大谷翔平、長いメジャー生活の始まり 「柔らかめに」その裏には強い自信

丹羽政善

メジャーでのキャリア初日を迎えたエンゼルス・大谷翔平 【写真:USA TODAY Sports/ロイター/アフロ】

 昼前から、雨になった。

 アリゾナでは珍しいその雨の中、多くのファンが駐車場に集まり、同じ方向を見つめている。視線の先、100メートル離れたフィールドでエンゼルスの大谷翔平が打撃練習をしていた。

 正直、そこから大谷が見えるわけではない。しかし、練習を終えて本球場に戻る時、大谷ら選手が駐車場を横切る。そこでサインをもらえるなら、雨の中で待つ甲斐もあるということか。

 やや高台にあるその駐車場から、手前にあるフィールドの脇を通って、大谷が打撃練習をしているところまで降りていくと、ちょうど大谷が左打席に入ったところだった。

 力強いスイング。もう、何年もメジャーにいる選手のよう。鋭く振り抜いたバットから打球が角度よく上がると、打球が右中間フェンスを超える。その瞬間、チームメートが、大きな歓声を上げた。

 そんな反応を大谷は、「気にする余裕は僕にはなかった」と話したが、数日前から、チームメートらと一緒に練習していたからか、特に気負うこともなく、「自然と(キャンプ初日の)練習に入れた」と、練習後にホテルで行われた会見で話している。

打撃練習に戸惑うも「対応していくだけ」

大谷の姿を一目見ようと、日本ハム時代の恩師・栗山監督もキャンプ地に訪れた 【写真は共同】

 現地時間2月14日、大谷にとっては、長いメジャーリーグキャリアの初日。

 初練習後には、キャンプ施設に隣接したホテルで会見に臨み、およそ150人のメディアを前に、「日本でもそんなにプレッシャーのかかる方ではなかったと」と、さらりと言ってのけた。

 とはいえ、打撃練習では、慣れないことに対する戸惑いがあったことは認めている。

「バッティング練習の回り方っていうのも違いますし、今日始めてやったスタイルでもあるので」

 大リーグでは通常、4〜5人で組を組み、一人5〜6球ずつ打って、どんどん交代する。なにより、打撃投手との距離が近い。

 それは、日本のように打撃投手が存在するわけではなく、大リーグではコーチ陣が投げるからで、通常の距離で投げていては彼らがストライクを投げられないからだが、さらにテンポも早いので、日本から来る選手はまず、その洗礼を受ける。

 ただ、「練習のやり方っていうのは、文化の違いもあると思いますし、そこは僕が適応していく必要があるかなと思っていますし、なかなかうまくいかないこともあると思うんですけど、練習をこなしていく中で、そこに対応していくだけかなと思います」と大谷。随分達観していたが、その柔軟性はおそらく今後、彼を助けることになる。

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著者プロフィール

1967年、愛知県生まれ。立教大学経済学部卒業。出版社に勤務の後、95年秋に渡米。インディアナ州立大学スポーツマネージメント学部卒業。シアトルに居を構え、MLB、NBAなど現地のスポーツを精力的に取材し、コラムや記事の配信を行う。3月24日、日本経済新聞出版社より、「イチロー・フィールド」(野球を超えた人生哲学)を上梓する。

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