【記録と数字で楽しむセイコーGGP2024】男子100m:風に恵まれれば「日本新」の可能性も

日本陸上競技連盟
チーム・協会

【フォート・キシモト】

5月19日(日)に国立競技場で行われる「セイコーゴールデングランプリ陸上 2024 東京」。
現地観戦やTV観戦のお供に特に注目される種目について「記録と数字で楽しむGGP2024」をお届けする。
なお、原稿の締め切りの関係で、2024年シーズンの試合結果や情報は4月15日までに判明したものしか盛り込めていないことをお断りしておく。

・記録や情報は、4月15日判明分。
・年齢は、2024年5月19日現在のもの。
・文中、敬称略。

※リンク先は外部サイトの場合があります

【男子100m】風に恵まれれば「日本新」の可能性も

2023年ブダペスト世界選手権に出場したサニブラウン アブデルハキーム(東レ/自己ベスト9秒97=2019・23年)、坂井隆一郎(大阪ガス/10秒02=2022年)、栁田大輝(東洋大3年/10秒02=2023年)が揃い踏み。追風に恵まれれば、「日本新記録」のアナウンスを聞くことができるかもしれない。23年世界選手権で6位に入賞したサニブラウンは、パリ五輪参加標準記録の「10秒00」をクリアすれば、「代表内定」となる。

【フォート・キシモト】

海外勢では、サニブラウンと同じ9秒97がベストでリベリア記録保持者のE・マタディが好敵手となりそうだ。

1991年4月15日生まれで33歳。U20の段階では10秒62(2010年)がベストだったが、14年に10秒35、16年には10秒14のナショナルレコードをマークして大きくブレイクした。以後は自身のリベリア記録を更新してきている。19年と21年に10秒01、22年9秒98、23年9秒97だ。
17年のGGP川崎、21年東京五輪に続き今回が3度目の来日。サニブラウンとのGGP川崎での対戦は、サニブラウン4着(10.42/-1.2)、マタディ(6着10.67)だった。
183cm・85kgとかなりがっちりした体格。60年前の東京五輪100mを10秒06(当時の正式記録は、10秒0の世界タイ)で制したボブ・ヘイズ(アメリカ)が183cm・86kgだったので、似たような身体だ。といっても、ヘイズの体型を思い浮かべることができる方は、ほとんどいらっしゃらないだろうけれども……。
9秒台は、公認で3回(9.97、98、99)、追風参考で4回(9.93、96、96、97)。他の種目のベストは、室内60mが日本記録と同じ6秒52(2022年)、200m20秒07(2023年)、400m46秒30(2022年)だ。
五輪は、16年リオデジャネイロと東京に出場(いずれも予選で敗退)。世界選手権は、17年から4大会連続で準決勝に駒を進めているが、ファイナルには届いていない。

日本勢では、サニブラウンが冬場から幸先のいいスタートを切っている。

インドアの60mには2試合に出て、2月4日が6秒60、11日が自己タイの6秒54でこの時点での室内日本記録(6秒53 桐生祥秀 2024.1.30)にあと0秒01(3月1日に多田修平が6秒52をマーク)。
3月23日の米国フロリダ州でのアウトドア初戦の100mが10秒02(+0.5)。同じ9秒97のベストを持つ謝震業(中国)に0秒04差をつけてトップでフィニッシュ。この時点での「2024年世界最高」だった。また、3月にマークされた記録としては、2017年3月11日に桐生が走った10秒04(+1.4)を上回る「3月の日本最高記録」でもあった。
4月13日には、第2戦。中盤までトップを走り、終盤に逆転されて4着だったが、トップと0秒03差の10秒04(+1.7)。一緒に走った7人の自己ベストと世界大会での入賞歴は、以下の通りだ。

・「OG」は五輪。「WC」は世界選手権。

【JAAF】

上位3人は、100mも200mも自己ベストはサニブラウンよりも格上。上位の2人はいずれも世界大会100mの金or銀メダリストで、ベストはいずれも9秒8台。200mも19秒台で金or銀のメダルを獲得している。そんな選手を相手に中盤までリードし、0秒02差でフィニッシュしたのは今後に向けての自信になるだろう。

次に、サニブラウンの自己ベストが10秒0台に突入した2019年以降からの各年のシーズン初戦とシーズンベストを調べてみた。

<サニブラウンのシーズン初戦とシーズンベスト>

【JAAF】

以上のように、追風参考を含めても今年の10秒02は、「自己最速の初戦」となった。
初戦のタイムからの「シーズン公認ベスト」の短縮幅は、

【JAAF】

平均で0秒1875のアップ。
「たら」「れば」の話ではあるが、この平均値からすると今季初戦の10秒02から0秒18を縮めて「9秒84」で走れても不思議ではないということになる。第2戦の「10秒04」も自己最速でこれまでの「第2戦最速」は、19年の追風参考での10秒06(+2.2)だった。

ご存知の通り、サニブラウンは22年オレゴン、23年ブダペストと2大会連続で世界選手権ファイナリストとなった(7位と6位)。この両大会で決勝を走ったのは、O・セヴィル(ジャマイカ/4位・4位)、C・コールマン(アメリカ/6位・5位)とサニブラウンの3人のみ。自己ベストは、セヴィルが9秒86(+0.2/2022年)、コールマンが9秒76(+0.6/2019年)だ。ブダペストでサニブラウンが先着した7・8着の選手のベストは、9秒77と9秒95で、サニブラウンよりも上だった。
至近の世界選手権2大会のファイナリストのその時点での自己ベストは、
(「☆」は、サニブラウン)

【JAAF】

2大会ともファイナリストの中でのサニブラウンの持ち記録は最下位だった。9秒7~8台が6人いる中で9秒97のサニブラウンの連続決勝進出は、「お見事」ということになるだろう。

自己ベストのみではなく、どれだけコンスタントなタイムを残しているかを調べたのが下表だ。
それぞれの公認ベストから10番目の記録までの平均値による日本歴代10傑である。ここでもサニブラウンの安定ぶりが光る。

<個人別10傑平均記録の日本歴代10傑と9秒台の回数(2024.04.14現在)>
・氏名の前の「*」は、非現役

【JAAF】

サニブラウンと坂井が8月のパリ五輪、25年9月の東京世界選手権に向けて、どんなレースをみせるのか注目だ。9秒95の日本記録を更新できれば万々歳だが、まずはパリ五輪参加標準記録10秒00がターゲットである。


野口純正(国際陸上競技統計者協会[ATFS]会員)

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