になる』では構成を担当

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