平昌五輪で注目すべきスーパースター アルペン男女金メダル候補はこの4人だ
高速系と技術系、スペシャリストとして先鋭化
W杯6年連続総合優勝の大記録を持つヒルシャー、悲願の五輪金メダルを手中にすることはできるか 【田草川嘉雄】
アルペン競技の種目をスピードの速い順に並べると、ダウンヒル、スーパーG、ジャイアント・スラローム、スラロームとなる。このうちダウンヒルとスーパーGは高速系種目、ジャイアント・スラロームとスラロームは技術系種目と呼ばれている。レギュレーションの違いは他にもいろいろあるのだが、もっとも顕著な相違は、高速系種目は1回の滑走で、技術系種目は2回の滑走の合計タイムで競われる点だ。ちなみにアルペン・コンバインドは短縮ダウンヒルとスラローム1本の合計タイムを競い合う
また同じアルペン競技であっても、種目の特性は大きく異なる。かつてはすべての種目を偏りなくこなすオールラウンダーも活躍していたが、それぞれの種目が極度に先鋭化した現在では、多くても3種目を戦うのが精いっぱい。ほとんどの選手がスペシャリストとして高速系、あるいは技術系種目に絞っているのが現状と言える。
米国が誇る2人の女王
高速系種目の女王ボン、五輪前のW杯で3連勝と俄然調子を上げてきた 【写真:ロイター/アフロ】
リンジー・ボンは、高速系種目で圧倒的な強さを発揮する33歳のベテラン。W杯での優勝回数は現役最多の81勝。絶対に破られることはないと言われた、あのインゲマル・ステンマルク(スウェーデン)が持つ歴代最多勝記録86まで、あと5つに迫ってきた。本人は「今季の目標は五輪での金メダル。通算勝利数のことは今はあまり考えていない」と発言し、W杯は五輪のための調整の場と位置づけて戦ってきたが、五輪前のW杯ではダウンヒル3連勝とがぜん調子を上げてきた。
スピードに滅法強いだけに、そのレースっぷりは強気で過激。したがって選手生命に関わるような大けがを何度も経験し、そのたびに不死鳥のように立ち上がってきた不屈のファイター。コンディションは万全とはいえないものの、狙った獲物はけっして逃さない勝負勘が大きな武器だ。
22歳のシフリンは、4年前のソチでは五輪のアルペン史上最年少でスラロームの金メダルを獲得 【写真:ロイター/アフロ】
こうしてスラロームを中心に技術系を主戦場として戦ってきたシフリンだが、今季は高速系種目にも進出しオールラウンダーへと進化しつつもある。すでにダウンヒルでも初勝利をあげており、スピードに対する非凡な強さをも証明。あくまでも可能性としてだが、五輪史上初の5種目制覇の期待をもたせる唯一のレーサーと言える。