久保裕也がヘントで抱える忸怩たる思い 新監督の「変えない力」による恩恵と弊害

中田徹

チームのスタイルが変わり、久保の役割にも変化が

もっと高い位置でプレーしたい。そんな思いを久保は募らせる 【写真:ムツ・カワモリ/アフロ】

 今の久保は「3人の中盤の1人」という位置付けで、同じ中盤のブレヒト・デヤーヘレ、フランコ・アンドリヤセビッチとの位置関係を意識しながらプレーしなければならない。しかし、本人には、もっと前めの位置でゴールにつながるようなプレーをしたいという意識がある。

「ここ最近、僕はずっと中盤なので、そこの葛藤があります。今の状況だと、中盤から前に行くしかない。出ていって、また戻ってというのを繰り返せるようにならないと、大事な場面で(ゴール前まで)入っていけないと思います。後半はシステムが変わり、中盤の4枚がボックスになって、前めの僕は、よりセンターFWに近い位置でプレーできました。ああいう位置だとディープなところに入っていけるのでいい」(久保)

 今から1年あまり前、ヘントは「2列目に最適なアタッカー」として久保を獲得した。しかし、監督交代によって、フォーメーションが(主に)「3−4−2−1」から「4−3−3」に、攻撃に主眼を置いた戦い方から守備に重きを置いた戦いに、ポゼッションサッカーからダイレクトサッカーに、求めるサッカーが変わってしまった。そして久保に求められる役割も、「ゴール」から「中盤での攻守にわたる貢献」に変わってしまった。

「ラストパスを受ける側に回りたいんですけれどね。僕が“ラストパスを出す前のパス”を出しているという感じがします」(久保)

 どんなに不調でも、久保はファンデルハーゲ監督に起用され続けている。とりあえず後半まで引っ張ってダメなら代えられるが、それでも次の試合になれば、キックオフの笛を、久保は常にピッチの上で聞き続けている。ファンデルハーゲ監督の久保への信頼は厚い。そのことを感じつつも、もっと高い位置でプレーしたい──。そんな思いを久保は募らせている。 

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著者プロフィール

1966年生まれ。転勤族だったため、住む先々の土地でサッカーを楽しむことが基本姿勢。86年ワールドカップ(W杯)メキシコ大会を23試合観戦したことでサッカー観を養い、市井(しせい)の立場から“日常の中のサッカー”を語り続けている。W杯やユーロ(欧州選手権)をはじめオランダリーグ、ベルギーリーグ、ドイツ・ブンデスリーガなどを現地取材、リポートしている

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