競技の人気を高めるために必要なこと 【対談】両角友佑×小塚崇彦 後編

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男子カーリング日本代表のSC軽井沢クラブでスキップを務める両角友佑と、元フィギュアスケーター小塚崇彦さんの対談後編。競技における男女の違い、五輪で結果を残す重要性などを語り合った 【写真:築田純】

 日本においてカーリング、フィギュアスケートともに注目を浴びたのは、女子の方が早かった。しかし、フィギュアスケートは女子の人気が男子にも波及。今や多くの観客を集めるスポーツとなった。オリンピアンの小塚崇彦さんは、五輪に男女そろって出場する重要性を説く。多くの人が見る五輪で「最初に目に付くのは華やかな女子だけど、いろいろと見始めると男子も面白いとなる」と、その効果を語る。

 男子カーリングの日本代表は、地元開催だった1998年長野大会以来となる五輪切符を勝ち取った。その代表チームとなるSC軽井沢クラブのスキップ・両角友佑は「女子の試合を見ていた人たちが、男子も見てみようかなと思ってもらえるチャンス」と位置づける。フィギュアスケート同様に、男子の人気を高めるために結果も重要となるだろう。

 対談の後編は、競技における男女の違いや、お互いに聞いてみたいことなどを語り合った。

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多くの人に見てもらう初めてのチャンス

カーリングにおける男女の大きな違いは「スイープの力強さや、ショットの速さ」だと両角は言う 【写真:アフロスポーツ】

――同じ競技の中でも男子と女子でどのような違いがありますか?

両角 カーリングは単純にスイープというブラシで掃くときの力強さですね。やはり伸ばせる距離が違うのは、それだけ楽です。あとカーリングのスイープは、曲がりを抑える効果があります。カーリングという名前の通り、普通にやったら絶対に石が曲がるんですけど、その曲りを少し押さえることができるんですね。スイープの力も強いので、コースのコントロールも、男子の方が石を離してからコントロールできる幅が大きいぶん、すごく投げ手は楽です。

 それに加えて投げる速さですね。カーリングは基本的にコントロールするスポーツなのでそんなに力は関係ないのですが、僕たちのチームのように石をいっぱいためる作戦だと、力のいるショットが必要になることがあります。一投でたくさん石を外に出せるような力強いショットというのは、男子の特徴かなと思います。

小塚 フィギュアスケートに関しては、女性の可憐さや華やかさなどが男子には出しにくいところですね。男子には見て初めて分かる迫力があり、観戦の楽しみ方が違ってきます。華やかさは女性のほうがあるので、最初は女子シングルから入り、たまたま一緒に男子シングルもやっているから、見ようとなった人たちが多いと思います。

フィギュアスケートも注目されたのは女子の方が早かった。しかし、それから「男子も見てみようという流れになった」と、小塚さんは当時の状況を語る 【写真:築田純】

――注目されたのはカーリングもフィギュアスケートも女子が早かった。そのような状況はどう感じていましたか?

両角 カーリングは、男子が五輪に出ていなかったですし、注目される場所がほとんどなかったので、どうしようもなかったです(笑)。それでさらに女子まで弱かったら、カーリングという種目が忘れられてしまっていたと思います。女子は毎回五輪に出ていましたし、カーリングというスポーツが日本人に忘れられずに、4年に1度は必ず「そういうスポーツがあるな」と日本で見てもらえていました。その意味では、男子がダメな間に忘れられずに済んでよかったなと思っています。

小塚 見てもらうという意味では、五輪は大きなきっかけですよね。例えば、カーリングが放送されているのを見たときに、華やかさのある女子のほうがパッと目に付くと思います。でも、その中で戦術など細かいところを見始めると、男子のカーリングも面白いとなってくる。今度の五輪はそろって出るので、男女一緒に頑張っていると、より深くまで入り込んで見てくれるのかなと思います。

 これはフィギュアスケートでも実際にあったことで、浅田真央さんや安藤美姫さん、荒川静香さんらがいて、ファンの人たちがフィギュアスケートに入ってきてくれた。そこから男子も見てみようとなり、「高橋(大輔)くんや織田(信成)くんも面白いじゃん」という流れになりました。やはり男子と女子が一緒に出て活躍しているというのは、すごく大事なことですね。

両角 そういう意味では初めてのチャンスだと思っています。今まで世界選手権や日本選手権などはテレビで放送されていたのですが、それだとカーリングを見たい人しか見てくれない。五輪はとりあえず見てくれる。目に触れるチャンスもすごく多いので、カーリングに興味がなかった人に見てもらえるチャンスだと思います。女子の試合を見ようとした人が「まだ男子の時間か」と男子の試合を見て、そのうちに「意外と面白いな」となってくれたらと思います。うちの作戦は見る人も楽しいカーリングになっていると思うので、自分たちらしさをしっかり五輪でも出せたら面白くなるのではないかと思っています。

「言ってもらえる」大切さ

同じチームには弟の公佑(左)がいる。しかし、両角は「兄弟ではなくチームメートのという感じの方が強い」と話す 【写真:YUTAKA/アフロスポーツ】

――両角選手はチームに弟さん(両角公佑)がいますが、同じチームに身内がいることのメリットとデメリットがあれば教えてください。

両角 僕は感じていないですが、弟はデメリットをたくさん感じているんじゃないですかね。言いたいこと言われている、他の人より当たりが強いなど(笑)。弟が入ってきたときは、チームは日本の中でそこそこ勝っていて、技術的にも付いてくるのが大変だったと思います。それこそ僕も「下手だな」と言いましたし(笑)。ただ、あまり兄弟というのではなく、チームメートという感じの方が強いです。生活も一緒にしているわけではないし、「うちのチームの一番目に投げている人」という認識でいます。

小塚 僕も家族がフィギュアスケートをやっていたので、それこそ言いたいことを言われるというのは一緒です。しかし、「言ってもらえる」ということもあると思います。何でも好きなことを言われるのは、煩わしいことでもありますが、それが次のステップにつながることもあります。家族だからこそ言ってもらえることなのかなと。他の人なら「まぁ、いいか」となることも、ぐちぐち言われる(笑)。それもそうなんだなと、今となっては思いますけど、選手のときは「うるさいな」と思うんですよね。

両角 そんなに冷静には聞いていられないですよね(笑)。

小塚 そうなんです。それを聞ける耳を持っているときは、落ち着いているときや、余裕はないけれどある程度いろいろなことを受け入れられる準備ができているときなのかなと思います。そのときは調子も良かったです。

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