高木菜那、開き直りと戦略で勝ち取った金 別競技で培った強みが結実した瞬間
ショートトラックやサッカーで培ったもの
ショートトラックやサッカーの経験がこの大舞台で生きた 【写真:青木紘二/アフロスポーツ】
本人の言葉によると、それはショートトラックや、サッカーの経験によって培われたものだという。
まずショートトラックは、コーナリングの技術を磨くことに役立った。マススタートは集団で滑ることもあり、より細かなコーナリングが要求される。順位がコーナーで入れ替わることも多く、今回も高木菜は最後のコーナーでシャウテンを抜き去った。インの突き方は、ショートトラックのそれを彷彿とさせた。
また妹の高木美帆(日体大助手)とともに小学校時代にやっていたサッカーでは、周りを見て判断する力を養った。空いているスペースを探し、そこにパスを通したり、相手の隙を突く動きが求められるのがサッカー。周囲の状況を見て、シャウテンの後ろを滑りながら、コーナーで膨らむという隙を見逃さず、その弱みを突く。このレースにおいても、サッカーで得た力が存分に発揮されていた。
「今までやってきたいろいろなことは無駄じゃなかったんだな」
高木菜は感慨深そうにそうつぶやいた。
妹との比較にさらされてきた競技人生
155センチと日本のスピードスケート陣の中で最も小柄な高木菜。これまでの人生で培ってきた力を総動員して、金メダルを勝ち取った 【写真:松尾/アフロスポーツ】
「まだ実感はないですけど、パシュートと違った金メダルの重みがあります。パシュートは皆で力を合わせて取りにいった金メダル。今回は自分で取りたいと思った金メダルです。良い形で五輪を締めくくることができてよかったと思います」
妹と比較されてきた競技人生「美帆だけではなく、菜那もいるんだぞ」(写真は21日のチームパシュート) 【写真:長田洋平/アフロスポーツ】
「美帆だけではなく、菜那もいるんだぞというのを見せることができました」
平昌五輪のスピードスケートにおいて、日本に最初のメダルをもたらしたのは女子1500メートルの高木美だった。そしてこの日、最後の種目となったマススタートで金メダルを獲得したのが高木菜だ。妹に始まり、姉で終わった五輪。メダルラッシュに沸いた今大会のスピードスケートはそんなふうに記憶されていくのだろう。
(取材・文:大橋護良/スポーツナビ)