対談連載:トップランナーであり続けるために

緻密なエネルギー戦略で100kmを走り切る 金哲彦(マラソン解説者)×高田由基(ウルトラランナー)

東海林美佳
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提供:明治

まるで“冬山登山” フルより準備が必要

仕事をしながらトップランナーとして活躍する高田さん。限られた時間の中で工夫して練習に取り組む 【写真:中西祐介/アフロスポーツ】

金:トップレベルのウルトラマラソンの練習はどんな感じですか? アプローチとしては、徹底的にフルの速さを追求することでウルトラも速くなるということと、距離を踏んで持久力を追求するという、2つがあると思うのですが。

高田:僕は距離からのタイプ。ウルトラに特化したトレーニングは3カ月単位で考えるのですが、サロマ湖だったら本番が6月ですから、4月ぐらいからウルトラに向けたトレーニングを始めます。考え方は逆算する形で説明した方が分かりやすいと思いますが、6月はレース本番に照準を合わせたスピード練習やペース走。量を落として質を高める。5月はレースに向けた走り込み期。ここではしっかり距離を踏みます。そして4月はその走り込みができるようにするための予備の走り込み期、という感じです。

金:考え方はフルマラソンとまったく一緒ですね。高田さんのレベルだと80キロ走もやりますか?

高田:いや、僕はそこまでやりません。長くても60〜70キロ走ぐらいまで。月間走行距離は500キロを基本としながら、4月が600キロ、5月が700キロぐらいです。

金:意外。月800〜1000キロぐらいは走っているようなイメージを持っていました。

高田:僕はフルタイムでの仕事もあるので、練習の時間は限られます。ベースの練習は朝と夜のリュックを背負っての往復26キロの通勤ラン。長い距離は週末に行います。気をつけているのは、無理をしすぎないこと。無理をしすぎると身体的にも精神的にも続かないので、自分の中でストレスのないように、折り合いをつけながら練習を組み立てています。

金:今、100キロの世界記録は男女ともに日本人が持っていますが、高田さんもいずれは、という気持ちは持っていますか?

高田:そこに近づける走りができたら、とは思いますが、そのためにはさらにレベルを上げていく必要があります。一方で、ウルトラは良くも悪くも走力だけじゃない競技。道具選びや日差し対策、エネルギー戦略など、走力以外で工夫できる点が多い。そこにも伸びしろがあると思うんです。

金:本当にそう。僕はフルマラソンを説明する時によく登山に例えるのですが、ウルトラマラソンはまるで冬山登山。夏の登山以上に装備に気を使ってしっかり準備していかないと命取りになる。

高田:冬山登山というのは絶妙な表現ですね。どちらも舐めてかかると痛い目に遭いますからね。

体脂肪のエネルギーを活用するという意識

二人ともレース中はもちろんのこと、練習にも「ヴァーム」を取り入れて体をつくり上げていく 【写真:中西祐介/アフロスポーツ】

――ウルトラマラソンの場合、エネルギー戦略もフル以上に重要になってくると思いますが、どのようにしていますか?

高田:レース中は、僕の場合は「ザバスピットインエネルギージェル」と「スーパーヴァーム顆粒」をスペシャルドリンクに貼り付けていて、これを30、60、80キロ地点に置いています。ドリンクは経口補水液の「明治アクアサポート」。アップル風味でおいしくて飲みやすいので気に入ってます。これに加え、スーパーヴァーム顆粒を2包、ゼッケンの裏側にテープで貼り付けて走ります。これだと走る時に邪魔にならない。

金:市民ランナーの場合、スペシャルドリンクは置けないので携帯するわけですが、そういう時、スーパーヴァーム顆粒はコンパクトだしそのまま飲めるから便利ですね。

高田:それに加えて重要なのが、日頃のカラダづくりとして、体脂肪のエネルギーを活用することを意識することです。僕は朝練の時、水分とスーパーヴァーム顆粒だけ摂って走ります。カラダに糖分がほとんどない状態のまま走るので、カラダは他に使えるエネルギー源、つまり体脂肪をエネルギーに変えようとします。そうやって脂肪を燃焼しやすいカラダづくりをしています。

金:僕も、白川郷の前に長時間体を動かし続けるトレーニングとして山手線1周ウォークというのをやったのですが、その時はスーパーヴァーム顆粒と水分を中心に補給していました。これも体脂肪のエネルギー化を意識したトレーニングの1つです。

「ウルトラマラソンの正しい走り方と知識を知ってほしい」と高田さんは訴える 【写真提供:明治】

高田:自分のカラダにどんな変化が起きるかを知っておくことも重要ですね。例えばエネルギーが枯渇してくるタイミングで栄養補給をするわけですが、摂ってすぐ元気になるわけではなくて、効いてくるまでに10〜15分はかかる。それを知らないと苦しくて心が折れそうになるけれど、知っていれば「あと少し我慢」と心が折れずに頑張れる。

金:同感です。低血糖気味になると頭がぼーっとしたり、気力がなくなったりしますが、そうなると事前に知っていれば対処できる。そういうことをみんなに知ってほしいですね。「苦しくなったら根性で乗り越えろ!」ではなくて、情報と知識も駆使してほしい。そうでないとダメージばかり残ってしまう。

高田:ウルトラをこれから始める人にも正しい走り方と知識を知ってほしい。さっきの冬山登山の話ではないですが、ウルトラマラソンは受験勉強と同じで計画性が大事です。

金:一夜漬けは利きませんからね。徐々に走る距離を伸ばしていく、リカバリーも意識しながら練習を継続するなど、カラダに無理のないトレーニングを組み立てて実行することが基本です。

――最後に、お二人の今後の目標を教えてください。

高田:また世界選手権に出場して、まだ取ったことのない個人のメダル(2014年大会の5位が最高)と団体の金メダル(団体銀メダルが最高)を取りたいです。一方で、今後はウルトラマラソンの普及や若い選手の育成にも力を入れていきたいと思っています。

金:また100キロマラソンをやるかどうかは保留ですが(笑)、フルマラソンを毎月1本走ることが日常となっている現状を生かして、日本でも世界でも、これまで出たことのないようなレースに出てみたいですね。誰も知らないような小さなレースとか。そうやって、いろいろな土地に行けるだけ行ってみたい、というのが今の僕の目標です。

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著者プロフィール

ランニングとトライアスロンにハマってしまったフリーランスエディター。一般女性誌やライフスタイル誌、スポーツ誌など幅広いジャンルを手がける。アイアンマンハワイをはじめ、海外レース、海外選手の取材多数。

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