日本ハム・栗山英樹監督の『2番論』 従来の打順像の概念を変えられるか!?

週刊ベースボールONLINE

今回はかつて大胆な選手起用を行ってきた日本ハム・栗山監督が思い描く「理想の2番論」を探る 【写真=BBM】

 首位打者の近藤健介、新助っ人のアルシアをはじめ、開幕スタメンには長打力が自慢の横尾俊建を2番に据えた北海道日本ハム・栗山英樹監督。過去にも稲葉篤紀、大谷翔平を2番で起用する驚きの采配を見せたこともあり、ラインアップの中でも、特に重要視しているのが2番だ。従来の打順像の概念を変えたい──。栗山監督が思い描く「理想の2番論」に迫ってみたい。

得点力を高めるための2番

 ペナントの開幕から対戦がひと回りした4月26日時点で、日本ハムの2番打者には8人の選手が名を連ねた。開幕戦には3年目の長距離砲・横尾俊建を大抜てきした。栗山監督は「今シーズンは何でもやりますよ、ということ」と説明した。さらにプロ野球史上初の打率4割を目指す近藤、新助っ人のアルシアも2番で起用。「何でもやります」という言葉の裏には、チーム内の意識改革を必ず断行するという指揮官の強い決意がある。

 監督就任1年目の2012年の開幕戦の2番は稲葉だった。クリーンアップが定位置の強打者をあえてつなぎのイメージが強い打順に配した驚きの采配。昨年も4月6日の千葉ロッテ戦では大谷を2番で起用。試合後に次のようなコメントを残している。

「どうやったら点が取れるのかを考えていくと、やっぱり1番とか2番に(翔平のような)打てるバッターがいたほうがいいというのは野球の基本原則なので。これからも勝つためにいろいろと試していきます」

 状況に応じて起点やつなぐ役となり、さらに試合を決めることもできる2番。得点力をより高める形として栗山監督が思い描いている理想の2番や打線の形がここにある。昨年は東北楽天がペゲーロを2番に起用して躍進した。かつて日本ハムでも小笠原道大を2番に据えるビッグバン打線が猛威を振るった。ただ、日本球界において2番打者はバントや進塁打などの小技が確実にできる選手のイメージが強い。

「ウチの選手はみんな2番に入れると、どうしても従来の2番になってしまう」

 小技よりも豪快に打つことがスタイルの選手でも「2番」という響きにプレースタイルが縛られる傾向があることに苦慮してきた。

 栗山監督が就任1年目に稲葉を2番に起用したのも、その既成概念を壊したかったからだ。ただ、チームは毎年のようにメンバーが入れ替わり、シーズンごとに陣容は変わるもの。その中で「これまでの打順像をどうやったら消せるんだと、監督になってからずっとやってきているけど、やっぱり消えなくて……」。もちろん、つなぎの2番も否定はしない。しかし「単純にもっといい、もっと違う形の野球があるはずだ」といまも理想を追い求め続けている。

中田翔の1番も?理想の打順を模索

 5位からの逆襲を誓う今シーズンは小技を得意とするより、思い切りバットを振れて実績もある野手陣がメンバーにそろった。開幕前から栗山監督はこれまで以上に「打線の概念を変える」と繰り返してきた。クリーンアップは3番、4番、5番を指し、強打者をそろえることが普通ではあるが、あえて「4番の中田翔を1番に入れたほうが(打線が)回りやすいのかもしれない。いろいろなことを考えていかないと勝てない」と試行錯誤を繰り返し、理想のラインアップを模索している。

 4月17日からの埼玉西武2連戦(東京ドーム、メットライフドーム)では高次元の打撃を維持する近藤を2番に据えて、7得点、8得点と大量得点を奪った。現状で近藤がチーム内における最も計算できる最強打者であることは間違いない。安打を放つ能力に加え、ボールを見極めて四球を選ぶ能力にも長けている。高い出塁率でのチャンスメーク能力は、犠打よりもはるかに好機を広げられる大きな武器にもなれる。

 一方で近藤の野球脳が高いからこそのもどかしい懸念点もある。例えば近藤は走者がいれば進塁打になりやすい引っ張りの打球を狙うケースが多い。本来の打撃の良さはどんなコースにも逆らわないでヒットゾーンに飛ばせるところにあるが、誰よりも状況が良く見えるからこそ、前述した“従来の2番打者”になりやすい傾向がある。それだけに栗山監督も近藤の天才的な打撃を2番でも生かせる意識改革、打順に縛られない打撃に期待を寄せる。24日からは大田泰示が2番に入っており、今後もタイプにこだわらず誰もが2番に入る可能性は十分にある。

 指揮官が長年にわたって描き続ける打線の概念を壊す新たな2番打者像──。それを体現する選手は台頭するのか。これまで何度も想像を超える采配で私たちを驚かせてきた栗山監督だけに、その大胆な選手起用から今後も目が離せない。
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