【新日本プロレス】みのるが熊本でのLIJ壊滅を予告 IWGPジュニアタッグは鈴木軍が防衛

高木裕美

試合後、新日本マットを占拠した鈴木軍 【写真:SHUHEI YOKOTA】

 23日の新日本プロレス「Road to レスリングどんたく 2018」東京・後楽園ホール大会では、1562人を動員。IWGPジュニアタッグ選手権試合や、ゴールデンウィークのビッグマッチラッシュに向けた前哨戦などが行われた。

 メインイベントのIWGPジュニアタッグ選手権試合では、鈴木軍の金丸義信&エル・デスペラード組が、ロス・インゴベルナブレス・デ・ハポン(LIJ)のBUSHI&高橋ヒロム組を退け2度目の防衛に成功。試合後は鈴木軍がリング上を占拠し、鈴木軍大将の鈴木みのるが「おまえらが応援してるロス・インゴベルナブレスは熊本で終わるんだ」と、4.29グランメッセ熊本でのLIJ壊滅を予告した。

「漁夫の利」勝利の王者に怒り心頭のLIJ

 鈴木軍とLIJは、4.29熊本での全面対抗戦が決定。メインイベントのIWGPインターコンチネンタル王座戦(王者・鈴木みのるvs.挑戦者・内藤哲也)をはじめ、IWGPタッグ選手権試合や、金丸vs.ヒロム、デスペラードvs.BUSHIのシングル対決も行われる。

 金丸&デスペラード組とBUSHI&ヒロム組は、ROPPONGI 3KのSHO&YOHを加えた3WAYマッチ方式で、これまで2度にわたりベルトを賭けて対戦。3.6大田区総合体育館では、BUSHIがSHOに毒霧を噴きかけた直後に、金丸がBUSHIに酒を噴射。すかさずデスペラードがSHOをエル・エス・クレロで丸め込み、3カウントを奪取した。4.1両国国技館でも、ヒロムがSHOにTIME BOMBを炸裂させ、十中八九勝利を収めかけるも、金丸がレフェリーの足を引っ張ってカウントを阻止。直後にデスペラードがSHOをピンチェ・ロコで沈めるという、まさに「漁夫の利」で現王者組がベルトをかっさらっている。だが、さすがにこれにはLIJ側が怒りを爆発。2戦とも直接勝敗に関わっていないことから、今回、王者組との直接対決を求めた。

 今回のタイトル戦を前に、デスペラードとヒロムはSNS上などで激しい舌戦を展開。デスペラードは身長、体重、出身地など、すべてが謎に包まれた正体不明のマスクマンであるが、新日本マット初登場は2014年1.4東京ドーム大会。当時のIWGPジュニアヘビー級王者であった飯伏幸太に黒い花束を手わたして挑戦表明し、翌日のデビュー戦でも空中技を駆使してインパクトを残すも、タイトル奪取という結果は出せず。鈴木軍でも、キャリアの長いTAKAみちのく、タイチ、金丸らの陰に隠れ、なかなか日が当たることはなかった。

 一方、09年入門のヒロムは、イギリス、メキシコでの武者修行をへて、16年11.5エディオンアリーナ大阪で「時限爆弾」の正体として華々しく新日本マットに登場。翌17年1.4東京ドーム大会ではIWGPジュニア王座を戴冠し、その特異なキャラクターで、瞬く間にブレイク。一気にジュニアのトップ選手に上り詰めた。なお、09年入門の同期には、いまやバッドラック・ファレとしてヘビー級戦線を暴れ回るキング・ファレ、12年にメキシコCMLL遠征に旅立って以来、14年以降は消息不明となってしまった三上恭佑がいる。

王者組の勝利に会場からブーイング

ベルト上へのピンチェ・ロコを発射し、3カウントを奪った 【写真:SHUHEI YOKOTA】

 会場が大「ヒロム」コールに包まれる中、ヒロムとデスペラードは序盤から激しいエルボー合戦。金丸はヒロム、BUSHIに場外で鉄柵攻撃を浴びせると、BUSHIの顔面をテーブルに打ちつけ、ダウンさせる。一方、ヒロムにも場外ブレーンバスターを敢行。場外カウント19で辛くもリングに戻ったヒロムだが、ここから5分以上にわたってローンバトルを強いられることに。それでも、ようやくBUSHIにタッチをかわすと、金丸にはお返しの鉄柵攻撃。さらにはエプロンから金丸、デスペラードに続けてドロップキックを放つ。20分過ぎ、金丸がBUSHIの顔面に酒を噴射し、デスペラードがヒロムにギターラ・デ・ムエルテを決めるも、カウントは2。逆に今度はBUSHIが金丸の足をつかんで、毒霧で顔面を真っ黒に染め上げると、ヒロム&BUSHIがデスペラードに合体ローリングクラッチホールド。さらに、BUSHIが金丸をトペスイシーダで場外へ足止めする間に、ヒロムがデスペラードにダイナマイトプランジャー。しかし、カウントは2。

 ならばとヒロムはTIME BOMBを狙うも、デスペラードはレフェリーをつかんで技を阻止。さらに、レフェリーが勢いあまってダウンする間にベルトをつかみ、ヒロムの顔面を思い切り殴打すると、ベルト上へのピンチェ・ロコを発射。レフェリーがよろめきながらもカウントを3つをたたくと、客席からはため息とブーイングが起こった。

 試合後、鈴木軍がリング上に集結すると、客席からはますます大きなブーイングと「帰れ」コール。熱狂的なLIJ支持者たちにとって、フラストレーションはメインの前のセミファイナルですでに爆発寸前となっていた。

みのるが内藤の右ヒザを破壊

みのるは内藤を執ような右ひざ攻めで動けなくさせた 【写真:SHUHEI YOKOTA】

 セミファイナルでは、4.29熊本のダブル前哨戦として、鈴木みのる&ランス・アーチャー&デイビーボーイ・スミスJr.組と内藤哲也&EVIL&SANADA組が激突。熊本でIWGPインターコンチネンタル王座を賭けて戦うみのると内藤、IWGPタッグ王座を争うEVIL&SANADAとKESは、早くも一触即発。後から入場した鈴木軍は、「風になれ」がまだ流れている状況で奇襲攻撃。みのるは内藤を場外へ連れ出し、イスで殴打する。5分過ぎ、試合権利を得た内藤はみのるの顔面にツバを吐き、ドロップキックを突き刺すと、顔面を踏みつけながら目を見開く。この挑発に、みのるも張り手、エルボー合戦からヒールホールド。観客の大「内藤」コールに、内藤も延髄斬り、スイングDDTで反撃に出る。だが、10分過ぎ、KESがSANADA、EVILに立て続けにキラーボムを発射すると、カットに入った内藤をみのるがヒールホールドで再び捕獲。孤立したEVILがKESのマジックキラーに沈むと、試合終了のゴングが打ち鳴らされるが、みのるはそれでも技をとかず。あわてて若手選手たちが引き離しにかかるも、KESの魔の手につかまり、エジキとなってしまった。

 LIJと若手選手がリング上に倒れこみ、死屍累々となったリング上で、みのるは内藤を見下ろし、ベルトを見せつけながら、すでに破壊しまくった右ヒザへ何度もストンピングを連発。EVILは2人に両肩を担がれて退場となる中、内藤はセコンドの手を借りず、自力で花道を引き揚げるも、足を引きずりながら歩く様子は実に痛々しく、客席からは悲鳴が漏れていた。

鈴木軍「すべて、オレたちが奪い去ってやる」

バックステージでもみのる節が爆発 【写真:SHUHEI YOKOTA】

 セミに続き、メインでもLIJが惨敗を喫したことで、怒りの矛先は鈴木軍に集中。みのるがマイクを握ると、客席からは罵声や野次が飛び交い、みのるが思わずイスを投げつける場面も。「今日、ここでヒロム、BUSHIを潰した。そして今度、熊本、SANADA、EVIL、そして内藤。テメエらロス・インゴベルナブレスを潰してやる」と、熊本でも圧勝を宣言したみのるは、「おまえらが応援してるロス・インゴベルナブレスは熊本で終わるんだ。なんでか教えてやろうか。オレたち鈴木軍、イチバーン!」と断言し、観客の反論を力づくで封じ込めた。

 バックステージでも鈴木軍の勢いは止まらず。金丸は勝因について「何が違うか分かるか? ココ(頭)とココ(腕)だよ」と訴えると、デスペラードも「勢いだけで何も考えてねぇバカタレが。そう簡単にオレたちに勝てると思うな」と、戦前に再三挑発をしながら結果を残せなかったヒロムを猛批判した。

 一方、大将のみのるは「新日本プロレスよ。ロス・インゴベルナブレスよ。ここから、今日から、オレたち鈴木軍がすべてを仕切ってやる。もうオカダも、棚橋も用はない。熊本で、この新日本プロレスをブチ殺してやる。内藤、オマエにはもう選択肢はない。そしてSANADA、EVIL、オマエらに選ぶ道はない。ヒロム、BUSHI、オマエらが逃げ帰る家もない。すべて、オレたちが奪い去ってやる。オレたち鈴木軍、イチバーン!」と、熊本でもLIJを全滅させ、新日本ごと沈めると予告した。

 かつて、鈴木軍が侵攻したプロレスリング・ノアではGHC4大タイトルすべてを鈴木軍が占拠。この最大のピンチに、ノア勢はユニットの垣根を越えて一致団結を誓い、ベルトを取り返してみせたが、果たして、このセルリアンブルーの大海原では、海賊たちの侵略を食い止めることができるのか。

棚橋はオカダの前で場外マットから動けず

場外マットで動けなくなった棚橋を見下すオカダ 【写真:SHUHEI YOKOTA】

 第5試合では、5.4博多でIWGPヘビー級王座を争う王者オカダ・カズチカと棚橋弘至、翌24日にIWGP USヘビー級王座を賭けて戦う王者ジェイ・ホワイトとデビッド・フィンレーが6人タッグで対戦。自身が保持するV12の記録にあと1つと迫ったオカダに対し、棚橋がストップをかけるべく意地を見せるも、逆に場外でダウンする無様な姿をさらすことになった。

 前半こそ、田口隆祐監督率いるタグチジャパンのユーモラスなチームプレーに笑いが起こる場面もあったが、田口がCHAOSの3人に囲まれると空気が一変。オカダは田口の腕を固めながら尻をたたき、さらには尻へドロップキックを突き刺して、もはや出番は終わりとばかりに封じ込める。棚橋がオカダにドラゴンスクリュー、ツイストアンドシャウトを見舞うと、オカダのレインメーカー、ドロップキックをブロック。しかし、オカダもドロップキック、ツームストンパイルドライバーでキッチリとお返しし、さらにレインメーカーを狙うが、これはフィンレーがドロップキックでカット。ピンフォール負けは免れた棚橋だったが、首へのダメージは大きく、場外マットの上でダウンしたまま動けず。その間に、フィンレーが外道をPrima Nocta一発で仕留めた。

 試合後、オカダはIWGPベルトを手に、場外でダウンしたままの棚橋に誇示。バックステージでは、「棚橋弘至、リングサイドで横になってたね。まだ休憩するには早いんじゃないの。それとも、アナタの得意な欠場ですか?」と、これまで「ケガして復帰してケガして復帰して」を繰り返してきた棚橋を再び揶揄。「全然、息も上がらなかったしね。寂しい。物足りないね」と、これまでV11を達成してきた歴代の挑戦者たちと比べて手応えがなかったことを明かし、いまや斜陽のエースにハッパをかけた。

10人タッグ戦は曲者が終止符を打つ

第4試合の10人タッグマッチでは様々な因縁と思惑が絡まり合った大混戦となった 【写真:SHUHEI YOKOTA】

 第4試合では、ジュース・ロビンソン&真壁刀義&マイケル・エルガン&トーア・ヘナーレ&KUSHIDA組と、後藤洋央紀&石井智宏&矢野通&YOSHI−HASHI&ウィル・オスプレイ組が10人タッグで激突。4.27広島でNEVER無差別級王座を争う後藤洋央紀とジュース・ロビンソン、5.4博多でIWGPジュニアヘビー級王座を争うウィル・オスプレイとKUSHIDAを中心に、様々な因縁と思惑が絡まり合った大混戦は、伏兵の活躍で意外な結末を迎えた。

 まずは急遽、明日の後楽園大会でシングルマッチが決まった石井とヘナーレが打撃戦を展開。ヘナーレが2度にわたって石井をタックルでなぎ倒し、パワーをアピールする。KUSHIDAとオスプレイはジュニアならではのスピーディーな攻防で観客を魅了。ジュースは後藤にナックル連打、逆水平チョップ、ラリアット相打ちからキャノンボールを発射すると、後藤も旋回式牛殺しで反撃する。

 3.6大田区でIWGPインターコンチネンタル王座獲りに失敗し、タイトル戦線から遠のいている真壁刀義は、石井と矢野通に交互にラリアットを打ち込むと、矢野にナックルを連打するなど存在感を見せ付けるが、矢野の急所攻撃から裏霞で丸め込まれて3カウント。かつてのタッグパートナーであり、憎き裏切り者に、勝利を献上してしまった。
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著者プロフィール

静岡県沼津市出身。埼玉大学教養学部卒業後、新聞社に勤務し、プロレス&格闘技を担当。退社後、フリーライターとなる。スポーツナビではメジャーからインディー、デスマッチからお笑いまで幅広くプロレス団体を取材し、 年間で約100大会を観戦している 。最も深く影響を受けたのは、 1990年代の全日本プロレスの四天王プロレス。

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