「飛ばしたい」から生まれる大問題 「チーピン」対策は極端素振りで矯正

吉田洋一郎

マット・クーチャーはドライバーを打つ前に、極端に「アウトサイドイン」の素振りをしている 【Getty Images】

 ゴルフスイングコンサルタントの吉田洋一郎が「ワンランク上のスイング」をテーマに、ワンポイントレッスンをお届けするこの連載。第4回は打ち出しから左に出て、さらに左に急激に曲がっていくプルフックの直し方を紹介する。ラウンド中でも修正が可能な素振りで、左へ曲がる球を解消しよう。

極端な動きには極端な動きで対抗

 強く振りに行った時ほど出てしまうのが、左に急激に曲がる大きなフックボール、プルフック。いわゆる「チーピン」だ。麻雀牌に書かれた「ピンズの7」のように、左に向かっていく事からそう呼ばれている。

 スライスしか出なかった初心者が、クラブヘッドを返して徐々にボールをつかまえていく事を覚えると出始めるミスだ。明らかなアウトサイドイン軌道のプレーヤーの場合、プルフックのミスは一時的なものだ。徐々にフェースを返す怖さを覚え、左へのミスは少なくなる。

 一番問題が深刻なのは中級以上のゴルファーに頻繁に起きる「振り遅れ」が原因のプルフックだ。
 ある程度経験を積んだプレーヤーは、「飛ばそう」と強く振りにいったときにプルフックが出がちである。飛距離への意識が強いとオーバースイングになったり、腕に力が入ってヘッドのリリースが遅くなり、身体の動きに対してクラブが振り遅れる形になる。このヘッドが振り遅れた状態でそのままインパクトを迎えると、クラブフェースが開いてボールに当たり右に飛び出してしまう。それを避けるためにダウンスイングで急激に前腕を回して、ヘッドを返す。これがプルフックが出るまでのプロセスだ。



 直す点は2つ。「クラブの振り遅れを解消すること」と「急激なクラブヘッドの旋回を抑えること」だ。

 とはいえ、手を返す動きは無意識に出てしまうものなので、スイング中の動きを意識して直すことは難しい。そこで効果的なのがスイング直前の素振りだ。

 高い位置からカット軌道で、フェースを返さないような素振りを一度入れてみよう。

ベテラン、クーチャーもカット打ちの素振りを入れる

 今年、不惑を迎えるマット・クーチャー(米国)はドライバーショットの前に、ダウンスイングで極端にクラブをアウトサイドからフェース面を返さずインサイドに振り下ろす素振りを入れる。クーチャー自身、振り遅れる傾向があるので、そのように真逆の動きを入れる事で振り遅れを解消し急激にヘッドが返る動きが出ないようにしているのだ。

 このような極端なアウトサイドインのスイングでは、前腕を急激に返すことは難しい。実際にやってみてほしいのだが、フォローで左わきが詰まった状態になり、ヘッドは返らなくなる。

 また、ヘッドを急激に返さないようにするために手をフェース面だと意識してみるとよい。右利きなら右手のひら、左利きなら左手甲などを意識してインパクトからフォローでフェース面が変わらないようにスイングすると、フェース面が急激に閉じた状態でインパクトを迎えることなく、打ち出しからボールが左に飛んでいく状態を避ける事ができる。

 スイング中に何かを修正したいと意識をすると、「下半身から切り返しを行う」や「最後まで振り切る」といった基本的な事ができなくなってしまう。また、ラウンド中に何かを意識する事で、ミスの要因を矯正する事は現実的ではない。

 そのためショットの前にミスの傾向と真逆の動きを入れる事で、その動きをつぶすように体に仕向けたほうがミスが出にくくなる。

 チーピンが連続して出たときには、ぜひクーチャーのような素振りを入れてみてほしい。
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著者プロフィール

シングルプレーヤーを目標達成に導くゴルフスイングコンサルタント。世界で最も有名なゴルフインストラクター、デビッド・レッドベターから世界一流のレッスンメソッドを直接学ぶ。毎年数回ゴルフ先進国アメリカやヨーロッパに渡り、PGAツアー選手を指導する一流インストラクターに直接学ぶなど、心技体のゴルフ最新理論に関する情報収集と研究活動を行っている。実際に教えを受けた著名ゴルフインストラクターの数は100名を超える。監修した書籍「ゴルフのきほん」は30,000部のロングセラー。ゴルフ雑誌、スポーツ新聞にて連載を3つ持ち、世界のゴルフティーチングに関する情報発信を行っている。

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