平昌パラで痛感、日本を上回る世界の進化 “王者”狩野亮、痛恨ミスで5位に沈む

宮崎恵理

自分の滑りはできていたが……

優勝したカナダのカート・オートウェーら、表彰台に上った海外勢は日本を上回る進化を遂げていた 【写真:ロイター/アフロ】

 滑降とスーパー大回転は、ともに一発勝負。

「スピードが魅力で一発勝負だからこそ、その1本に頭を使う。滑降では公式トレーニングからレースを組み立てて行く」

 平昌では公式トレーニングが7日のみ行われ、8日、9日はコンディションの不良によりキャンセルとなった。

「その大事なトレーニングランで、スタート直後に転倒してしまった」

 さらに、10日の滑走ではレース本番でもコースを外れて途中棄権した。

「残念ながら、ミスをしたポイントで飛び込む景色は今日のレースが初めて。そこで、ちょっと躊躇(ちゅうちょ)したのかな」

 王者の、まさかの失速。

「ただ、そのミスだけで、自分の滑りはできていた」

 今大会、表彰台に上がった海外選手に共通していたのは、日本チームが構築してきたチェアスキーの滑りを超えたこと。

「具体的に言えば、彼ら3人のチェアスキーの構造は僕らのものとは全く違う平行リンク(※編注:チェアスキーで膝の代わりを果たす「リンク機構」の形状で、上下動を吸収しやすいのが特徴。日本勢は滑走性の高い台形リンクを採用)だったこと。そのマシンでパワーをスキー全体に乗せて深いターン弧を実現していた。以前は滑走テクニックの精度が低いことで安定感やバランスに欠けていたが、しっかり乗りこなして今回の結果を出した。でも、僕らはさらに上を目指します」

 日本チームにとっては波乱のレースとなった今大会。しかし、世界のスキーは確実に進化している。平昌パラリンピックのスーパー大回転で、それが証明されたのだった。

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著者プロフィール

東京生まれ。マリンスポーツ専門誌を発行する出版社で、ウインドサーフィン専門誌の編集部勤務を経て、フリーランスライターに。雑誌・書籍などの編集・執筆にたずさわる。得意分野はバレーボール(インドア、ビーチとも)、スキー(特にフリースタイル系)、フィットネス、健康関連。また、パラリンピックなどの障害者スポーツでも取材活動中。日本スポーツプレス協会会員、国際スポーツプレス協会会員。著書に『心眼で射止めた金メダル』『希望をくれた人』。

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