平昌五輪で注目すべきスーパースター アルペン男女金メダル候補はこの4人だ

田草川嘉雄

復活のスビンダール、王者ヒルシャーは悲願の五輪金へ

膝の手術から復帰したスビンダールは全盛期並の強さを取り戻している 【写真:ロイター/アフロ】

 さて男子に目を移すと、高速系種目でもっとも注目されるのが、スビンダールだ。189センチ、97キロという堂々たる体躯(たいく)。スピードレーサーの宿命としてボンと同様、何度も深刻なけがに見舞われたが、そのたびにさらに強くなって復活するタフさは多くのファンを魅了し、レーサー仲間からは尊敬の念を集めている。

 昨シーズン半ばの1月には古傷を抱えたひざを再手術し、W杯を離れたが、厳しいリハビリとトレーニングを積んで戦線復帰。今季は全盛期並の強さを取り戻している。W杯では11レースに出場して1位3回・2位2回・3位1回と、抜群の安定感。巧みな技術と豊富な経験を武器に、バンクーバー五輪以来、8年ぶりの金メダル獲得を狙う。

 技術系種目では、ヒルシャーが大本命。アルペン最強国オーストリアのエースとして3度目の五輪に挑む。W杯では前人未到の6年連続総合優勝という大記録を達成し、今季も7連覇に向けてトップを走っている。昨年8月に左足首を骨折するアクシデントがありながら、驚異的な回復力でレースに復帰し、ライバルたちを圧倒。すでに10勝を挙げている。世界選手権のメダルを7個持ち、W杯では男子では現役最多の55勝。最強のアルペンレーサーと呼ぶにふさわしい実績を誇るが、唯一物足りないのが五輪での成績。ソチ五輪のスラローム銀メダルがあるのみだ。

 あらゆるタイトルを手中に収めてきたヒルシャーにとって、メダルコレクションを完成させるためにも、何としても最も輝く色のメダルが欲しいところ。2月18日の男子ジャイアント・スラローム、そして2月22日の男子スラロームでは、この小柄なチャンピオンの滑りに注目したい。

湯浅直樹の底力に期待

左膝に不安を抱える湯浅だが土壇場での勝負強さに期待したい 【写真:ロイター/アフロ】

 最後に日本選手について触れておこう。男子はジャイアント・スラロームに石井智也(ゴールドウイン)、スラロームに湯浅直樹(スポーツアルペンSC)が出場。女子は石川晴菜(木島病院)がジャイアント・スラローム、安藤麻(東洋大学)がスラロームにそれぞれ出場する。

 なかでも最も期待されるのはトリノ、ソチに続き3度目の五輪となる湯浅だ。W杯の最高位は3位で、22歳で出場したトリノ五輪で7位となり、その後29歳でW杯3位で初の表彰台に立ったエースだが、身体は満身創痍(そうい)。とくに左ひざの状態が悪く、1月半ばからレースを離れてひざの回復を図っているという現状だ。おそらくぶっつけ本番で五輪を迎えることになるだろう。普通に考えれば、彼本来の滑りをするのは難しいはずだが、追い込まれれば追い込まれるほど不思議な力を発揮するのも彼の特徴。ファンとしてはそんな彼の底力に期待したいところだ。

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著者プロフィール

1956年東京都生まれ。早稲田大学卒業後、スキー専門誌編集部勤務。98年よりフリーランスのライター&カメラマンとしてアルペンレースを取材する。著書に岡部哲也のレース人生を描いた『終わらない冬』(スキージャーナル)がある

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