大谷翔平、長いメジャー生活の始まり 「柔らかめに」その裏には強い自信

丹羽政善

決められたメニューはなく、すべて手探り

キャンプ初日終了後、会見に臨んだ大谷 【写真は共同】

 そもそも、ほぼ前例のない二刀流に挑む。キャンプではこの日、午前中は投手の練習に参加し、それが終わってから、キャンプ前に練習施設に来ていた野手と合流して、打撃練習を行った。

 しかし、そこには、決められたメニューはない。

 大谷いわく、首脳陣からは「やりやすいようにやって欲しい」と言われているそうだが、「トレーニングにどのくらい自分が満足しているか」、「次にどういうトレーニングをしたいのか」ということを、常にフィードバックし、その先を決めていくという。つまり、すべてが手探りなのである。

 オープン戦の出場パターンもまだ決まっていない。何イニングぐらい投げて、どのくらい打席に立つのか。

 大谷は、「ある程度、こういう感じでいこう、というのは言われている」と話すも、「そこもトレーナーの方、ピッチングコーチ、バッティングコーチといろいろ話しながら、その都度、その都度、決めていくっていう感じ」と続けている。

 もちろん、北海道日本ハム時代に二刀流をしてきたという経験はあるが、大リーグにはたどるべき道標もない。ただ先程も触れたように、そんなときに彼の柔軟な考えは、自らをストレスから開放する。

 たとえば、食生活一つとっても、彼にはこだわりがない。

「僕は結構、なんでも食べられるので、特に今のところは、何か食べたいなぁと思うことはなく、しっかり栄養のバランスだけ考えて食べられれば、十分かなと思っている」

 大リーグでも、こだわりの強い人は、食事一つとっても、本当にそれが強い。ルーティンが崩れると、ストレスになる。

ハードルが高い方が目が輝く

ソーシア監督(写真右)は大谷の二刀流について「まずは投手として基礎を築いてもらいたい」と明かしている 【写真:USA TODAY Sports/ロイター/アフロ】

 大谷の場合、それが性格と言ってしまえばそこまでだが、裏には、強い自信がにじんでいた。

「基本的に野球の部分は何も変わらないので、自分の持っているものをグラウンドの中で発揮できれば、自分をアピールできるんじゃないかなと思います」

 これが23歳で言い切れる。もちろん、今後、障害はあるかもしれない。ただ、それさえも楽しめる。

「慣れない環境なので思ったようにいかなかったりするんですけど、次回に向けて、こうやっていこう、という工夫があったりとか、それは楽しいんじゃないかなと思う。それをどんどんクリアしていくように、工夫してやりたいなと思ってます」

 むしろ、ハードルが高い方が、彼の目が輝くのかもしれない。


 ただ、そんな彼にも一つ不安があるよう。

 チームメートもメディアも、ジョークを交えて話しかけてくる。それに対して、ジョークで返せるようになるのか。そんな質問が飛ぶと、「特に変えようということはないんですけども」と言いつつ、苦笑しながら続けた。

「ユーモアがあるタイプではないと思っているので、ちょっとでもそういうところが、柔らかめに出していければいいんじゃないかなと思います」

 柔らかめに。

 その言葉で十分にメディアの笑いを誘い、会見場が和んだ。

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著者プロフィール

1967年、愛知県生まれ。立教大学経済学部卒業。出版社に勤務の後、95年秋に渡米。インディアナ州立大学スポーツマネージメント学部卒業。シアトルに居を構え、MLB、NBAなど現地のスポーツを精力的に取材し、コラムや記事の配信を行う。3月24日、日本経済新聞出版社より、「イチロー・フィールド」(野球を超えた人生哲学)を上梓する。

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