ハリルホジッチ前監督・独占インタビュー  「JFAは真実を公表してほしい」

会見後に独占インタビューを実施。ハリルホジッチ氏が語ったこととは? 【写真:Natsuki Sakai/アフロ】

 ワールドカップ(W杯)ロシア大会を約2カ月後に控えた4月9日、JFA(日本サッカー協会)はヴァイッド・ハリルホジッチ監督との契約を同7日付で解除したことを発表した。田嶋幸三会長は決断に至った理由を「選手とのコミュニケーションや信頼関係が多少薄れてきた」「今までのさまざまなことを総合的に評価して、この結論に達した」とし、後任には技術委員長だった西野朗氏が就任することを合わせて発表した。

 これを受けてハリルホジッチ氏は27日、都内で自らの解任に関する記者会見を実施。JFAから「事前に何も知らされていなかった」ことや、解任理由であるコミュニケーションについても「問題はなかった」と自身の見解を示した。

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 会見翌日、セルビア人ジャーナリストのブラディミール・ノバク氏が電話での独占インタビューを敢行。自身の解任に関する思いや、日本サッカーについて、ファン・サポーターへのメッセージにいたるまで、あらためて話を聞いた。(取材日:2018年4月28日)

実に不誠実で、プロフェッショナルではない

21日の来日後、記者会見を開いたハリルホジッチ氏。「実に不誠実で、プロフェッショナルではない」と嘆いた 【宇都宮徹壱】

――4月21日に来日してから何をしていた?

 私の身に何が起きたのかを知りたかった。私はまだ真の解答を得られずにいる。JFAの田嶋会長がどのような理由で私を解任したのか、誰も真実を知らないのだ。唯一の解任理由は、選手とのコミュニケーションの問題だという。当然、それは間違っているし、真の理由のはずがない。

 最近、私の元に15人ほどの日本代表選手からメッセージが届いた。すべての選手が驚きや怒りのような感情を書きつづっていた。実際に何が起きたのか。これは大きな謎だ。昨日の記者会見には400人近く(発表は332人)の報道関係者が出席していたが、そこで私は「いったい何が起きているのか」と問い掛けた。

 私の身に降りかかった出来事は実に不誠実で、プロフェッショナルではない。選手たちとのコミュニケーションの問題は一切なかった。むしろ、現在まで率いてきた歴代のチームの中では、選手たちと最も容易にコミュニケーションを取っていた。

――霜田正浩氏(元技術委員長・現レノファ山口監督)がJFAを去り、その後、西野朗氏が後任に就いたことについてはどう思ったか?

 2つの派閥が争い、その結果、一方が勝利したということだ。

――その時、JFAから新体制についての説明はあったのか?

 特別な説明はなかったし、説明の必要性は感じていない。会長は新しい技術委員長を選任する権利があるからだ。西野氏との直接的なやりとりは多くなかった。彼は私たちの練習を見守り、自身のための記録帳を用意していた。そしてコーチ陣との会議に出席していた。代表選手を選ぶときは、私が最終的な権限を持っていた。

 フランスでは、技術委員長と監督が何か特別なやりとりをすることはない。技術委員長はその国のサッカーの施策を練り、若手世代の強化に努めることが主な仕事だ。監督に直接的な影響を与えることはない。

――霜田氏が去った後、何か変わったか?

 私の仕事に関しては何も変化はなかった。とはいえ、私は霜田氏とはより多くの接触があったことは確かだ。霜田氏は機会があるごとに、日本代表での私の仕事に感銘を受けている旨を伝えてくれた。西野氏とは「こんにちは」とあいさつを交わすぐらいだった。

W杯前に明確なプランを持っていた

W杯に向けては「明確なプランを持っていた」とコメント。強化試合についても「結果は必ずしも最優先事項ではない」と話した 【写真:松尾/アフロスポーツ】

――W杯出場を決めた後、昨年11月、12月、今年3月に強化試合が行われた。試合では本大会のためのプランを披露せずにいたと思うが、具体的なプランを選手たちや協会スタッフ、技術委員会、会長らには伝えていたのか?

 話していない。誰からも問われることはなかったし、誰からも求められなかった。強化試合では多くの選手を試した。その中にはけがのために、それまでプレーを見ることができなかった選手もいた。サッカーにおいて、試合結果はいつも重要だ。しかし、強化試合の場合、結果は必ずしも最優先事項ではない。

 私は強化試合を通して多くのポジティブな要素を発見した。例えば、11月のブラジル戦では0−3で劣勢に立たされた中で2−3(編注:実際は1−3)という結果だった。3−3の引き分けに持ち込むこともできた試合だった。1つのゴールが認められない不運もあった。選手たちは試合開始直後から、相手が強豪国という理由で心理面が欠落していたが、後半に入り、いくつかの修正とアドバイスを送った。すると、チームはより自由に、組織的になり、選手たちはより勇敢に、大胆にプレーできるようになった。

 ベルギー戦でも良いプレーを見せてくれた。失点は相手選手のドリブルで日本の5、6選手が揺さぶられた結果、ゴールを奪われるという個人技によるものだった。ただ、その後は試合を支配して得点のチャンスも何度か訪れた。3月は2つの強化試合があり、対戦相手の性質は異なっていた。その試合で若い選手を見たかった。私はW杯前に明確なプランを持っていたのだ。

 私はW杯前の期間を前向きな気持ちで過ごしていた。本大会に臨むための準備期間が今まで率いたチームよりも一番多く与えられていたし、(W杯準備・期間中の)約4週間をみんなと一緒に仕事ができる喜びを感じていた。しかし、残念ながらすべてがふいになってしまった。

――グループリーグの対戦国であるコロンビア、セネガル、ポーランドとはどのような試合戦術、ゲームプランがあったのか教えてほしい。

 すべて話すには3日間必要だ。私が準備、計画していたことの一部さえも、この場で話すことは困難だ。私はコロンビア代表の10試合を分析して、すべての情報を持っている。攻撃時、守備時では日本の選手がどのようにプレーすべきか詳細な部分まで分かっている。

 W杯ブラジル大会で私がアルジェリア代表を率いて、いかに用意周到に準備してきたかご存知のはずだ。私は戦術のスペシャリストだ。ブラジル大会では優勝国のドイツと対戦し、勝利目前まであと一歩のところに来ていた。ロシアW杯での日本の対戦国は、それぞれプレースタイルが異なる。私がグループリーグの3試合に向けて、どれだけ慎重に準備をしてきたかを分かってくれるはずだ。

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著者プロフィール

1961年2月13日ウィーン生まれ。セルビア国籍。81年からフリーのスポーツジャーナリスト(主にサッカー)として活動を始め、現在は主にヨーロッパの新聞や雑誌などで活躍中。『WORLD SOCCER』(イングランド)、『SID-Sport-Informations-Dienst』(ドイツ)、日本の『WORLD SOCCER DIGEST』など活躍の場は多岐にわたる

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