勝負所で“我慢”ができた高木菜那 清水宏保氏が女子マススタートを解説
「ナショナルチーム化」でレベルアップした
女子チームパシュートの金メダルなど、ナショナルチームとしての強化によって選手のレベルが上がった 【写真:YUTAKA/アフロスポーツ】
やはり「ナショナルチーム化」ではないでしょうか。ナショナルチームの何が良かったかと言いますと、ハイレベルのスピード練習を多くの時間できたということです。スピードスケート陣は個々のレベルで高いものを持っていました。それが結集して、ハイレベルなスピード練習をより多くできたこと。それがチームとしてレベルを上げていくための手段でもありました。
チームで活動するということは、みんなで一緒の生活を過ごすという理由もひとつとしてあったのですが、そこには実業団など、各チームの理解もありました。それぞれのチームから選手が集まって、ハイレベルで、ハイスピードな練習を多くできたこと、新しい技術を習得する時間が多くできたことは今回の結果につながったと思います。
――そのナショナルチームの練習が行われるようになったのは、2014年ソチ五輪でメダル獲得ゼロだった結果を受けてすぐに始まったのでしょうか?
ソチ直後から始まっていましたが、最初はやはりうまくいきませんでした。それでも日本国内で練習を重ね、レベルアップしていきました。
――小平選手もソチ五輪後にはオランダで練習に取り組んでいました。
小平選手は分けて見ていただいたほうが良いのですが、彼女の場合はオランダで2年間トレーニングして、その後の2年間は自分流で取り組んでいました。小平選手の意識改革のきっかけはオランダにありますが、それはナショナルチームの中でも突出していて、彼女は個人種目での金メダル獲得につながっています。 ですから今後、ナショナルチームのメンバーは“個”の考え方もプラスアルファして考えていくことが、小平選手のような強い選手になる方法かと思います。
北京では男女ともにメダルの期待
男子1000メートルで5位に入った小田卓朗ら、男子選手も次の五輪につながる結果を残せた 【写真:青木紘二/アフロスポーツ】
そうですね。今後の日本の課題としては、個の力を強めていくために、オランダ流のトレーニングにプラスして、自分なりの持っているものを見いだして“日本流”のものをプラスアルファしていくことが世界との差を広げていく方法になると思います。
――一方、男子チームに関してはどうでしょうか? メダル獲得はありませんでしたが、惜しい入賞もありました。
次の可能性を感じる選手が多くいましたね。ナショナルチームで練習することで、きっかけをつかんだ選手がたくさん見られました。次の五輪に向けて、メダル圏内を射程距離にとらえられたと思います。
男子1000メートルと1500メートルで小田卓朗選手が5位、男子500メートルでは山中大地選手が5位、チームパシュートも5位と、メダル獲得の射程距離にいたと思います。その中で入賞したうれしさよりも、メダルに届かなかった悔しさの方が絶対に強いはずですので、次の五輪に向けてはすごく大きな材料をつかんだと思います。特に5位に入っているメンバーは、世界にデビューしたばかりという意味で若手でもあります。ですから男子に関しては、次のメダリスト候補になると考えています。次の北京五輪に向けては、男女ともにメダルの期待が高まるチームになるのではないでしょうか。