「南北融和」がアピールされた平昌開会式 韓国で切れないスポーツと政治の関係

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平昌のおもてなしは人の心とテクノロジー

何よりうれしいのが、ボランティアの人々がとにかく親切なことだ 【Getty Images】

 大会が始まる前は寒さやボランティアの離脱など、ネガティブな報道が多かった平昌五輪。しかし始まってみれば寒波はひとまず去り、非常にスムーズに運営されているように感じる。

 待遇の悪さから数千人が開会前に離脱したとされるボランティアだが、どこの会場に行ってもこれでもかというほど配置されており、人数の心配はなさそうだ。何よりうれしいのが、ボランティアの人々がとにかく親切なこと。学生を中心とした若い世代がほとんどだが、筆者のつたない英語にも懸命に耳を傾けて理解しようとしてくれる。

 決して英語が得意そうでない人も一定数いるが、そこはお互いさま。身振り手振りを駆使すれば何とか通じるもので、伝えよう、理解しようという心持ちが大事だと身を持って体感している。20年東京五輪のボランティアにも必ず求められる資質だろう。

 気持ちだけではクリアできない問題は、スマホが解決してくれる。翻訳アプリを使えばやや時間は要するが、少し難解な質問でも伝えることができるし、大会エリアである平昌・江陵地域をつなぐ21通りものメディア用バスの複雑な運行は、乗換案内のような専用アプリでその経路・時刻表を検索することができる。挙動などに不満がないわけではないが、期間限定の無償アプリにそこまでの出来は求められまい。

一部施設ではR2−D2のようなロボット掃除機が各階を動き回っている 【写真:松尾/アフロスポーツ】

 一部施設ではR2−D2のようなロボット掃除機が各階を動き回り、それとは別にミネラルウォーターのペットボトルを届けてくれる“ドロイド”もいる。平昌のおもてなしは人の心とテクノロジーが駆使されているようだ。

スポーツの話題がメインに取り上げられる日は来るのか

 いよいよ始まった韓国初の冬季五輪に、現地メディアは朝から晩まで平昌五輪を報じるなど多大な注目を示しているが、その多くはここまで北朝鮮絡みのものが占めている。開会式の前には北朝鮮のナンバー2、キム・ヨンナム最高人民会議常任委員長の訪韓時の様子が繰り返し放送され、前日8日には北朝鮮の軍事パレードが幾度も報じられていた。

 韓国ではスポーツと政治は切っても切れない関係のようだ。メディアが集まるメーンプレスセンターには、会場案内や報道用バスの運行表など数多くの冊子があるのだが、そこに混じって無料配布されているのが、ムン・ジェイン韓国大統領の実績やポリシーをPRするもの。全31ページがすべてカラーと立派な装丁で、どのページを開いても大統領の写真がでかでかと掲載されている、さながら“写真集”といった出来だ。内容が素晴らしいからか、背表紙にUSBメモリが付録されているからか、一部では隠れた人気アイテムとなっている。

 10日からは男子ジャンプノーマルヒル決勝など、いよいよ競技が本格的に始まる。スポーツの話題がメーンに取り上げられる、五輪の正しいあり方に立ち戻れることができるのか。今週末には再び気温の落ち込みも予想されているが、それを吹き飛ばすような選手たちの熱い活躍が楽しみだ。

(取材・文:藤田大豪/スポーツナビ)

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