高木菜那、開き直りと戦略で勝ち取った金 別競技で培った強みが結実した瞬間

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「信じられない気持ちでいっぱい」

高木菜那が新種目のマススタートで金メダル、開き直りと別競技での経験が引き寄せた勝利だった 【写真:松尾/アフロスポーツ】

 平昌五輪の新種目となったスピードスケートのマススタートが24日に行われ、女子では日本から出場した高木菜那(日本電産サンキョー)が優勝し、初代女王に輝いた。高木菜が獲得した金メダルは、チームパシュートに続き今大会2つ目。日本女子の1大会2個の金メダル獲得は夏季も含めて五輪初の快挙となった。

「(金メダルを)取りたいなとは思っていたのですが、まさか2つも取れるとは思っていなかったので、本当に信じられない気持ちでいっぱいです」

 偉業を成し遂げた本人でさえ驚いた結果。マススタート決勝ではその戦略や判断力、巧みなスケーティングが光った。序盤からイレーネ・シャウテン(オランダ)の後ろにつきながら、空気抵抗を減らし、スタミナの消費を抑えていく。すると残り2周を切ったところからスピードを上げていき、ラスト1周でスパートをかける。そして最後のコーナーでシャウテンをインから抜き去り、そのまま逃げ切った。

「イレーネ選手が1つ前のコーナーで少し膨らんでいたので、これはインに切り込めるかなと思って、切り込んでいきました。(2位になった)キム・ボルム選手(韓国)が後ろにいたので気にはしていたのですが、インには切り込めないかなと思っていたので、前にいることが重要だと考え、ずっと2番手をキープしていました」

 マススタートは大勢で一斉に滑るため、戦略や駆け引きが勝負を分ける。レースが「想像通りの展開になった」と語る高木菜は、まさにそのプランを確実に遂行しながら、相手の一瞬の隙を突き、頂点に駆け上ったのだ。

プランの変更を強いられた佐藤の敗退

「ラストでの勝負を狙った」決勝レース、すべてのプランがうまくいった 【写真:青木紘二/アフロスポーツ】

 もっともこの日の展開がすべて思惑通りにいったわけではない。準決勝では日本からもう1人出場していた佐藤綾乃(高崎健康福祉大)が他の選手の転倒に巻き込まれ、敗退してしまった。マススタートは個人種目だが、チーム戦とも言われる。同国の2人で縦の隊列を組みながら空気抵抗を抑え、体力を温存していく作戦を日本は取っていた。2人はチームパシュートのメンバー同士であり、連係も抜群。それが他国との比較において優位性を保っていた1つの強みでもあった。

 しかし佐藤の敗退により、高木菜はプランの変更を余儀なくされる。それがシャウテンかキム・ボルムの後ろについていく作戦だった。そして序盤から前に出たのがシャウテンだったこともあり、かつて練習を共にしたこのオランダ人をマークしていくことに決めたのだという。

「佐藤がいたら一緒に作戦を組んで1、2フィニッシュを狙おうと思っていました。ただ佐藤がいないぶん、自分1人でいくしかないと腹をくくり、ラストでの勝負を狙って、佐藤の分も頑張ろうと思いました」

 こうした開き直りも、この結果を生んだ1つの要因だろう。高木菜は展開を読む能力や判断力があるがゆえに、佐藤のことも考えてレースに臨んでいる部分があった。しかし、今回は1人だったこともあり、自身のプランを遂行することだけに集中できた。もちろんこれが常にハマるわけではなく、個人の力では限界があることから、日本はチーム戦を選択していたのだが、このレースにおいてはすべてがうまくいった。

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