コンテンツの魅力を外に「染み出させる」 DeNAの”横浜スポーツタウン構想”とは?
興行として魅力的なバスケットボール
昨年12月、DeNAはバスケットボールチーム「川崎ブレイブサンダース」を事業承継すると発表した 【写真は共同】
「バスケットボールは、世界的に見ても競技人口が非常に多く、若いファン、とりわけ女性ファンが多い。比率で言うと野球が7:3で男性なのが一般的ですが、バスケットボールは5:5。競技性としても、テンポも早くエキサイティングなゲーム展開が繰り広げられる。また、屋内競技なので天候の心配がなく、光や音によるショー的な楽しみ方もできる」
バスケットボールは興行の観点からも魅力的であり、ベイスターズでの経験を活かせるだろう。いずれは「アリーナをいっぱいにして、さらに外に染み出すような形にしたい」という。どのような取り組みがなされ、川崎という街の発展にどのように寄与していくか注目したい。
また、「横浜DeNAランニングクラブ」は、参加型のスポーツとして人が賑わえるような役割を担っている。スポーツ事業全体として見ると、まだまだインパクトが大きくないが、波及的により一層の価値を作り出せるように、さまざまなトライをしている段階だという。
講演の終盤、DeNAのラグビー参入の可能性について問われると、「まったく未検討の話で、知っている情報も不十分」と前置きしつつ、「直感的にはトライしてうまくいくチャンスはあるかもしれない」と述べた。しかし、事業的な課題として試合数の少なさを指摘。一般論として興行面だけを考えれば、現在の年間15試合からホームゲームだけで30試合以上に増やすことが望ましいのではないか、という西谷氏。例えば、選手をローテーションさせる仕組みなど、選手の負担減のためルール側で何かカバーできたら良いのではないかと私案を披露した。
トップリーグでは、企業スポーツ主体でありながら社員選手とプロ選手が混在している状況が疑問視されることもあるが、「事業観点では、当然ながらいかにコスト負担を下げつつ、パフォーマンスを上げるかなので、仮に社員選手の立場であっても試合で十分なパフォーマンスを出すことさえ出来れば、それも望ましい形の一つではないか」と西谷氏は結んだ。
事業として成功するためには……
西谷氏はラグビー・トップリーグが事業として成功するために「粘り強くビジネスとして工夫を続けていく」ことが大切だと言う 【スポーツナビ】
――ラグビーは試合数が増やせないハンディがある。スマート・べニュー事業を野球以上に拡大できればラグビーチームとして黒字化することは可能か?
全くその通りだと思います。コンテンツ力・ブランド力を伸ばして、試合興行以外での周辺事業に取り組むことで、その可能性は広がると思います。
――現在のラグビー・トップリーグが事業として成功するためには、まず何を変えなければならない?
母体企業が「ラグビー部」という位置づけよりも、ラグビー事業で収益化を目指すことを念頭に置くと、変化が生まれるかもしれません。すぐに採算が合うようにはならなくても、いつまでに必ず収益化する、といった期間を定め、粘り強くビジネスとして工夫を続けていくということだと思います。
その一方で、投資は適切に行わなければなりません。例えば「スタジアムを作る」といった大型の資金や時間がかかるような投資は、やはり一定の体力などがないと実現し難いので、そこは母体企業から一時的に協力を得る必要があるように思います。その上で、やはり自立運営を目指す形をとるのが、総合的に望ましいのではないでしょうか。
――横浜スタジアムの稼働率向上のため、マルチユースとして例えばラグビーのセブンスの試合を開催することはどうか?
おかげさまで横浜スタジアムの稼働率自体はあまり余裕がありません。ただ、横浜スタジアムでアメフトの試合なども開催されていますので、将来的にそうなると良いかもしれませんね。
――横浜スタジアムを使ってない日はどれくらいある?
横浜スタジアムの運営は株式会社横浜スタジアムですが、横浜市の所有で、市民利用で半分という定めになっています。プロ野球を開催する傍ら、例えば一般の方々の草野球でもご利用されていたりします。
――事業として成立させるためのスピード感がDeNAとラグビーで全然違うと感じた。ラグビー界はどうすれば前に進みやすくなるか?
シンプルに目指すべきゴールを整理して、資源を適切に投資することでスムーズに進んでいくのではないでしょうか。
また、よくよく考えてみると、ラグビー・トップリーグに名を連ねるチームは、日本を代表するそうそうたる企業ですので、人材の質はとても高いはずです。スポーツも事業として位置づけられ、優秀なビジネスマンの方々がより一層投入されることとなれば、さらに大きなインパクトが生まれるのではないでしょうか。
――ラグビー・トップリーグのグッズ販売を残念に思っている。
グッズの例もそうですが、事業化しようと思えば一気にアップデートされると思います。例えばバスケットボールは、つい1、2年前まで企業スポーツとして運営されていたチームが、今となってはエンターテイメント性を高めて、多くのお客様が試合に詰めかける状況になっています。そうなれば観客動員の伸びに応じて、グッズの需要もどんどん高まるわけなので、商品ラインナップも自然と充実してくるのではないでしょうか。