苦戦の大谷、開幕マイナーの現実味 権藤氏いわく「やられたほうが伸びる」

丹羽政善

16日のロッキーズ戦では1回1/3を投げ、7失点を喫した大谷 【写真は共同】

 2014年6月18日、大谷翔平(当時北海道日本ハム)は、公式戦では初となる甲子園のマウンドで躍動。6回2死まで完全試合を続け、8回を1安打、11三振と阪神打線を翻弄(ほんろう)した。

 現場にいた野球評論家の権藤博氏は試合後、スコアシートの余白に、「凄かった!」と走り書きし、丸印のなかに「権」とサインを入れたものを、知り合いを介して大谷に渡した。

 後日、権藤氏が「受け取ったか?」と聞くと、大谷は言ったそうだ。

「宝物にしてます」

16日には一挙に7失点

 そんな権藤氏が19日(現地時間)までアリゾナに滞在し、大谷のオープン戦を2試合観戦した。最初は、16日のロッキーズ戦。このとき大谷は、初回こそ相手を力でねじ伏せる豪快さを披露したが、2回に入ると乱れ、1死も取れないまま2本塁打を許すなどして、一挙7点を奪われた。

 衝撃的な結末ではあったが、実は初回の時点で権藤氏は「今日は良くない」と話しており、降板すると「まぁ、こんなもの」と話した。

 2日後の18日、今度は打者・大谷を観戦し、4打数無安打2三振に終わると、このときも権藤氏は「こんなものでしょう」と話している。

“こんなもの”とはどういうことか。

「彼はじっくり考え、ジワリジワリと適応していくタイプ。これからですよ。今の段階で良かったら、逆にこの後が心配になる」

 雑音も大きくなっており、結果が欲しいところではあるが、高く飛ぶには、一度膝を曲げて体勢を低くしなければ、跳躍力を得られない。

 ストライクゾーンの確認、相手投手とのタイミングのとり方など、大谷はぶれることなく調整に専念している。打たれれば、抑えられれば、むしろ課題が浮き彫りになる。それこそが大谷の求めているもの。

 18日の試合でも、アレックス・クラウディオ(レンジャーズ)という左の変則投手と対戦し、最後は不思議な軌道を描くチェンジアップに手が出ず見逃しの三振を喫したが、あの球を見られただけでも、収穫があったのではないか。

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著者プロフィール

1967年、愛知県生まれ。立教大学経済学部卒業。出版社に勤務の後、95年秋に渡米。インディアナ州立大学スポーツマネージメント学部卒業。シアトルに居を構え、MLB、NBAなど現地のスポーツを精力的に取材し、コラムや記事の配信を行う。3月24日、日本経済新聞出版社より、「イチロー・フィールド」(野球を超えた人生哲学)を上梓する。

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