加藤条治「自分を信じて」臨んだ五輪 4度目の挑戦“金”届かずも清々しく

スポーツナビ

五輪に向けたピーキングの難しさ

 そのプラン通り、加藤は12月末の代表選考会で3位に入り、自身4度目となる五輪の出場権を獲得。一発勝負の中、「あえてゆっくりスタートする」というベテランならではの賭けで、メンバーに滑り込んだ。

 この時点で平昌五輪のレースまで約1カ月半。加藤は次の段階として「五輪では自分の力がスケートにマッチして、金メダルを狙えるところまで持っていく」という計画を立てた。しかし、その難しさは自身が一番理解していた。

「ピークを合わせる難しさというのは過去の五輪でもすごく痛感しました。代表に選ばれる段階まで持ってくるのはそこまで難しくないし、可能性としては高かった。ただ、ここから先はどんどん難しくなっていきます」

 実際それがうまくいっていれば、過去3大会のいずれかで金メダルは取れていたかもしれない。思うようにいかなかったのは、「金メダル候補」というプレッシャーも影響していたのだろう。

 ただ今大会においては、加藤自身も認めるように「メダル候補」とは言われていなかった。そのため精神的には楽だったようで、12日のタイムトライアルでは参加18選手中5番目の好タイム(35秒10)をマークするなど、ピーキングがうまく進んでいるようだった。そして本番のレース前「メダル圏内にまで状態を上げることができた」と、自信を持って戦いに臨んだ。

「続けられるなら競技を続けたい」

現役続行を希望する加藤「まだ自分にはチャンスがある」 【写真:ロイター/アフロ】

「(ミスをした)カーブをうまく回れれば表彰台には絡めたかもしれません。ただ、それをうまくできないのが今の自分であり、そう言い出したら全選手が表彰台に届いてしまう。そこをうまくできた選手を尊敬するべきだし、できなかった自分は未熟だったと思います」

 レース後、加藤は潔く敗北を認めた。悔しさはもちろんある。それでも「充実感があった」と語ったのは、今季初めに立てたプランを遂行し、再び世界のトップ戦線に戻ってこられたという手応えをつかんだからだ。加藤も「シーズン当初の状況を見たら、本当に間に合うか不安になるときもありましたが、五輪選考会あたりから結果が出てきたので、金メダルへの軌道に乗せられると自分を信じていました」と振り返る。

 確かに金メダルはおろか表彰台にも届かなかった。だが、33歳という年齢でなおかつ今季序盤の状態を考えれば、トップ戦線に戻ってきた意義は大きい。加藤は「自分の一存で決められるわけではないけど」と前置きしながら、今後についてこう語った。

「自分はまだ上にいくチャンスは十分にあると思いますし、続けられるなら競技を続けたいと思っています。時間がたてば自分の考え方がどう変わるかは分からないですが、一番はスケートが好きで、まだ自分にはチャンスがあるという気持ちは持っています」

 自分を信じて挑んだ平昌五輪。一番欲しかったものは手に入らなかったが、競技を続けるうえで一番大切なものを加藤はつかんだのかもしれない。

(取材・文:大橋護良/スポーツナビ)

2/2ページ

著者プロフィール

スポーツナビ編集部による執筆・編集・構成の記事。コラムやインタビューなどの深い読み物や、“今知りたい”スポーツの最新情報をお届けします。

新着記事

編集部ピックアップ

コラムランキング

おすすめ記事(Doスポーツ)

記事一覧

新着公式情報

公式情報一覧

日本オリンピック委員会公式サイト

JOC公式アカウント