小塚崇彦が「選手の体を第一に」開発 フィギュア界の常識を覆すブレード
ようやくスタートラインに立ったところ
「フィギュアスケートは研究面でも遅れている」と小塚さんは言う。ブレード開発は今後への分水嶺となるかもしれない 【写真提供:TST Japan】
小塚さんは、「研究面や道具でフィギュアスケートは遅れている」と以前から口にしていた。たとえばスピードスケートは1990年代後半にスラップスケート(編注:ブレードと靴のかかとが離れるスケート靴)が誕生し、98年の長野五輪ではタイムが飛躍的に上がった。そうした靴が生まれたのも、日本に限らず、世界でこの競技に対しての研究がなされているからだ。
一方で、フィギュアスケートはそうした研究があまりされておらず、文章化もされていない。道具についても「軽いといいねくらいしかまだ言われていない」と、小塚さんは嘆く。この数年で男子は4回転時代が到来し、女子もより難易度の高い技術が求められてきそうな中、選手が身につける道具が従来のままでは、競技の発展は望めないし、何より選手たちの体に危険が伴う。そういう意味で、新たなブレードの登場はフィギュアスケート界の分水嶺(れい)となるかもしれない。
金属を削る加工機の前で。「より進化したブレードを開発していきたい」と語る小塚さんの挑戦はまだ始まったばかりだ 【写真提供:TST Japan】
「(競技を始めて)23年間、ブレードと付き合ってきたのに正直何も分かっていなかった。開発するにあたり、本当にゼロからのスタートでした。まずはブレードを知るところから始めて、ノウハウをとにかく詰め込み、それをパズルのように組み合わせていきました。今回、こうして製品として発表するまでに至りましたが、これでようやくスタートラインに立ったところだと思っています」
今後も「より進化したブレードを開発していきたい」と話す小塚さん。そしていつかは「自分が提供したブレードを使った選手が、世界の舞台で表彰台に立ってもらえたらうれしい」と、未来を見据える。小塚さんの挑戦は、自身も言うようにまだ始まったばかりだ。
(取材・文:大橋護良/スポーツナビ)