ワイルダーがオルティスとの激闘を制す “惑星最恐男”証明のためヘビー統一戦へ

杉浦大介

ヘビー級無敗対決は期待を上回る激闘に

WBC世界ヘビー級王者のワイルダーが元WBA世界暫定ヘビー級王者オルティスの挑戦を退け7度目の防衛に成功 【Getty Images】

 第10ラウンド途中、バークレイズセンターは蜂の巣をつついたような騒ぎになった。1万4069人の大観衆が立ち上がり、まるで会場全体が揺れているかのよう。2012年にオープン以来、ブルックリンのこの会場ではすでに30近くのボクシング興行が行われ、“東の新たなメッカ”と呼ばれるようになった。多くのビッグイベントも開催されてきたが、それでもこれほどスリリングで劇的な瞬間は過去にはなかった。

 現地時間3月3日(日本時間4日)、ボクシングファンの視線はブルックリンに注がれた。WBC世界ヘビー級タイトルを6度にわたって守ってきたデオンテイ・ワイルダー(米国)が、“ヘビー級のブギーマン(誰もが対戦を避けたがる選手)”と呼ばれた無敗の元WBA世界暫定ヘビー級王者ルイス・オルティス(キューバ)を迎え撃つ。戦前から大きな話題を呼んだタイトルマッチは、期待通り、いや期待をはるかに上回る激闘になった。

7回にストップ寸前のピンチも10回に逆転KO

ワイルダーは必殺の右で形勢逆転。10回にTKOを奪った 【Getty Images】

 スキルで上回るオルティスの右ジャブを浴び、32歳の王者は序盤から大苦戦。5回に得意の右ストレートを決めて起死回生のダウンを奪ったものの、第7ラウンドには逆に相手のカウンターと的確な左右コンビネーションを浴びてKO負け寸前に追い込まれた。レフェリーがストップのタイミングを見計らっていたほどの大ピンチに陥ったのを見て、39戦全勝(38KO)で突っ走ってきたスラッガーの快進撃もここまでかと多くのファンが思ったはずだ。

 しかし――。

「真の王者は巻き返す術を見つけるもので、今夜の俺はそれをやってのけた。オルティスは間違いなく如才のない選手で、すごい試合をしたよ。彼を消耗させなければいけないと分かっていた。俺の打たれ強さを証明できたはずだ」

 ワイルダーのビッグマウスはいつも通りだが、この日の試合後の言葉を嘲笑するものは存在しないだろう。8回以降、必殺の右をチラつかせることで時間を稼ぎ、WBC王者は必死にダメージからの回復に努める。第9ラウンド終盤、再び放った右でオルティスを効かせると、10回にはその怪物的なパワーが再び解き放たれた。またも右をヒットして38歳のキューバ人の膝を折ると、ワイルダーのかさにかかったような右パンチの連打で挑戦者はダウン。最後は破壊的な右アッパーを打ち込むと、円熟の技巧を見せつけていたオルティスもここでついに力尽きた。

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著者プロフィール

東京都生まれ。日本で大学卒業と同時に渡米し、ニューヨークでフリーライターに。現在はボクシング、MLB、NBA、NFLなどを題材に執筆活動中。『スラッガー』『ダンクシュート』『アメリカンフットボール・マガジン』『ボクシングマガジン』『日本経済新聞・電子版』など、雑誌やホームページに寄稿している。2014年10月20日に「日本人投手黄金時代 メジャーリーグにおける真の評価」(KKベストセラーズ)を上梓。Twitterは(http://twitter.com/daisukesugiura)

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