侍ジャパン、ナゴヤから始まる金メダル道 先発の千賀「地元で思い入れあるが……」

中島大輔

千賀は侍ジャパンのエース格

3日の先発・千賀(写真奥)は地元・愛知県出身。凱旋(がいせん)のマウンドとなる 【写真は共同】

 先発左腕として東京五輪でのメンバー入りが期待される今永昇太(DeNA)は、同大会の合宿中にこんな話をしていた。

「日本代表は誰もが経験できるところではないと位置付けています。筒香さんを見ても、日の丸を経験されてからより一層、チーム(DeNA)のことを考えてくださることにつながっていると思います。この経験をしっかりチームに持ち帰って、自分の姿勢が周りにすごくいい影響を及ぼせる選手になりたいと思います」

 昨年のWBCで活躍した千賀滉大(ソフトバンク)は、その経験や自信をペナントレースにつなげ、レベルアップを果たした。その結果が、昨季のペナントレースでの最高勝率のタイトルだ。そうして侍ジャパンのエース格と言える存在となり、稲葉監督から3日のオーストラリア戦で先発マウンドを託された。

「国際経験もありますし、トップチームの初戦でしっかり投げてもらいたいので任せたいと思いました」

 生まれ育った愛知県での凱旋(がいせん)登板になる千賀は、指揮官の期待をこう受け止めている。

「地元で思い入れのあるドームです。でも、このユニホームを着たらそんな気持ちを持たずに、ユニホームに恥じないピッチングをするだけです」

豪州は元楽天・ブラックリーが先発

 指揮官がチームのポイントに掲げる「結束力」を全員で高め、国際経験のある選手たちに引っ張られながら若手がいかに自分の力を発揮できるか。そうした好循環の中から個々がレベルアップのきっかけをつかめれば、この2試合は意義深いものになり、ひいては東京五輪での目標に近づくことができる。

 それは対戦相手のオーストラリア代表にとっても同じだ。スティーブン・フィッシュ監督は日本との2試合をこう位置付けている。

「大学から出たばかりのような選手もいますし、まだオーストラリア代表で試合をした経験のない選手も今回チームに入っています。日本においての2試合は、彼らにとって貴重な体験になると思います。その体験をもとに、(選手たちが)より強く、より大きく、より能力を高めることにつながり、それがわれわれの最終目標である2020年の東京五輪出場につながっていくことを期待しています」

 オーストラリア代表として3日に先発するのは、軟投派左腕のトラビス・ブラックリー。メジャーで投げた経験もあり、14年には東北楽天で3試合に登板して1勝2敗だった。そうした相手先発との対戦になり、稲葉監督はスタメンについて「打順も含めて考え中です。いろんなデータを見ながら、どう攻めるかを踏まえて考えます」と話した。

 残念ながら濱口遥大(DeNA)は左肩の違和感で離脱することが練習中に明かされたが、稲葉監督は「しっかり治してほしいし、今後ジャパンに入る可能性もある」と語った。

 いよいよ始まる、東京五輪に向けた侍ジャパントップチームの戦い。国際試合でより多くの収穫を得て、自身のレベルアップにつなげた選手が本番の舞台に立つことができる。

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著者プロフィール

1979年埼玉県生まれ。上智大学在学中からスポーツライター、編集者として活動。05年夏、セルティックの中村俊輔を追い掛けてスコットランドに渡り、4年間密着取材。帰国後は主に野球を取材。新著に『プロ野球 FA宣言の闇』。2013年から中南米野球の取材を行い、2017年に上梓した『中南米野球はなぜ強いのか』(ともに亜紀書房)がミズノスポーツライター賞の優秀賞。その他の著書に『野球消滅』(新潮新書)と『人を育てる名監督の教え』(双葉社)がある。

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