苦戦の大谷、開幕マイナーの現実味 権藤氏いわく「やられたほうが伸びる」
開幕をどこで迎えるのか?
打撃面でも結果が出ていない大谷を、ソーシア監督(左)はどう判断するか? 【写真は共同】
マイナー行きそのものは、理にかなっている部分もある。
エンゼルスの予定を見ると、5月には休みが2日しかなく、序盤は連戦が多い。一方で6月以降は、オールスターまで週1回の休みがある。ということは中6日の先発が可能で、そこでデビューさせたほうが、無理なく大リーグに適応させられる。それまではマイナーで、きっちりルーティンを作らせることもできる。
一方でエンゼルスは、メジャーデビューを遅らせ、サービスタイムをコントロールすることで、フリーエージェントになる時期を遅らせることも可能だ。
今年の場合でいえば、4月12日までマイナーにおいておけば、大谷がフリーエージェントの権利を得るのは、7年後になる。また、毎年変動するが、6月中旬までメジャー昇格を遅らせれば、調停権を得るのも3年後ではなく4年後となる。有望な若手選手が開幕してから昇格する裏には、そうした“調整”がある。
しかし、大谷のケースで、そうした小細工が通用するかどうか。
そもそもマイナー契約の大谷は、オープン戦で結果を残さなければならない、という見方もあるようだが、それは違う。大谷の契約は実質的にメジャー契約だ。オープン戦の結果でふるいにかけることは、よほどのことがあった場合に限られる。
また、ビジネス的な側面からも、開幕ロースターから外すことは難しいのではないか。大リーグのビジネス問題に詳しいある記者が、「シーズンチケットホルダーにどう説明するんだ?」と話していたが、確かにエンゼルスは、契約時から大谷を利用してチケットのセールスをかけ、グッズを大量に作った。
その記者が続ける。
「開幕ロースターから外すとしたら、ビジネス部門にも話を通さなければならない」
それこそ、調整が必要だろう。
「もともと時間がかかるタイプ」
「マイナーでの調整そのものを必要としない」と言うのは前出の権藤氏だ。
「ガツンとやられたほうが、その分、伸びる」
レベルの低いところにいれば、成長も限られる。メジャーの凄さを肌で実感することこそ、大谷の成長薬。
「もともと時間がかかるタイプ。あいつは大丈夫。心配ない」
ところで大谷が4打席で2三振を喫した18日のレンジャーズ戦では、ネット裏のコンコースで、エンゼルスのビリー・エプラーGMとレンジャーズのジョン・ダニエルズGMが、並んで試合を見ていた。
大谷獲得を巡ってしのぎを削った2人は、もともと仲がいい。どんな話をしていたかまでは分からないが、ダニエルズGMが帰ろうとした時、「左投手に苦労している大谷に、なぜわざわざ、クラウディオをぶつけたのか?」と聞くと、「左対左。鉄則だ」と苦笑したが、あの日、大谷が4打席すべてで左投手と対戦したのは、偶然だったのだろうか。しかも、大谷がシーズン中に対戦するであろう先発のマーティン・ペレスとクラウディオをあえて見せた。
同地区チームとの対戦では通常、主力投手を隠すが、ダニエルズGMがそれを惜しまなかった裏には、案外、彼のちょっとした配慮があったのかもしれない。