田中将大が示した“先輩”としての貫禄 大谷を特筆しない、それこそがリスペクト

杉浦大介

エンゼルス戦で6回2安打1失点、9奪三振の好投を見せた田中将大 【Photo by Jayne Kamin-Oncea/Getty Images】

“今が旬”の後輩との直接対決はなくとも、さまざまな意味で、“メジャーの先輩”としての貫禄は十分に見せつけたと言っていいのではないか。

 4月28日(現地時間、以下同)、アナハイムで行われたエンゼルス戦で、ヤンキースの田中将大は6回を投げて2安打1失点で9奪三振と好投。味方打線の爆発にも助けられ、11対1で勝って危なげなく今季4勝目(2敗)を挙げた。

 エンゼルスの、いや、MLB全体で最大のセンセーションになっている大谷翔平とのメジャーでの初対決として注目を集めた今戦。メディアは盛んに煽り立てたが、前日のゲームで大谷が足首を故障したことで、結局は“日本祭り”の花火が打ち上げられることはなかった。しかし、そんなゲームの中で、メジャーでもすでに5年目とベテランの域に達した田中の投球は冴(さ)え渡った。

「(真っ直ぐの精度が)特別上がったとは思わない。でも前回登板、今回と、ゲームで投げられるだけのものにはなってきたかなと思っています」

 田中本人の言葉は控えめだったが、6回2/3を同じく1失点に抑えた4月24日のツインズ戦に続き、速球系が勢いを取り戻していることは明白だった。

4シームの威力戻り、良い方向へ

 象徴的だったのは、通算3000安打まであと5本に迫ったエンゼルスの4番打者、アルバート・プホルスとの対戦である。38歳になったドミニカ共和国の英雄に対し、2回の第1打席、4回の第2打席は合わせて12球中7球が4シームという真っ向勝負で2打席連続三振。特に見逃し三振に斬って取った第2打席の速球は94.8マイル(約153キロ)を掲示し、キレ、コースともに申し分ない今日のベストピッチだった。

 最大の武器のはずのスプリッターは15球のみで、4月17日のマーリンズ戦(23球)、24日のツインズ戦(25球)と比べてかなり少なめ。それでも5回にザック・コザートに一発を許した以外、常に危なげない投球だったところに手応えは感じられる。

「今日は制球が良かった。スプリッター、変化球は常に彼にとっての決め球であり続けるが、速球を制球良く投げ、危険を避けることができれば、より打ち崩すのが難しい投手になる」

 アーロン・ブーン監督がそう述べた通り、変化球を駆使して適応できるのが田中の長所だが、真っすぐが良い日はより付け入る隙がなくなる。

 開幕直後は使用頻度が低かった4シームが復調したのは、細かなアジャストメントが実を結んできたのか。この日はプレートの右側から投げ込む微調整が功を奏したのか。過去2戦はより温暖な気候の中で投げているのが大きいのか。おそらく答えはそのすべてだが、4月半ばには不調の登板が続いたヤンキースの背番号19が良い方向に向かっているのは間違いはなさそうだ。

 直近の2戦はどちらも1失点に抑え、一時は6点台まで上がった防御率も4.37まで戻した。ローテーション通りなら、次は5月3日に敵地でアストロズと対戦する。強力打線を誇る昨季王者との昨季プレーオフ以来の再戦でも、速球に力が戻った今の田中なら十分に真っ向勝負できるはずだ。

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著者プロフィール

東京都生まれ。日本で大学卒業と同時に渡米し、ニューヨークでフリーライターに。現在はボクシング、MLB、NBA、NFLなどを題材に執筆活動中。『スラッガー』『ダンクシュート』『アメリカンフットボール・マガジン』『ボクシングマガジン』『日本経済新聞・電子版』など、雑誌やホームページに寄稿している。2014年10月20日に「日本人投手黄金時代 メジャーリーグにおける真の評価」(KKベストセラーズ)を上梓。Twitterは(http://twitter.com/daisukesugiura)

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