18年は「勝ちに行くシーズンに」 棒高跳・江島雅紀インタビュー

日本陸上競技連盟

チャレンジ精神を高めたフィンランド合宿

17年は日本選手権で2位タイにも入り大きな成長を果たしたが、本人は「70点ぐらい」と話す 【写真:アフロ】

――高校3年時には、ゴールデングランプリで5メートル42の高校新記録を樹立、その後、インターハイでは脚に不安を抱えながらも5メートル43をクリア、そして、秋の国体では5メートル46まで更新しました。さらに、屋外シーズンを終えてからも、冬場に安藤財団の「グローバルチャレンジプロジェクト」の支援を受けて、単身で2度フィンランド合宿を行い、2回目の渡航となった1月には室内大会に出場して、日本記録保持者(5メートル83)でもある澤野大地選手(富士通)が学生のときに樹立したU20日本記録(屋外)に並ぶ5メートル50のU20日本タイ記録を樹立しました。

 U20世界選手権でお会いしたことが縁で、スティーブ・リッポンさん(フィンランド陸連ナショナルコーチ)の指導を受けました。2回目に行ったときには室内大会にも出場しました。いつもより短い助走でしたし、まさか自己ベストを出せるなんて、自分でも驚きましたね。この渡航では、自分一人で行ったことによって、本当にたくさんの経験が得られました。一番育ったなと思うのが自発性です。「一人だけの日本人」という環境だったので、自分からアクションを起こさないと物事がどんどん勝手に英語で進んでいってしまう。なんとかするためには自ら行動するしかなく、その結果、なんでも自分でチャレンジしていくようになりました。その精神力は、今に生きていると思います。

心の成長に課題残した2017年

――日本大に進んで1年目となった17年シーズンからは、トレーニング拠点も大学に移し、日本大の教員としてコーチを務めながら競技者としても第一線で活躍する澤野大地選手の指導を仰ぐことになりました。記録面では、5月初旬に5メートル61のU20アジア新記録を跳んで、1月に自身がマークしたU20日本記録も更新。7月のアジア選手権では、その記録を5メートル65まで引き上げて銀メダルを獲得しました。“ルーキーイヤー”としては上々のように思いますが、自身ではどう評価していますか?

 とはいえ、学生として臨んだ最初の大きな試合の織田記念で、高校のときと同じように「まさかの記録なし」をやってしまうという波乱含みの滑り出しでした(笑)。

 全体的に見ると、自分のなかでは100点満点で点数をつけたら、70点くらいはいったかなと思います。残りの30点は、途中から世界選手権参加標準記録突破を狙おうと思って、(5メートル)70を目標に掲げて、それに達しなかったことが1つ。そして記録は出ているけれど、「もう一歩」のところでの勝負に勝てていないことです。関東インカレ(2位)も、日本選手権(2位)も、アジア選手権(2位)も、日本インカレ(2位)も、メダル争いという点ではユニバーシアード(4位)もそうです。試技内容で負けてしまったものも多くて、課題を残しましたね。あと、これは環境の変化に伴ってのことなのかもしれませんが、周りから評価していただくほど素直に喜べなかったり、ちょっとしたことに不安になったり苛立ったりすることもあって、そんな自分に対しての葛藤があったというのが正直なところです。

――記録の成長に、心の成長が追いついていなかったのでしょうか。周りが思うほど大人ではなかった?

 年齢的に難しい時期なのかもしれないと感じています。ただ、来年は二十歳になるわけですし、そこは自分で切り替えて、コントロールしていけるようにならなきゃと思っています。

18年シーズンは難しく大切な年となる

――18年シーズンの試合予定は?

 本格的な試合は、4月のマウントサックリレー(米国)を考えています。

――マウント・サン・アントニオ大学で行われる大会ですね。澤野選手が海外の「ホーム」としている場所です。

 この冬はマウントサックで合宿を行いました。今後は、僕もここを海外拠点にしようと、澤野さんとも話しているのですが、そうすれば、ブライアン・ヨコヤマコーチに指導していただくこともできますから。また、今年から国際陸連がポイント制になるので、ポイント付与率が高い海外の大会には、出られるものならどんどん出ておきたいという思いもあります。でも、詳細がまだよく分かりません。どうしていくべきか、すごく難しいと考えています。

――今年しっかりと把握して戦略を立てないと、来年以降は迷っている時間がないですね。

 そうしないと、来年のドーハ世界陸上も、それどころか東京五輪も見えなくなってしまいます。そういう意味では、非常に大切な1年になってくると思います。

――具体的な目標は?

 日本記録(5メートル83)更新です。マウントサックでブライアン・ヨコヤマコーチから指導を受けたとき、ここがこうなれば、(5メートル)70、80、その先が見えてくると言っていただけたところがあって、自分のなかでも変わってきているなと感じています。なんとか今年のうちに日本記録を、そして来年にはそれ以上を、そして2020年東京五輪では金メダルを獲得できるようにと思っています。あとは、記録もそうですが、今年はタイトルを取っていきたいですね。

――昨年は勝てなかった試合が多かったですからね。

 それも1つの目標に掲げて「勝ちにいくシーズン」にしたいと思います。

――とても忙しい1年になりそうですね。記録を狙い、ポイント制のことを考えて海外の試合に出ていき、勝負にもこだわり、精神面の成長と安定も図りたいと……(笑)。

 確かにそうですね(笑)。まずは、(5メートル)70以上をなるべく早いうちに跳んでおくことでしょうか。この持ち記録があれば、ダイヤモンドリーグに招待される可能性も出てくるので。

――去年、将来像を伺った際、「自分は、東京五輪からが本当の意味でのスタートになると思っているけれど、そのための最初の目標となるのが、五輪で日本人初の6メートルを跳んで、日本だけでなく世界から注目してもらえる選手になること」と話していました。それは揺るぎないですか?

 はい、変わっていません! そこは揺るぎないです。

――了解しました。2018年の快進撃を楽しみにしています。

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